WRC2018/03/29

C3 R5は、史上最も高いレベルを照準に開発

(c)Citroen

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 シトロエン・レーシングは昨年のC3 WRCに続き、2018年はR5バージョンであるC3 R5が次戦のツール・ド・コルスで実戦デビューすることになる。C3 R5の開発プロジェクトにおいて指揮をとったエンジニア、オリヴァー・マロセッリが、このマシンの開発における狙いについて解説した。

 いくつもの優れたラリーカーの開発を手がけてきたことで知られる経験豊富なエンジニア、マロセッリの元、20人ほどのエンジニアたちがこのプロジェクトに取り組んだ。プロジェクトチームは、R5カテゴリーにおいてこれまでにない最も高いレベルを照準に、最良の技術的選択を確実なものとするために作業をすべてゼロから立ち上げた。

 開発作業の課題の中心となったのはレギュレーションに関連することで、ホモロゲーションについてはWRCよりはるかに制約が厳しく、マニュファクチャラーは最初の2年間で5つのジョーカーによるアップグレードしか認められておらず(安全性あるいは信頼性のために認められているのはそのうちの2つのみ)そして、次の2年間でもう5つまでに限られている。そのため、初めの段階で正しい方向性をつかんでいくことが重要となってくる。言い換えるなら、最初から信頼性の高い速いマシンを作り上げるということだ。

 C3 R5の開発は、エンジニアリング・チームによるデザインの作業を経て、初めてのロードテストが行なわれたのが2017年9月のことであり、それ以来、さまざまなドライバーにより、あらゆるコンディションの中でのクルマのテストに取り組みはじめた。その後6000kmにも及ぶテスト走行を繰り返し、シトロエン・レーシングはようやくこの野望のマシンをデビューさせることになる。

 C3 R5のエンジンは、シトロエンの社内の技術チームによって開発されたもので、彼らにとって極めて大きな挑戦となった。

「我々は自分たちに非常に野心的な目標を設定してきた」と、プロジェクト・リーダーのマロセッリは説明する。

「こうした目標を我々は、3つの主要な分野において取り組みを続けたことで達成してきた。まず第一は、エンジン内部の部品すべてにおける、信頼性と熱に対するマネージメントが非常に洗練されたものであるということだ。また我々は、インテイクとエキゾーストのダクト内の流れを可能な限り高めるために、シリンダー・ヘッドに特に注目した。そして開発が進んだ最後の主要分野は、クルマのエレクトロニクスで、我々の従来のものからよりECUが進歩したものとなっている」

「一方で、ここで意図したのはよりいっそう機能的なアンチラグ・システムであり、それによって加速時にアクセルのレスポンスをはるかに良くしていくことだった。だがその狙いはまた、出力に大きく影響を及ぼしてしまうポップオフ・バルブを開けることをしないで、ブースト圧をコンスタントに制限最大値に近づけることにあった。これはすべて、エンジンがクルマにとっての大きな武器の一つとなっていることを意味している。ドライバーたちは皆、このクルマのトルクがすごいということで意見は一致しているが、我々はさらにこのクルマがパワーという点においてもいいところにいるということ、ライバルたちよりも高い評価にあることを知っている」

 C3 R5には、有名な兄弟マシンであるC3 WRC同様、サデフのギヤボックスが装着されている。しかしながら、類似する点はそこだけにとどまっており、C3 R5に使用されているモデルは、このカテゴリーにおいての特定の要件や制約に合わせて独自に設計されている。

「これは実際、安全性の問題だ」とマロセッリはコメントしている。「内部の部品についてはいくらか馴染みのあるものもあり、すでに試したことのあるものもあるが、我々はそれでもなお、自分たちの独自のアーキテクチャーをデザインすることを選んだ。我々のパッケージングは、ギヤボックスのアウトレットの幅と高さという点についても異なっている。これは伝達角度に直接影響するためであり、それゆえに最大限のトラベル幅が得られる。というわけで、我々はこの点に特別に注目するようにした」

 C3 WRCの流れを汲んで開発されたC3 R5も2つの異なったサスペンション・ジオメトリーが、ターマックかグラベルによって使い分けられている。シトロエンの象徴となるこれらの2台とも、それぞれのシチュエーションにおいて、シャシーとサスペンション・システムがあらゆるサーフェイスにおいて最適化するためである。

「ハブキャリア、ストラット、サスペンションアーム、そしてトーロッドの構成は規定によって非常に限られており、これは決して簡単な仕事ではなかった」とマロセッリは説明している。

「でも我々は、運動力学上の理由でターマックでは、ストラットを後方に傾け、グラベルでは前方へ傾けて搭載することを選んだ。これはこのクルマのもう一つの長所である、なぜなら我々は選ばれたデザインについてまったく妥協をする必要がまったくなかったからだ。また我々はこれらのパーツがすべて最小重量にあったことを確認したかった。これはまた、レイガーのショックアブゾーバーを使用することにも関わってくる。適切なセッティングを決めるために必要に応じた変化に対応できる十分な柔軟性を提供してくれる製品としての素晴らしさだけではなく、アルミニウム製のストラットは重量を抑えてくれる」

■シトロエンC3 R5テクニカルスペック
エンジン:直噴式1,598ccエンジン+ターボ
リストリクター:32mm
ボア×ストローク:77×85.8mm
最大パワー:282bhp/5,000rpm
最大トルク:420Nm/4,000rpm
燃料噴射システム:SRG マニュエッティマレリ
クラッチ:セラミック製ツインプレート
トランスミッション:4WD
ギヤボックス:サデフ製5速シーケンシャル(マニュアル式)
デファレンシャル:前後とも機械式LSD
ブレーキ(前後とも):ベンチレーテッドディスク355mm(ターマック)/300mm(グラベル)、アルコン製4ポッドキャリパー
サスペンション:マクファーソンストラット式
ダンパー:レイガー製3 way調整式
タイヤ(ターマック):8J x18 ミシュラン
タイヤ(グラベル):7J x15 ミシュラン
全長/全幅:3,996mm / 1,820mm
ホイールベース:2,567mm
トレッド(前後とも):1,618 mm
燃料タンク:81リットル
最低重量:1,230kg(クルーの重量を含まず)