ERC2025/10/07

2期生と3期生が難関ターマックのクロアチアに出場

(c)Toyota

(c)Toyota

(c)Toyota

 
 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生の山本雄紀、3期生の後藤正太郎と松下拓未が、10月3日(金)から5日(日)にかけてクロアチアで開催された、FIAヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第8戦クロアチア・ラリーに出場。非常に難易度の高いターマック・ラリーで、山本は総合11位でフィニッシュ、松下はERC3部門9位で完走したが、後藤は最終日にリタイアとなった。
 
 今年、ERCの最終戦として開催されることになったクロアチア・ラリーは、過去2021年から2024年にかけてこれまでに4回にわたってWRCとして開催されており、2026年にはWRCのカレンダーに復帰することになっている。

 世界でも最もトリッキーかつ難易度の高いターマックラリーとして知られる、クロアチア・ラリーは、路面の舗装状態が刻々と変化し、路肩部分にタイヤを落として直線的な走行ラインをとるインカットが可能なコーナーも多くあるため、路面に泥や砂利が広がりやすく、グリップレベルは絶えず変化する。さらに、雨が降るとグリップがさらに低下するため、ドライバーには路面の変化を読む能力と、迅速な対応力が求められる。

 2期生の山本にとってクロアチア・ラリーは、初チャレンジだった2024年以来となる2回目の出場となる。2025年のWRCはシーズンの途中でグラベルラリーが続いたため、山本にとっては4月のラリー・イスラス・カナリアス以来、久々のターマックラリー出場となった。個人的な理由により過去2戦を欠場していたコドライバーのジェームズ・フルトンとのペアも復活し、彼らにとって今年最後のWRC2参戦イベントとなるラリー・ジャパンに向けて、準備を進めることも今回のクロアチア・ラリーでの大きなテーマとなった。

 GRヤリスRally2を駆る山本は、ラリー最長となった土曜日の初日、午後のループで非常に良い走りを続け、総合9位まで順位を上げた。しかし一日の最後のSS6でタイヤにダメージを負い、交換作業のため約2分をロス。その結果、総合14位まで順位を下げることになった。しかし、日曜日はSS8で5番手タイムを記録するなど再び速いペースで走行。土曜日よりも走行距離は短かったものの、降雨により非常に難しいコンディションとなったクロアチアの道を走り切り、総合11位まで順位を挽回してラリーを終えることになった。

山本雄紀:「ラリー・イスラス・カナリアス以来となる、久々のターマックラリーで、しかも全く異なる路面とコンディションで走ることができて良かったです。感覚をすぐに取り戻すことは簡単ではありませんでしたが、着実かつクレバーなアプローチで戦うことができたと思います。昨年のラリー・クロアチアと比べると、スタート時のペースは悪くなく、土曜日を通して常に向上していました。そして、SS6でもパンクをするまでスプリットタイムは良好でした。日曜日のようなコンディションは初めてで容易ではありませんでしたが、特にタイヤに関して貴重な知見を得ることができました。危ない場面も何度かありましたが、完走し全走行距離を消化できたのは良かったです。ラリージャパンに向けて良い準備ができたので、日本で良いパフォーマンスを発揮できることを期待しています」

 
 今季からルノー・クリオRally3で参戦を続けてきた3期生の後藤と松下にとって、非常にトリッキーな路面コンディションのターマックラリーに出場するのは今回が初となり、ラリー・イスラス・カナリアスとは大きく異なる道で多くの課題と向き合うことになった。

 松下とコドライバーのペッカ・ケランダーは、SS1でERC3部門3番手のタイムを記録し好スタートを切ったが、続くSS2のグラベルが多く散乱したコーナーでコースアウト。サスペンションにダメージを負い、デイリタイアとなった。しかし、松下は翌日の日曜日に再出走し、クラス4番手タイムを2回記録してERC3部門9位で完走することとなった。

 一方、後藤とコドライバーのユッシ・リンドベリはSS1でERC3部門の5番手タイムを記録、さらにSS2と3で4番手タイム、SS4と5で3番手タイムを、一日の最後のSS6ではベストタイムを記録して3位につけることになった。しかし、日曜日最初のSS7でコーナーを深くインカットした際、サスペンションを破損。ラリーからのリタイアを余儀なくされてしまった。

後藤正太郎:「このラリーは全くの初体験だったので、可能な限り多くの経験を積むことが目標でした。初日の土曜日は計画通り順調に進みました。序盤は安定したペースではあるものの、トップとの差は大きかったですが、終盤にかけてペースを上げることができました。そして、他の多くの選手が問題に見舞われる中、自分はトラブルと無縁でした。それは非常に良かったのですが、日曜日は雨の影響で完全に別のラリーになりました。前日と同じプランで走ろうと試みたのですが、あるコーナーでインをカットし過ぎて側溝から抜け出すことができなくなり、クルマにダメージを負ってしまいました。少し不運でしたがこれも学びの一部です。全体的に、今年は本当に楽しい一年でした。何度かミスをしましたが良い時もあり、初年度よりもさらに多くのことを学ぶことができました」

松下拓未:「これまで経験したことがないようなコンディションでの、新たな体験でした。初日はSS1で良いスタートを切りましたが、残念ながらSS2でリタイアとなってしまいました。そのコーナーはペースノートに記していなかった大量のグラベルに覆われていて、グラベルが出ていた他の場所よりも砂が多く滑りやすかったので、速度を落とすためにもう少し調整すべきでした。2日目は本当に過酷でトリッキーなコンディションでしたが、それでも楽しむことができました。多くのことを学び、経験を得られたので満足しています。総合的に見て、今年は満足のいく年だったと思います。四輪駆動車での初挑戦だったにも関わらず、いくつかのラリーではクラス上位の選手たちと互角に戦うことができたので、非常に良い一年でしたし、多くの学びを得ることができました」

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは次のようにラリーをふりかえっている。

「山本にとって今回のラリーの主な目的は、WRCでは久々の出場となるターマックイベント、ラリー・ジャパンに向けて準備を行うことだった。そのため、このラリーのためにタイヤ選択を最適化するのではなく、日本で履くことができるタイヤを使うことに重点を置いた。山本にとって予選セッションは難しいものとなり、その結果競技初日である土曜日のスタート順位は最適ではなかった。それもあって午前はリズムを探りながらの走行になりましたが、午後は明らかに良い走りを見せていた。日曜日は非常に厳しいコンディションだったが、彼はそれにうまく対応しつつ、とても良い走りを続けた。あらゆるコンディションとタイヤのオプションを経験することができたので、日本戦に向けて良い準備ができたと思うし、彼が日本で良い結果を出せることを願っている」

「後藤と松下にとっては、これまで経験してきた中で最も難しいコンディションのターマックイベントとなり、目から鱗が落ちるような経験だったと思う。残念ながら松下は土曜日の早い段階でリタイアとなったが、日曜日は雨と泥のコンディションで経験を積むことができた。一方、後藤は土曜日にドライ路面での経験を積み、日曜日は早々にリタイアを喫してしまった。両者とも今シーズンは非常に良い進歩とペースを見せてきたが、今回のようなラリーは将来に向けて、彼らと取り組むべき点をより一層明らかにする助けとなる」

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2025年シーズンは、11月6日(木)から9日(日)にかけて日本で開催される、WRC第13戦ラリー・ジャパンが最後の戦いとなる。山本が、昨年に続きGRヤリスRally2でホームイベントに挑む。