WRC2019/10/28

15年間のフランス時代終焉、エストニア初王者誕生

(c)Toyota

 トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナクは、ラリー・デ・エスパーニャを2位でフィニッシュ、悲願のワールドチャンピオンに輝くことになった。

 世界ラリー選手権は2003年にノルウェー生まれのペター・ソルベルグがチャンピオンになって以降、2004年から2012年までセバスチャン・ローブが9年連続で、2013年から2018年までセバスチャン・オジエが6年連続で王者に輝いてきたが、15年間にわたってフランス出身のチャンピオンが君臨してきた時代はここに終わりを迎え、エストニア初のワールドチャンピオンの誕生とともに新時代を迎える。

 ラリー・デ・エスパーニャの最終日を3位で迎えたタナクは、最終ステージを2位につけるダニエル・ソルドから5.8秒差でスタート。選手権のボーナス・ポイントがかかるパワーステージでのポイント次第では、タイトルの決着はラリー・オーストラリアに持ち越しになる可能性もあったが、タナクはここでベストタイムを記録するとともにわずか0.4秒差でソルドを逆転、最終戦待たずしてドライバーズタイトルを決定することになった。

 タナクとマルティン・ヤルヴェオヤにとっては初めてのWRCタイトルとなり、エストニア人初のWRCチャンピオンに輝くことになった。また、トヨタのドライバーが世界王者となるのは、1994年以来で通算5回目となる。1990/1992年カルロス・サインツ(セリカ GT-FOUR)、1993年ユハ・カンクネン(セリカGT-FOUR)、そして1994年のディディエ・オリオール(セリカGT-FOUR)以来、実に25年ぶりにトヨタのマシンを駆ったワールドチャンピオンが誕生することになった。

「今の気持ちを言葉にすることは簡単ではないよ。この週末に感じたプレッシャーは、これまでとは違うレベルだった」と、タナクはこれまでにないプレッシャーがあったことを告白した。

「ワールドチャンピオンになることは、自分の人生の目標だった。ミスをすることは許されず、しかしタイトルを決めるためには良い結果が必要だったので、とても大きなプレッシャーを感じていたし、スタート直後はいつものように走れなかった。しかし、最終的にはリラックスすることができたし、今朝もクルマのフィーリングが良く、いいリズムで走ることができた」

「それでもダニ(・ソルド)の方が常に少しだけ速く、パワーステージで必要なポイントを獲得するのは難しいように思えたが、それでも全力で攻めたことが、結果的に報われた。これまで、いくつもの試練を乗り越えてきたので、ついにタイトルを獲得できて本当に嬉しく思う。素晴らしい仕事で我々を支えてくれたチームに感謝したい」

 トヨタGAZOOレーシングWRTのトミ・マキネン代表は、タナクの偉業を讃えた。

「歴史的な快挙だ。我々のチームから新たなる世界チャンピオンが誕生したんだ。チームの全員がオイットとマルティンと共に、シーズンを通してハードワークを続けてきたが、素晴らしい結果によってその努力が報われた。この週末、オイットには大きなプレッシャーがかかっていた。それがどのようなものなのか、同じような経験をした私には分かるが、一般的にはなかなか理解されないものだ。タイトル獲得のためにパワーステージでオィットが見せた走りは、本当に素晴らしいものだった。また、彼が2位に入ったことはマニュファクチャラー選手権争いにおいても助けになる。オーストラリアではまだ逆転の可能性が残っているので、全力で戦いに臨むつもりだ」