WORLDWIDE2018/01/30

勝田貴元、「これまでで一番のパフォーマンス」

(c)Toyota

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 トヨタGAZOOレーシング・ラリーチャレンジプログラムの2018年シーズンが始動。欧州でトレーニング中の勝田貴元、新井大輝およびコドライバーの足立さやかが、1月25〜27日に開催されたフィンランドラリー選手権の開幕戦アークティック・ラップランド・ラリーに参戦し、勝田が総合3位、足立/ヤルコ・ニカラが7位、新井/グレン・マクニール組が12位で、3組揃って完走を果たした。

 これまで数多くのトップドライバーを輩出してきた伝統あるアークティック・ラップランド・ラリーは、気温が氷点下30度近くまで下がることもあるスノーラリーで、世界で最も寒いラリーとも言われている。競技車両は、滑りやすい路面でグリップを掴むためスタッドタイヤを使用し、非常に高速なコースのためペースノートの正確性が重要な鍵となる。

 11SS/254.65kmで競われた今年は一番上のクラスのR5車両が18台参戦し、これまでにないハイレベルな熱戦が繰り広げられました。勝田と新井にとっては今回が3度目の挑戦となり、昨年に引き続きフォード・フィエスタR5でシーズンをスタートすることになった。

 勝田はSS1で2番手タイムをマークすると、その後も終始安定したペースでクリーンな走りをキープ。デイ2では5位で迎えた48.69kmの今大会最長の最終ステージでは3番手のタイムをマークする走りを見せ、最終的に総合3位でポディウムを達成している。

 勝田は、これまでで一番のパフォーマンスができたと語り、成長へのたしかな手応えを感じているようだ。

「今回は今までで一番のパフォーマンスができたと感じており、とてもうれしいです。昨年からの最大の変更は、ペースノートの角度のスケールを変えたことです。それによって指示がよりシンプルで明確になり、レッキもし易くなりました」と勝田は語った。

「今回の目標は、まずは完走。そして、常に10〜20パーセントのマージンを持って走り、安定したペースを保ちながら本当に自信のあるところだけプッシュするということでした。その目標は達成できたと思います。学ぶこと、改善すべきことはまだたくさんありますが、正しい方向に進んでいると思います」

 2016年にここで3位表彰台を達成している新井は今年は不運なスタートとなり、SS2でスノーバンクでスタックし、約2分のタイムロスをすることになった。その後は、セッティングを変えながら挽回を試み、デイ2のSS7では2番手タイムをマークしたが、最終ステージでメカニカルトラブルによって再びタイムを失い、最終的に12位でラリーを終えている。

「昨シーズンからしばらく間があったので、またR5車両で走れるのはとてもワクワクしました。今回は、ペースノートを簡素化したことで、走行中に余裕が生まれ、重要な情報に集中でき、とてもうまく作用しました」と新井は語っている。

「残念ながら初日にコースオフしてしまい、最終ステージでもメカニカルトラブルによりタイムを失ってしまいましたが、自分が最も重視したのはよいペースの走りをすることでした。結果的には、ネガティブなことよりポジティブな内容を多く得ることができ、次のラリー・スウェーデンのよい準備ができたと思います」

 一方、R4マシンであるスバル・インプレッサWRX STIで昨年に続き2度目の挑戦となったニカラ/足立組は、格上のR5マシンに交じりSS1を5番手で終え順調なスタートを切るも、SS2のフィニッシュ手前で立ち木にヒットしタイムロス。また42.69kmと距離の長いSS4ではパワーステアリングを失い、約30キロの区間をパワーステアリングなしで走ることを余儀なくされるなどトラブルが続くことになった。しかし、セッティングを変えて臨んだデイ2では徐々に調子を取り戻し、7位でラリーを終えている。

 足立さやかは次のようにコメントしている。

「このラリーではたくさんレッキができたので、ペースノートの良い練習になりました。今回からノートに小さな変更を加え、ヤルッコがより理解しやすいようフィンランド語を増やしました。今年のSSの多くは、昨年のステージに対してスタートからゴールへの方向が反対に設定されており、一つは完全に新しいステージでした。それでも昨年の経験はとても役立ち、余裕を持ってノートを作ることができました。まだ学び中ですが、今回のリーディングには自分自身満足しています。今回の経験をまた次戦に活かしたいと思います」

 ヤルッコ・ニカラは次のようにコメントしている。

「周りのR5車両に対して、自分たちのR4ベースの車両で勝てるチャンスはほとんどないとは思っていましたが、想像以上に大変なラリーでした。ですが、サヤカとの共同作業はうまくいっています。SS7の1か所だけ少しリーディングが早すぎ、お互いが少し混乱する場面がしばらくありましたが、それ以外は特に問題なく、非常によい進歩を遂げています。経験を重ねることが大切だということを改めて感じました」

 チーフインストラクターであるヨウニ・アンプヤは次のようにコメントしている。

「アークティック・ラップランド・ラリーはレッキの回数に制限がないので、今回ペースノートの表現に変更を加えた我々のクルーにとっては有益でした。勝田と新井はプログラム4年目となり経験も増えてきたので、今年は結果・パフォーマンスにおいても成長が見られることを期待しているのですが、今回早くもそれが実現しました。この高速ラリーで勝田が見せた安定性レベルを保つことは容易なことではありません。足立も着実な成長を見せてくれました。学べば学ぶほど、新しい発見が増えます。次のラリー・スウェーデンでは、ここで学んだことを皆が実践してくれると期待しています」

 次戦は勝田、新井、足立ともに2月9〜12日に開催される世界ラリー選手権第2戦 ラリー・スウェーデンとなる。今回のラリー同様、寒い天候の中、雪と氷の高速ステージで競うラリーです。スウェーデンは3組ともにフォード・フィエスタR5での参戦を予定しており、R5車両での参戦が初めてとなるニカラ・足立組にとっては一段階上の挑戦となる。