TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生の小暮ひかると山本雄紀が、スペインのカナリア諸島で開催されたラリー・イスラス・カナリアスにトヨタGRヤリスRally2で出場、WRC初開催のターマックラリーで、小暮は何度かトラブルに遭遇しながらもWRC2 15位で完走、山本は最終日にクラッシュを喫してリタイアに終わった。
ラリー・イスラス・カナリアスは、今シーズン3戦あるWRC初開催イベントのひとつであり、大西洋に浮かぶ、北西アフリカ沖のスペイン領カナリア諸島を構成する島のひとつ、グラン・カナリア島が戦いの舞台になった。ステージの路面は全てターマックで、島の広い範囲に設定された山岳ステージは、ツイスティなセクションもあれば、ハイスピードなセクションもあるなどバリエーションに富んでいる。路面は全体的にスムースでコーナーをインカットする場所も少ないため、路面コンディションは比較的安定していたが、片側が岩壁、片側は崖という区間も多く、ドライバーにとってはチャレンジングな一戦になった。
小暮と山本がこのラリーに出場するのは今回が初となり、ターマックラリーでの経験が豊富なWRC2のライバルたちとの戦いは、彼らにとって大きな挑戦となった。Rally2車両のエントリーは非常に多く、過去に何度もこのラリーに出ているドライバーや、有力な選手も多く出場。オープニングから非常にハイレベルな戦いが続く中で、経験が不足しているにもかかわらず、山本と小暮は初日の金曜日のデイ1から安定したペースを確立し、何度かクラストップ10内のタイムを記録。それぞれクラス9位と11位で初日を終えることになった。
土曜日のデイ2で山本はペースをさらに向上させ、山岳ステージのSS12では4番手タイムを記録し、8位でこの日を走り切り、最終日も好ペースを維持していたが、最終ステージの1つ前でコースを外れてバリアに衝突し、ゴール目前でラリーを終えることになった。
一方、小暮は土曜日、一時は10位につけていたが、この日の最後のステージの直前にメカニカルトラブルが発生したためマシンストップ。しかし、彼は最終日のデイ3でラリーに復帰し、15位で完走している。
小暮ひかる:「レーシングサーキットのような、クリーンで流れるようなコーナーが続く、このラリーのステージを走れることに興奮していましたし、金曜日の朝から良いフィーリングを得られていました。ただし、自分のスピードにはあまり満足できなかったので、より自信を深めるためにドライビングスタイルを変更し、午後のステージでは改善が見られました。しかし、土曜日は自分のドライビングが原因のアンダーステアに苦戦し、午後にはいくつか技術的な問題が発生したので、最終的にはクルマを止めなくてはなりませんでした。日曜日の朝にもトラブルが起こりましたが、気持ちを切り替え、今後のためにステージから学びを得ることに集中しました」
山本雄紀:「非常にポジティブな週末でした。このラリーを楽しみにしていましたし、実際にステージの走行を楽しむこともできました。スタートから上手く対応できたと思いますし、それほど激しくプッシュしていなかったにも関わらず、ラリー中にタイムが良くなっていったのは嬉しかったです。日曜日の最終ステージの1つ前のステージで、コドライバーとの間でペースノートに関する誤解があり、自分が走っている位置を見失ってしまい、ターンインが遅れバリアにぶつかってしまいました。良い結果に近づいていたので残念でしたが、自信は全く失っていませんし、この週末の成果には誇りを持っています。今回は本当に多くのことを学ぶことができました」
チーフインストラクターのミッコ・ヒルボネンは次のようにふり返っている。
「今回のラリーは、私たちのドライバー全員が初めて経験するものでしたし、新しいタイヤについて学ぶ機会でもあったので、興味深くエキサイティングなものでした。このようなクリーンなターマック路面でのラリーは久しぶりでしたし、全員が良いパフォーマンスを発揮していたと思います。山本は最終日に不運なミスを犯すまで、本当にポジティブで安定した走りを続けていました。彼はこのラリーで大きな進歩を遂げ、週末を通じてタイムも向上していました。小暮もまた良いスタートを切り、序盤は山本と順位を争っていました。ただし、ブレーキングのテクニックにやや苦労していたので、今後、継続して改善に取り組む必要があります」
2期生の小暮と山本の次戦は、5月15日から18日にかけて開催される、WRC第5戦ラリー・デ・ポルトガルとなる。WRCのクラシックイベントであるこのラリーの路面はグラベル。ポルトガル北部のポルト近郊、マトジニョスのサービスパークがラリーの中心となり、周辺の山岳地帯が戦いの舞台となる。ステージは全体的に砂利や砂に覆われるが、その下層には硬質な岩が隠れており、ドライバーたちはコンディションの変化に上手く対応しながら走行する必要がある。