2025年世界ラリー選手権(WRC)第4戦ラリー・イスラス・カナリアスの土曜日のレグ2を終えて、カッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)が45.2秒をリードして独走状態を築いている。2位にはセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)、3位にエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)、4位には勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)が続いており、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームは、2023年のラリー・ジャパン以来となる表彰台独占を目指して明日の最終日に挑むことになる。
土曜日は島北部を中心とした7SS/124.08kmの一日となる。モヤ〜ガルダール(24.09km)、アルカス〜フィルガス〜テロル(13.75km)、テヘーダ〜サン・マテオ(25.30km)の3ステージをミッドデイサービスを挟んで2回ループしたあとラス・パルマス・デ・グランカナリア(1.80km)のスーパーSSで締めくくる一日となる。
SS7モヤ〜ガルダールは、この週末の鍵になると言われるステージだ。モヤをスタートし、急激なリズムの変化、多様な路面変化、そして絶え間ない標高差をくりかえしながら駆け上がる。天気予報のとおりに霧が路面を少し濡らしており、タイヤ戦略は複雑になりそうだ。
首位のロヴァンペラがここでもベストタイム。前日からここまですべてのステージを制しており、7連続のステージウィンだ。世界一のターマックマイスターとして知られるオジエはここでも1秒届かず、またしても2番手タイムに終わり、二人の差は27.8秒へとわすかに広がった。
ロヴァンペラはSS8アルカス〜フィルガス〜テロル、 さらにSS9テヘーダ〜サン・マテオでも連続してベストタイム、朝のループを終えてオジエとの差を36.9秒まで広げることになった。
「とてもいい感じだったよ。このステージはどちらかというと昨日のような、より流れる感じだった。ドライビングもクルマもうまく噛み合っていていいペースで走れている。正直、ワイルドな走りはしてないし、全然プッシュしていないけどいい感じにスピードに乗れていた。何度も言ってきたように、こういう道ではプッシュすることではなく、心地よい流れを作ることが大事だ」とロヴァンペラは笑みをみせている。
オジエはSS8でも序盤のスプリットタイムでトップのペースを刻んだものの、終盤でロヴァンペラが追い上げたため0.5秒差で初のステージウィンを奪うことはできず、SS9でも気迫の走りでベストタイムを狙ったが、なんとここでは8.4秒も引き離された。
「ここではステージウィンを狙えなかったが、少なくとも今週末はスプリットタイムで1つは速かった」とオジエは笑うしかないといった表情をみせた。「このステージではクルマには満足だったけど、コミットメントが十分でなかっただけだ。もう歳かなって感じてしまったよ」
チャンピオンシップリーダーのエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)も朝のループでチームメイトたちに挑戦しようと試み続けたが、3ステージともに打ち負かされてしまい、朝の時点で9.6秒だったオジエとの差は16.1秒へと拡大することになった。エヴァンスはチームメイトの速さの前に明らかなフラストレーションを感じていると認めた。
「驚きではない。マシンは問題なく機能していたが、自分の走りには満足していなかった。言い訳はできないよ」とエヴァンスは自分の走りが足りなかったのだと語った。「この戦いに勝つには、ある程度のペースが必要だと思う。当然、トップ争いができないのは少しフラストレーションを感じる。でも、仕方がない」
トヨタは引き続きトップ5を独占しているが、エヴァンスの後方ではポジションに動きがありそうだ。5位につける勝田はSS7ではこの週末もっともいい4番手タイム、さらにSS9では3番手タイムを刻み、23.9秒あった4位のサミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)との差を9.1秒へと縮めている。「とてもいいステージだ。最後の方は少しスムーズになるぶん滑りやすくなる。いくつかトリッキーなステージはあるけど、それでもステージは皆素晴らしいよ。まだ苦戦はしているけど、ここに来られてとてもハッピーだよ」と勝田はコメントした。
ヒョンデ勢にとっては落胆のカナリアスになっているが、土曜日もペースは上がらず迷走状態だ。金曜日の朝のループのセットアップに戻したというアドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)がこの日の朝のステージで2人のチームメイトをパスして6位へとポジションを戻したが、ラリーリーダーのロヴァンペラとは1分半以上の差をつけられている。
ディフェンディングチャンピオンのティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)もセットアップの決め手を欠いたまま7位にとどまっていることに苛立っているが、明日の最終日のスーパーサンデーまでになんとか微調整できることを期待している。「今のところセットアップは行き詰まっている。いろいろ試してみたが、根本的な改善には至っていない。もちろん今、奇跡を求めても仕方がない。今あるもので明日戦えるように微調整して週末にポイントを持ち帰ることが目標だ。それが僕たちにできるすべてだ」
フールモーの速さはペースが改善する兆しにも見えるが、ヌーヴィルは自身と異なるセッティングのデフによるものであるため、今のまま行くしかないと首を横に振る。八方ふさがりというわけだ。「アドリアンは明らかに少し速く走っているが、彼のデフは僕が選んだデフのセッティングとは違うんだ。残念ながら、今週末はもう他のデフは使えないので、今あるもののままいかなければならないんだ」
8位につけるオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)も何をやっても適正なセットアップを見つけられていないことを認め、ラリー中にペースを改善するのは非常に不可能だと語った。「昨日はやれることは全て試した。そして今日は、おそらく無理なこともいくつか試した。もちろん、それらはあまり役に立たなかった。それが現状だ。僕たちにできることはあまりないと思うが、午後も何か極端なことを試してみるかもしれない」
オジエはロヴァンペラのステージ連続勝利記録に終止符を打とうと全力を尽くしてきたが、これまで成功していない。土曜日の午後のオープニングステージ、モヤ〜ガルダールでもオジエは、自身の走りに自信をもっていたにもかかわらず、ロヴァンペラのスプリットタイムを聞いて、ただ驚きの表情を浮かべるしかなかった。「僕には良いステージだった。マシンには満足しているし、少しずつ良くなっている。最後のステージくらいカッレに勝ちたいね!」
ロヴァンペラはステージエンドでオジエのプレッシャーを感じていると認めたものの、午後のループでのタイヤマネージメントのためにもすでに少しペースを落とし始めていたと認めている。「僕はコントロールしようと努めている。セブが全力でプッシュしているのは分かっている。ステージ上でインターコムにトラブルがあったので、確認しに行かなければならない」。彼とオジエとの差は38.1秒へと広がり、3位のエヴァンスも1分1秒差へと突き放された。
ロヴァンペラはSS11アルカス〜フィルガス〜テロル、SS12テヘーダ〜サン・マテオでも連続してベストタイムを奪い、リードを45.7秒へと広げて独走状態を築くことになった。
さらに彼は金曜日の朝からの連続のステージ勝利記録を「12」へと伸ばし、自身の持つ記録に迫った。彼は、2023年のラリー・エストニアで13ステージ連続勝利という記録を樹立している。さらに2005年のツール・ド・コルスでセバスチャン・ローブが達成した、史上たった1度きりの全ステージを制しての完全勝利への再現への期待感が膨らむが、ロヴァンペラは現実的にならなければならないと釘を刺す。「今日は素晴らしい一日だった。次のスペクテイターステージもトライするが、もちろんそこでは無謀なことはしない。とにかく完走するだけだよ」
SS13ラス・パルマス・デ・グラン・カナリアは、熱狂的なファンが待つグラン・カナリア・アリーナ・バスケットボールスタジアムの屋内ドーナツターンで有名なスーパーSSだ。スリッピーなスタジアムをあとにしたラリーカーは屋外の駐車場に設けられたタイトなシケインが連続するテクニカルなコースを駆け抜けてフィニッシュするが、コースは狭く、攻めるにはあまりにもリスキーだ。
ロヴァンペラはここでは0.6秒差の3番手タイム、エヴァンスがこの週末初のベストタイムを奪うことになり、残念ながら彼の驚異的な連勝記録はストップした。それでも彼には大記録を逃した悔しさなどはまったくない。「たくさんのサポーターが来てくれて嬉しかったよ。すべては計画通りに進んでいる。残念ながら、無謀なことはしたくなかった。ここで攻めるにはリスクが大きすぎた。明日はしっかりやらなければならない」
カナリアスで期待されたもう一つの大記録も残念ながらSS12で劇的な幕切れによって望みが断たれることになった。そこまで素晴らしいペースで4位につけていたパヤリが中速の左コーナーでアンダーステアを出してガードレールに激しくクラッシュ、引きちぎれた右フロントタイヤがボディの下に完全に押し込まれ、マシンを止めることになった。
もし、トヨタがトップ5独占を成し遂げていれば、1990年のラリー・デ・ポルトガルでランチアが樹立した同一マシンの上位独占記録に並ぶはずだった。それでも勝田が4位に浮上、トヨタは依然として1-2-3-4という強力な態勢を維持している。
ヒョンデ最上位となる5位にはフールモーが続くが、勝田からは25.7秒遅れだ。マシンのバランスに悩むヌーヴィルは6位、タナクは7位で続くが、二人ともトップから2分以上の差をつけられている。