WRC2017/07/02

1日で4度のトップ交代劇、ヌーヴィル首位を守る

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 世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・ポーランドの土曜日はティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)とオット・タナク(フォード・フィエスタWR)が4回にわたって抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げることになり、ヌーヴィルが3.1秒ながらラリーリーダーとしてこの日もゴールを迎えることになった。

 大雨によりマディなコンディションとなった金曜日とはうって変わってミコワイキは青空が広がった朝を迎えることになった。ヌーヴィルは首位で初日を終えたものの、タナクとの差はわずか1.3秒に過ぎない。この日のオープニングSSとなったSS11バラノボ(15.55km)では3位につけていたヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)がいきなりベストタイムを奪い、タナクに3.2秒差に迫ることになり、トップ3はわずか5.8秒差にひしめく大接戦のスタートとなった。

 タナクはSS11のゴール地点でサスペンションが柔らかすぎたと不満を述べたが、続くSS12ポゼッジェ(24.28km)で素晴らしい速さをみせることになった。タナクは背後に迫ってきたラトバラに4秒差をつけて突き放しただけでなく、スタートしてすぐの地点でオフしかかったヌーヴィルを6.1秒上回り、逆転に成功、3.5秒差でラリーをリードすることになった。

 だが、最速タイムを奪ってSS12をフィニッシュしたタナクも問題がなかったわけではない。彼はクルマをすぐに降りると、フロントバンパーの空気吸入口の草や土をはらい、「非常に滑りやすくて、フィールドの方にオフした。でも僕たちはコースに戻ることができてラッキーだった」とひやりとした瞬間があったことを告白した。

 波乱の朝を迎えたのは選手権リーダーのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)だ。4位で初日を終えた彼は、SS11を終えてヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 クーペWRC)に1.1秒差に迫られたことから、ペースアップを図るが、SS12をスタートして最初のコーナーの道路標識にリヤタイヤをヒット、中間スプリットでは速かったが、残り1kmの地点でタイヤがリムから外れてスピンして段差にヒット、フィエスタのフロントにダメージを受け、バンパーがぶら下がった状態で30秒もの遅れを喫してフィニッシュ、5位に転落することになった。

 いっぽう、ヌーヴィルはSS14クルクランキでこの日初のトップタイムを奪ってタナクを逆転、さらにサービスを挟んだあとのSS15バラノボでも連続してベストタイムを叩きだし、タナクに3秒差をつけることになる。選手権をリードするオジエがエアロのないマシンでさらにタイムを失い6位まで後退しているだけに、ヌーヴィルはこのままフィニッシュすれば、オジエまでわずか1ポイント差に迫ることができる状況となった。

 だが、SS16ポゼッジェでヌーヴィルとともにポディウムを争っているトップ3全員にまさかのドラマが発生する。

 ヌーヴィルはスタート直後の2km地点で左リヤタイヤをパンク、そのまま残りの20kmあまりをつっ走ったものの、ゴール地点に辿り着いた彼のマシンのリヤフェンダーはバーストしたタイヤで吹き飛んだ状態だ。これで彼は20秒近くをロス、この結果、タナクがヌーヴィルを14.4秒リードして首位に立つことになった。

 ところが、タナクもまたまた安心していられる状況ではない。彼はステージを走行中にフィエスタのリヤウイングを吹き飛ばした状態であり、エアロを失ったマシンでこのあとのステージに臨まなければならない。

 それぞれに問題を抱えながらもどうにか次のステージへと向かった二人に対して、さらに最悪の事態が待っていたのは3位につけていたラトバラだ。彼は、12.9km地点でテクニカルトラブルにより突然マシンをストップ、ステージのなかでヤリスの修理を必死に試みたが、残念ながらリタイアとなってしまった。
 
 そして迎えた14.75kmのSS17ゴウダップ、リヤウイングを失ったタナクはヌーヴィルより8.3秒遅れ、首位をキープしたものの、ヌーヴィルに6.1秒差に迫られることになった。そして二人の激しいバトルをさらに試練を与えるかのように、SS18クルクランキではタナクとヌーヴィルの二人がゴールを迎える時間になって突然の豪雨がステージを打ち付ける。

 タナクはここでも8秒あまりもタイムをロス、勝負どころと判断したヌーヴィルは傲然とアタックをしかけたものの、終盤の土砂降りにタイムを伸ばすことができず。それでもヌーヴィルはSS18のベストタイムをマーク、この日4度目となる首位交替を果たし、3.1秒をリードして最終日を迎えることになった。

「(SS18の)最後の5kmはものすごい雨だった。その前のアスファルトのセクションも濡れていた。ものすごく苦しんだよ。かなりハードにプッシュしたが、雨は不運だった。明日、タナクを押さえられるかだって? どうなるか見てみよう」とヌーヴィルは語っている。

 タナクもこの差がまったくないものに均しいと考えており、「自分ができることの最善を尽くす。明日もまだ何が起きるかわからない」と、昨年失った勝利への野心を燃やしていた。

 ラトバラのリタイアによって3位で土曜日を終えたのはパッドン。SS13でこのイベント初のベストタイムに続き、終盤のSS16、17でも連続してベストタイムを奪った彼は、長き不振からの復活もいよいよ本物かと印象づける走りで、明日の最終日に一年ぶりの表彰台を賭けて挑む。

 オジエもやっと本来の速さを取り戻したかのようにSS16で2番手タイムを出してダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)を抜いて4位に順位を上げている。終盤にエンジンな不安定な状態になる問題を抱えたが、どうにかポジションを守ってゴールを迎えることになった。

 テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)は、これがほとんどテストできないままに挑んだWRカーデビュー戦だとは信じられないほど、ノーミスで快走を続けている。SS16でコースオフしたものの、幸いにも大事には至らず、ベテランたちを抑えて6位をキープしている。

 路面が乾いたことでシトロエン勢はやっと本来のスピードの片鱗をみせることになった。ステファン・ルフェーブル(シトロエンC3 WRC)は終盤のSS17、18で連続して3番手タイムを奪い、若いスニネンの14.1秒後方まで迫ってきた。

 8位はマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)。朝のループを終えて、彼はルフェーブルに9秒差まで迫ったが、午後のループでは雨にむけたセットアップに変更したことが失敗に終わり、26秒もの差をつけられてしまった。

 DMACKを武器に首位争いさえ期待する声があったが、エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)は9位に低迷、それでも路面がフラットなミコワイキ・アリーナのスーパーSSは3日間にわたってトップタイムをマークしている。シトロエンC3 WRCの進化バージョンの実戦テストを行っているアンドレアス・ミケルセンは、サスペンションダメージを負った初日の遅れを取り戻すべくペースを上げたが、午後のループでフロントのスプリッターを壊して10位でこの日を終えている。

 明日は4SS/59.66kmという短い一日となるが、わずか3.1秒差のヌーヴィルとタナクの勝敗の行方はまったく見えない。一瞬のミスも許されない緊迫の最終日が待っている。