2025年世界ラリー選手権(WRC)第4戦ラリー・イスラス・カナリアスは、圧巻の速さをみせたカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)が今季初勝利を飾ることになった。2位にはセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)、3位にエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が続き、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームは、2023年のラリー・ジャパン以来となる表彰台独占を達成することになった。また、4位には勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)が続いており、トヨタは2023年のサファリ・ラリー以来となる1-2-3-4を達成、ランチアが保持してきた5度のトップ4独占記録に並ぶ快挙を達成した。
ラリー最終日の27日日曜日は、島の東南部へ向かい、アグイメス〜サンタ・ルシア(14.97km)とマスパロマス(13.47km)の2ステージを走ったあと美しいビーチで知られるマスパロマスの海岸沿いで行われるマスパロマス〜コスタ・カナリアス(1.50km)を走り、アグイメス〜サンタ・ルシアとマスパロマスの2回目の走行で締めくくる5SS/58.38kmの一日となる。2回目のマスパロマスがパワーステージとして行われる。
前夜のサービスで7位につけるオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)のエキゾーストマニホールドに問題があったことから、ヒョンデは新しいエンジンへの交換作業を行っている。2024年からラリー終了までの間にエンジンが故障した場合、規定で許可されているエンジンの数を超えない限り、損傷したエンジンをペナルティなしで交換することが許可されている。しかし、作業の遅れによるタイムコントロールへの1分遅着によってタナクには10秒のペナルティが課せられおり、6位につけるチームメイトのティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)との差は32秒へと広がっている。
また、SS12でのアクシデントでリタイアとなったサミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)はマシンのダメージが大きいため日曜日のリスタートを断念した。
青空が広がったラリー・イスラス・カナリア・ラリーの最終日は、オープニングステージでコースオープナーとしてスタートしたジョシュ・マクアリーン(フォード・プーマRally1)がクラッシュするという衝撃のアクシデントとともに始まることとなった。
マクアリーンは右コーナーを深くカットした際にイン側に設けられた排水路を抜けた際にアンダーステアとなり、コーナー外側のガードレールに激突、左リヤサスペンションを壊してリタイアとなってしまった。
それでもここまで首位を快走してきたロヴァンペラはそんな波乱にも心を乱されることがないかのように素晴らしいペースで最終日をスタートすることになった。
45.2秒という大きなリードを築いて最終日を迎えたロヴァンペラだが、このマージンを守って確実に今季初の勝利を持ち帰るという考えはないようだ。彼のステージ連勝記録は、昨夜行われたグラン・カナリア・アリーナ・スーパースペシャルでエヴァンスが勝利したことですでに途絶えているが、日曜に設けられている最大限のボーナスポイント獲得を狙って、今週末13回目となるベストタイムを奪って発進した。
選手権リーダーからすでに57ポイント差をつけられているロヴァンペラは、ステージエンドで「厳しい一日になりそうだ。それでもポイント獲得に向けてベストを尽くす」と強い決意を表明した。
ロヴァンペラはSS15マスパロマスでも連続してベストタイム、2番手タイムのエヴァンスに2.6秒差をつけ、スーパーサンデーでもリードを4.8秒へと拡大してみせた。総合2位につけるオジエはここではややペースを落とし、4.7秒遅れの4番手タイムにとどまり、ロヴァンペラとの差は51.1秒へと拡大、スーパーサンデーでは3位へとポジションを落とすことになった。
多くのドライバーがレッキでは交通渋滞に見舞われたため、このステージのペースノートが完璧ではなかったと明かしているが、オジエもノートが遅すぎて自信が得られなかったと認めている。「いい走りをしようと頑張ったけど、ペースノートで慎重になっていたのでコミットしきれなかった。パワーステージに向けて(ペースノートを)調整していくつもりだ。これでは安全すぎるし、この高速ステージではタイムにすごい違いが出ることになる」
勝田は総合4位をキープしているが、スーパーサンデーの順位では今のところ5位だ。彼もノートを修正してパワーステージに向けて準備したいと語っている。「非常にハイスピードで、いくつかの場所で少しペースノートをミスってしまって、スローダウンすることも多かった。最初のステージとはかなり違っていて、ここは非常に速いけど、いいステージだ。パワーステージでは楽しめるようにしたい」
ヌーヴィルはここでは今週末のロングステージで初めてトップ3に入るタイムを刻み、6位につけるチームメイトのアドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)を猛追、1.2秒差に迫ることになった。さらにスーパーサンデーでも今のところ4位でボーナスポイント獲得に野心をみせている。「目標はアドリアンに勝つことだ。正直あまりいいステージではなかった。レッキでは、このステージ渋滞がひどくて時速30kmで走っていたから、僕のノートはところどころ遅すぎた。でもプッシュ続けていくよ」
SS16 コスタ・カナリアはグラン・カナリア島のカートサーキットで行われる短いステージだ。トップ10が0.8秒差という僅差でひしめき、ほとんど差が生まれないステージとなったが、ヌーヴィルからの追撃から逃れようとしているフールモーがヒョンデにとって今週末初のベストタイムを刻むことになった。さらにオジエも同タイムでベストタイムを分け合うことになったが、彼は「このあと後ろからくるリトル・クレージー・フィンはどうだろうね!」とオジエは笑いながら付け加えた。
それでもオジエは続くSS17アグイメス〜サンタ・ルシアの2回目の走行でついにこの週末初めてロングステージでベストタイムを奪い、8度のワールドチャンピオンのプライドをみせることになった。ロヴァンペラはパワーステージのためにタイヤを温存、ここでは1秒遅れの3番手タイムも、総合でのリードは依然として49.5秒という大きなものだ。彼はスーパーサンデーでもオジエに4.3秒差、エヴァンスに4.4秒差をつけており、大量ポイント獲得に向けた計画はシナリオどおりに順調に進んでいる。
トヨタが総合順位でがっちりとトップ4をキープするなか、ゴールを目前にして悪夢のドラマがふたたびヒョンデのヌーヴィルを襲いかかった。
タイトターンが連続する下りのセクションでヌーヴィルが左フロントタイヤのデラミネーションに見舞われてスローダウン、タイヤが完全にブローした状態でフィニッシュしたため、1分をロスしてしまいタナクの後方7位へと転落してしまった。あとわずか数秒でフールモーを捕らえるチャンスもあり、スーパーサンデーでも4位につけていたが、すべて水の泡だ。「・・・パンクについてはよくわからない。ダッシュボードに警告が出たのは見た。ステージの最初の方に、いくつかカットでよごれたところがあったが、どこでこうなったのかわからない」とヌーヴィルは首を横に振った。
残されたのは最終ステージのマスパロマスのパワーステージだ。カナリアスの週末をとおして圧巻の速さをみせてきたロヴァンペラがここでもライバルたちを4秒引き離すトップタイムをマーク、パワーステージとともにスーパーサンデーを制してパーフェクトな勝利を飾ることになった。
「今週末は素晴らしかった。今季は散々なスタートを切ったが、ようやく僕らは戻ってきた。チームのみんなにおめでとうと言いたい。マシンは本当に速かった」とロヴァンペラは喜びを語った。
2位にはオジエ、3位にエヴァンスが続き、トヨタが表彰台を独占、4位には勝田が続いており、トヨタは2023年のサファリ・ラリー以来となる1-2-3-4を達成することになった。
ヒョンデ最上位の4位にはフールモー、6位にはタナク、7位にはヌーヴィルが続いている。チームにとってはペースが上がらず悲惨な週末となったが、ヌーヴィルはチームの無念さを代弁するように強くなって戻ることを誓っていた。「何と言っていいかわからない。良い週末でなかったことは確かだ。すごく苦戦したし、もっと努力しなくてはならない。なにかが間違っていたのだと思う。それでも、問題はたくさんある中で、チームは戦い続けている」
Mスポーツもセットアップに苦しんだ週末となり、マクアリーンは最終日のアクシデントでゴールを迎えることができなかった。チームメイトのグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1)も土曜日のコースオフで3分あまりも遅れて13位まで後退、最終日もアンダーステアと戦いながらもどうにか11位までポジションを戻したが、ポイント圏内には惜しくも届かなかった。
第4戦ラリー・イスラス・カナリアスを終えて、ドライバーズ選手権ではエヴァンスがリードをさらに拡大、完璧な週末となったロヴァンペラが57ポイント差から43ポイント差へと挽回して選手権2位へと躍進している。わずか7ポイントの獲得に終わったヌーヴィルは50ポイント差の3位へと後退、オジエが51ポイント差、タナクも52ポイントのビハインドとなってしまった。
また、マニュファクチャラー選手権では、開幕から4連勝を飾ったトヨタがスウェーデンに続いて一戦で獲得できる最大ポイントを獲得、ヒョンデに対するリードを26ポイントから51ポイントへと大きく拡大することになった。
次戦は5月15〜19日に行われるラリー・デ・ポルトガルだ。