WRC2016/10/29

波乱続出、オジエが雨のGB初日をリード

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 2016年世界ラリー選手権(WRC)第13戦ラリーGBの初日、フォルクスワーゲン勢に相次いでドライブシャフトのトラブルが発生するなか、あわやの危機を乗り越えたセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)が首位に立っている。

 28日のDay1は伝統的なフォレストステージであるミヘリン、スウィートラム、ハフレンを昨年とは逆方向から走り、この4ステージをデイサービスなしでニュータウンのタイヤフィッティングゾーンを挟んで午前と午後で2回ループする8SS/178.22kmというラリー最長の一日となる。

 例年より開催が2週間早まったことで、ウェールズはレッキからシェイクダウンまで好天が続き、ラリーウィークもほぼドライになると予想されたが、オープニングSSのミヘリンは朝から霧雨が降りつづき、ウェットコンディションとなり、さらに濃霧が立ちこめて難易度を上げることになった。

 この状況をもっとも喜ぶことになったのは、前戦で4年連続で王者を決めたオジエだった。1番手でスタートする彼は31.82kmのSS1ミヘリンをトップタイムで発進、後続になるほど滑りやすいコンディションとなったが、8番手ポジションからスタートしたDMACKワールドラリーチームのオット・タナク(フォード・フィエスタRS WRC)が7.6秒遅れの2番手タイムで続くことになった。

 オジエは続くSS2スイートラムでもベストタイムを奪い、タナクに対して12.1秒をリード、早くも独壇場を築いて逃げるかに思われた。しかし、35.14kmのSS3ハフレンは朝の2つのステージより霧もなく、比較的ドライでグリップがあるコンディションとなる。ここでタナクはオジエを2.2秒上回るベストタイム、さらに彼は続くSS4ディフナントでも連続してベストタイムを奪い、ここでも2.2秒を縮め、オジエの7.7秒差まで詰め寄って朝のループを終えることになった。

 しかし、ハフレンではVW勢にまさかの事態が発生する。ステージを走り終えたオジエは「トランスミッションからよくない音がするのが少し気になる」と不安そうな表情で語った。しかし、オジエの後方2番手のポジションで走っていたチームメイトのアンドレアス・ミケルセン(VWポロR WRC)は右フロント・ドライブシャフトに問題を抱えて1分23秒をロス、10位まで後退することになってしまった。

 朝のループを終えてVWの二人はそれぞれに不安と問題を抱えながらもこの日はデイサービスがないためタイヤ交換のみで午後のループに立ち向かわなければならない。ミケルセンは2輪駆動のマシンでステージに向かわざるをえず、オジエは祈るような顔でふたたび小雨が降り出したSS5ミヘリンをスタートする。幸いにもオジエのマシンの異音は消えており、彼はベストタイムでふたたびリードを広げることになった。

 オジエは続くSS6でも好調な走りをキープしてベストタイム、追撃が期待されたタナクはリヤサスペンションに問題を抱えて2つのステージで10秒近くを失い、どうにか2位をキープしたものその差は17.4秒へと広がり、次第にリズムを見いだして俄然ペースを上げてきたヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)に23.4秒差まで詰め寄られることになってしまう。

 ところが次のSS7ハフレンでラトバラにミケルセンとまったく同じ駆動系のトラブルが発生、彼は右リヤのドライブシャフトを壊して2分26秒をロス、3位から瞬く間に8位まで後退することになってしまった。

 タナクも引き続きサスペンションに問題を抱えてり、初日の最終ステージを前にオジエのリードは23.3秒へと広がることになった。しかし、最後のステージで今度はオジエがステージ終盤でドライブシャフトに違和感を感じてペースをダウン、どうにか彼は2番手タイムで走りきり、首位をキープしたものの、その表情はけっして穏やかではない。

「ドライブシャフトが壊れたと思った。3台が同じ日に同じ問題が起こるなんてことはこれまでなかった。どうにかしなければならないね」とオジエは語り、サービスでチェックしてもらうためにディーサイドへと急ぐことになった。

 オジエがペースを緩めたにもかかわらず、ツキがないタナクはこのステージの残り6km地点でパンクに見舞われたために14秒をロス、2位をキープするもオジエから37.3秒遅れとなってしまった。

 3位には、最終ステージで初めてのベストタイムを奪ったティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 WRC)が浮上してきた。ドライバーズ選手権の2位を争うミケルセンがドライブシャフトの問題でけっきょく9分近く遅れた19位まで後退したため、ヌーヴィルにとってはここで選手権争いを大きくリードする絶好のチャンスになっている。

 とはいうものの、ヌーヴィルから3.8秒差の4位にはチームメイトのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)、さらに2秒差でクリス・ミーク(シトロエンDS3 WRC)が続いており、この3人による表彰台をめぐるバトルは二日目以降もさらに激しさを増すことになりそうだ。

 6位にはスリッパリーなコンディションのなかでペースが上がらなかったダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 WRC)、7位という不本意な初日となったマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)が続き、駆動系に泣いたラトバラもどうにか8位で初日を終えることになった。

 ラリー・ドイッチュランド以来の復帰戦に臨んだステファン・ルフェーブル(シトロエンDS3 WRC)が9位につけているが、チームメイトのクレイグ・ブリーン(シトロエンDS3 WRC)はオープニングSSを4位でスタートして期待させたが、SS5で横転してリタイアとなっている。

 明日のラリー二日目は99.91km/8SSという比較的短い一日となるが、デイサービスが設定されないため、さらなる困難も予想されている。