WRC2017/06/10

波乱のレグ1を終えてパッドンがリード

(c)Hyundai

(c)Toyota

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第7戦ラリー・イタリア・サルディニアは、長くタフな金曜日を終えてヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)が首位に立っており、チームメイトのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が8.2秒差で続く展開になっている。

 ラリー・イタリア・サルディニアは木曜日の夕刻に行われたイッティリ・アレーナ・ショーで開幕、金曜日の朝からグラベルステージへと戦いの舞台を移して本格的な戦いがはじまることになった。ナイトホルトが置かれた島東部のオルビアは朝から気温が25度近くまで上昇、ステージは完全なドライとなり、厳しい一日が始まろうとしていた。

 オープニングステージとなったSS2テッラノーヴァでは9番手のポジションからスタートしたクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)がベストタイムで首位に浮上、0.5秒差でパッドンが続く展開で始まることになったが、SS3モンテ・オリアでは10番手というスタート順に恵まれたトヨタのユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)がトップタイムを奪い、ミークを0.2秒差で抜いてラリーをリードすることになった。

 後方からスタートしたドライバーたちが予想どおりに好タイムを並べて上位を占めたのに対して、スタートの早いドライバーたちは路面にたまったルースグラベルと戦い、さらに巻き上げられたダストによって視界に苦しむことになった。3番手スタートのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)はどうにか6位を守ったが、木曜日のスーパーSSでラリーをリードした2番手スタートのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はSS3の滑りやすいジャンクションでオーバーシュートしたために10位にとどまり、一番手スタートのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)に至っては早くも29秒遅れの11位という有り様だ。

 選手権上位のドライバーたちが路面をクリーンにすることで後方のドライバーたちはさらに勢いづく。SS4トゥーラでミークがハンニネンを抜いて首位を奪還、パッドンも0.2秒差の2位に浮上することになった。だが、このステージでDMACKワールドラリーチームのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)やマルティン・プロコップ(フォード・フィエスタRS WRC)が滑りやすいコーナーでクラッシュ、ラリーは気温の上昇とともにサバイバルの様相を呈してくる。SS5テルグ〜オージロをスタートして4.6kmの地点でなんと首位のミークが横転、フロントガラスを失い、右側やルーフの壊れたマシンでステージエンドにどうにか辿りつくも8分近くをロスすることになってしまった。

 さらに最悪なことにサービスに帰ったところでミークのC3のロールバーには深刻なダメージがあったことが発覚、3戦続けてクラッシュでリタイアとなってしまった。

 朝のループを終えて、ミークのトラブルによってパッドンが首位へと浮上。しかし、彼もトラブルと無縁ではなく、エキゾーストの熱で何かが焦げて煙が室内に立ちこめるトラブルを抱えたが、幸いにも走行には問題がなかったようだ。ハンニネンは、SS4でリードを失ったものの、パッドンから4.3秒差の2位で続き、さらにSS5で2番手タイムを奪ったマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)もハンニネンの0.1秒後方に迫ってきた。

 パッドンは2回目のループも快調な走りでスタート、SS6テッラノーヴァ2でハンニネンとの差を5.6秒へと広げることに成功したものの、SS7モンテ・オリア2では左フロントダンパーに問題を抱えることになる。

 それでもパッドンは正常な状態ではなくなったダンパーとタイヤいたわりながらもどうにか午後のループでも首位をキープした。

「午後は問題があったが、うまく最後まで走りきることができた。今日の優先事項は、明日の為に良い出走順を得ることだった。そしてその目標は達成できたよ」とパッドンは満足そうに語っている。

 2位で午後のループをスタートしたハンニネンは走行によってラフになったコンディションに不満を述べていたが、それでもパッドンから7.9秒遅れで最終ステージに向かったものの、最後のセクションでフロントをクラッシュ、38秒失って6位に転落することになった。

 ハンニネンのヤリスはボンネットが歪み、冷却システムのパイプが破損しており、蒸気と水が漏れだしている。彼はロードセクションで修理を行ったものの、完全には直せず、ラジエータに水を補給しながらアルゲーロのサービスへ向かうことになった。
 
 ハンニネンの後退で2位へ浮上してきたのはヌーヴィル。朝のループでは滑りやすい路面で出遅れたものの、午後のループでペースを上げることに成功、SS8では2本のスペアタイヤを搭載したためにマシンバランスに悩むオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)とともにタイヤチョイスに失敗したオストベルグを抜いて一気に3位まで浮上、ハンニネンの脱落によってパッドンから8.2秒遅れの2位で金曜日を終えることになった。

 ヌーヴィルと1.3秒差の3位にはタナク、さらに0.3秒差の4位には朝のループで6位に沈んでいたラトバラが浮上してきた。いっぽう、朝のループを4.4秒差の3位で終えたオストベルグは、午後のループをハードタイヤとソフトタイヤのギャンブルで挑んだものの、ずるずるとタイムを落として5 位で初日を終えることになった。

 2番手スタートのヌーヴィルと3番手スタートのラトバラが午後のステージでペースを上げたにもかかわらず、1番手スタートのオジエは引き続きスリッパリーな路面に苦しんで首位から41秒遅れの7位でフィニッシュ、「最悪だ。まるで悪夢だよ。グリップが全くなかった。明日も僕にとってはあまり改善しないだろう。僕より前に走るマシンは多くないだろうからね。だがこれがWRCだ」とうんざりした表情で語っていた。

 初日にセンセーショナルな速さをみせたのはトヨタの新人エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)。後方からのポジションに恵まれた彼だが、SS2から2速ギヤを失ったマシンで大きくタイムを落として12位まで後退することになったが、彼はなんと壊れたままのギヤボックスでSS5でキャリア初のベストタイムを獲得してみせる。

 ラッピはギヤボックスをサービスで交換したあと、午後のステージでもSS6、7と連続してトップタイムを奪って存在感をアピール、8位でフィニッシュすることになった。

 シトロエン・ワークスからスポットで参戦するアンドレアス・ミケルセンシトロエンC3 WRC)は慎重なペースをキープ、朝のループを8位で終えるも、午後のループではエンジンが不調に陥ったためにストールを繰り返して9位となっている。

 クレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)は好タイムを並べてSS3を終えて5位につけていたが、ジャンプの着地でギヤボックスハウジングを破損、SS4にむかうロードセクションでリタイアとなった。

 SS4のトップタイムなど上位進出が期待されたダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)はSS5のターボトラブルで9位まで後退。さらにサービスでのターボパイプの修理に問題があり、午後のループでも大きくタイムを落として14分28秒遅れの28位まで順位を落としている。それでも彼は自力で修理を行い、SS8、9と連続してベストタイムを奪って19位まで挽回、トラブルが悔やまれる速さを見せている。