ERC2022/06/12

地元のマルツィックがERCポーランドをリード

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第4戦ラリー・ポーランドは、予選ステージでトップタイムを奪ったニル・ソランス(ヒョンデi20 N Rally2)が速さをみせてラリーをリードするも、終盤でステアリングを壊してストップ、地元のミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)がレグ1をリードすることになった。

 何千人もの熱狂的なファンが見守るなか、ポーランドは、金曜日の夜に行われたミコワイキ・アリーナのスーパーSSで開幕することになった。2台併走のこのスタジアムコースではイン側のマシンがかき上げるグラベルでアウト側のマシンがフロントガラスにひびが入ってしまうトラブルが続出することになった。ソランスはそうしたハプニングに驚いた一人となったが、このスーパーSSを制してラリーをリード、今週水曜日に初めてi20 N Rally2のステアリングを握ったにもかかわらず、いいフィーリングで走ることができていると自信をみせた。「このラリーは難しいことは分かっている。高速で走れば、小さなミスが大きな結果につながるから、これからが勝負だ。でも、このクルマは快適だから楽しんで走りたいよ」

 しかし、4番手で土曜日の朝を迎えた地元のマルツィックは、ラリーがミコワイキ東部の高速グラベルステージに舞台を移すや、SS2クシヴェとSS3ヴォイナシーで連続してベストタイムを奪い、ソランスと同タイムで首位で並ぶことに成功した。

 高速ステージのヴォイナシーを平均速度124.0km/hという記録的な速さで走り終えたマルツィックは、「本当にスプリントだ。これが27kmも続くステージだったらやばかった!でも、その半分の短かさでよかったよ」と興奮気味に語った。2017年に最後にWRCとして開催されたポーランドでWRカーが叩き出した最速タイムに匹敵するスピードだ。

 続くSS4ヴィエルチュキはこのラリーで最も長い24.76kmのステージだ。ここではソランスが最速タイムを記録し、マルツィックに4.6秒差をつけてふたたび単独で首位をリードする。「ヴィエルチュキは僕が以前に走ったことがある最初のステージだから、ステージを知り尽くしている自信があることをアピールしやすかったよ。このようなコンディションでヒョンデの速さは素晴らしいよ」とソランスは語った。

 しかし、午後のループになると、ふたたびマルツィックが逆転にむけて反撃を開始する。彼はSS6クシヴェでベストタイムを奪ったが、2回目のループは走行によって柔らかい路面には深い轍が刻まれており、小さなミスによって左リヤをなにかにヒットしたのか完全にはぎとられた状態だ。

 ここで彼はソランスから0.2秒を奪うも、次のステージではライバルに1秒差でベストタイムを奪われ、その差は5.4秒へと広がってしまう。「最初のステージでミスをしたあとマシンは完璧ではないんだ。深い轍が難しく、僕らは道路にとどまることに集中している」

 しかし、SS7ヴィエルチュキのステージで思ってもみなかったドラマが発生する。深い轍のなかで何かに乗り上げたのか大きな衝撃で姿勢を乱したソランスは、しばらく走行を続けていたが左コーナーでインをカットした瞬間に完全にステアリングを壊してしまってそのままアウト側にコースオフ、リタイアとなってしまった。

 マルツィックはSS7でのベストタイム、さらにSS8ミコワイ・アリーナでも連続してベストタイムを奪い、トム・クリステンソン(ヒョンデi20 R5)に20.4秒差をつけてレグ1をトップで折り返した。

「正直に言うと、とてもうれしい。このラリー・ポーランドは僕にとって特別なもので、自分の成長に新たな一歩を踏み出すことができたからだ」とマルツィックは語った。彼は昨年のポーランドで3位フィニッシュ、ERC初ポディウムを奪っているが、明日はERC初勝利に挑むことになる。

「今日は過去に走ったことのあるステージだけでなく、新しいステージもあった。ニル(・ソランス)がここにいないのは残念だが、これもラリーの一部だ。僕たちはここにいることに感謝したい。明日は長い一日だが、調子は良いので頑張るつもりだよ」

 ジュニアWRC王者のクリステンソンは、かつてのヤリ・フットゥネンがそうだったようにチーム2Bラリーレーシングからポーランド選手権に挑戦するチャンスをもらっており、ポーランドのグラベルにはかなり自信をもっていることを認めている。「素晴らしい一日だった。ポーランドでドライビングが上達したし、多くの経験を積むことができたので、とてもとても幸せだよ。かなりタイトな戦いだったけど、僕たちはそれにのめり込んでいるし、クルマのフィーリングはすべてとてもいい」

 昨年のERCジュニア1でチャンピオンとなったエストニアのケン・トルン(フォード・フィエスタRally2)は丸一日、クリステンソンにプレッシャーをかけ続けて、1秒差まで迫ることもあったが、荒れたステージコンディションでペースを落とし、最終的に5.6秒差の3位で続き、初ポディウムに向けて素晴らしいスタートを切っている。「かなりトリッキーだった。轍の中に岩があったりするから、本当に気をつけないといけなかった。クルマにちょっとした問題があったけど、大丈夫でよかったよ」

 今季からRally2にステップしたトルンは、ERC開幕戦でラジエーターの破損でリタイアとなったが、リスタートした最終日にパワーステージを制す速さをみせ、さらに第2戦のアソーレスでもメカニカルトラブルでマシンを止めるまで3位争いにつけており、開幕戦の速さが偶然ではないことをこの週末こそ証明するかもしれない。

 ソランスに5ポイント差をつけて選手権をリードするチームMRFタイヤのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)は朝のループでは5位と出遅れたが、午後になるとペースを上げて、トルンから0.3秒差の4位で一日を終えている。「僕たちは戦っている。自分のペースは最初から良かったが、スピードは完璧ではなかったので、ベストを尽くしたよ。終盤のステージは路面がとても壊れてしまっていた。僕らは気をつけようと思ったけど、みんなすごく速く走っていた。でも、これからだよ」

 5秒差の6位にはシモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRally2エボ)、7位には地元のエイドリアン・チュウェチュク(シュコダ・ファビアRally2エボ)、チームMRFタイヤから出場するハンガリー王者のノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が8位で続いている。

 また、チームMRFのシモーネ・カンペデッリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)はこの日の最初のステージで右コーナーでスライド、水のたまったディッチに滑り落ちてスタック、26分をロスするという悪夢のスタートを迎えており、60位という厳しいスタートとなっている。

 ERC3はロベルト・ヴィルヴェス(フォード・フィエスタRally3)がリード、ERC4はローラン・ペリエ(オペル・コルサRally4)がトップとなっている。