ERC2016/08/28

ERCチェコ、コペツキとルクヤヌクが僅差のバトル

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権第8戦チェコ・ラリー・ズリーンはシュコダ・モータースポーツのヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアR5)とロシアのアレクセイ・ルクヤヌク(フォード・フィエスタR5)による激しい戦いとなり、レグ1を終えてコペツキがわずか0.5秒をリードする展開となっている。

 金曜日のナイトステージでラリーをリードしたコペツキは、土曜日のオープニングSSでのトップタイムを皮切りに3ステージを連続して制して6.4秒のリードを築き、この母国戦での5度目の勝利にむけて完璧なスタートを切ることになった。

 ルクヤヌクとしてもなんとか引き離されないようにスリリングなハイスピードターマックで地元のコペツキにピタリとつけたいところだが、最初のステージでインカットしすぎて岩を巻き込み、さらに続くSS3ではまたもやミスを犯すという、いつものように不安な立ち上がりだ。そして、首位から13.5秒差の3位には選手権リーダーのカイエタン・カイエタノビッチ(フォード・フィエスタR5)。彼はいつものようにミスのない安定したペースで続いている。

 だが、SS4で不運なドラマに見舞われてしまったのはカイエタノビッチ。ここで優勝すればタイトル連覇の可能性もあったものの、彼はジャンクションで異音とともにエキゾーストマニホールドに問題を抱えてしまいスローダウン、ステージをゴール後にリタイアとなってしまった。

 カイエタノビッチのリタイアによって俄然勢いづいたのは選手権で2位につけるルクヤヌク。彼はコペツキにじわじわと引き離されつつあるかに見えたが、SS5セメティーンのステージでコペツキを5秒引き離す驚異的なベストタイムを奪い、1.4秒差まで迫ってみせる。

「チェコでベストのステージだよ。おそらくヨーロッパのステージのなかでも一番お気に入りのステージだね!」とご機嫌なルクヤヌク。彼は次のSS6 をスタートして2つめのコーナーでオフ、サスペンションにダメージを負ってしまい7.6秒をロス、またしてもその差は9秒へと広がってしまったものの、めげずにSS7ではふたたびコペツキを6.9秒引き離すベストタイム、2.1秒差に迫ることになった。

 ルクヤヌクの異常な速さをもっとも敏感に察知しているのは、すぐ後方で彼のラインを追い掛けているコペツキだ。彼はオープニングステージからここまでラリーをリードしているとはいえ、追い詰められつつあることに気付いている。

「僕らが遅いのはわかっている。彼が全開のコーナーでどれだけリスクを負っているのか、そのラインを見れば一目瞭然だ。僕らもプッシュしているが、そこまで無理することはできない。彼がクレイジーかどうかわからないが、とにかく速い!」とコペツキもルクヤヌクの速さに舌を巻く。

 そして直後のSS8でルクヤヌクは連続してベストタイムを奪い、1.2秒差ながらもとうとうコペツキを逆転して首位に立つことになる。

 残されたのはこの日最後のステージ、意地の走りをみせたコペツキがトップタイムをマーク、ルクヤヌクを0.5秒上回って初日を終えることになった。

「このような戦いはこれが初めてだ。リスクを負ったわけではないが、ほぼフラットアウトだった。さっきは確証がなかったが、いまははっきりわかる。ルクヤヌクはクレイジーだ!」

 いっぽうのルクヤヌクはいい走りをみせたことで、すっかりご機嫌だ。「今日の速さは彼(コペツキ)のおかげだよ。あまり夕べ眠れてなかったので、もしプッシュしなければ、僕はハンドルを抱えたまま寝てしまっていただろう! 今日の走りは満足しているよ。それにしても興味深いラリーになりそうだね」

 予選ステージでエキゾーストマニホールドを破損してパワー不足に苦しめられたブライアン・ブフィエ(シトロエンDS3 R5)は、18番手という後方からのスタートとなったため、路面にかき出されたグラベルとの戦いを強いられることになった。彼は2度のスローパンクに見舞われたものの、SS6で地元のトーマス・コストカ(シュコダ・ファビアR5)を抜いて3位につけている。しかし、首位のコペツキから1分あまりも遅れている状況だ。

 土曜日のオープニングSSでオルタネータベルトを破損するというトラブルのため9位まで出遅れたERCレギュラーメンバーのヤロミール・タラブス(シュコダ・ファビアR5)だが、ベルトを交換したあとはペースを取り戻して、終盤でブレーキに問題を抱えたヤン・チェルニー(シュコダ・ファビアR5)を最終ステージで抜いて5位でフィニッシュしている。とはいえ、二人の差はわずか1.7秒差にすぎない。

 7位にはシュコダ・アウト・ドイッチュランドのファビアン・クライム(シュコダ・ファビアR5)。パヴェル・ヴァルーセク(シュコダ・ファビアR5)はSS5で道路の真ん中にかきだされていた石をヒットしたことによるパンクのために1分30秒あまりも遅れ、8位という不本意なポジションで続いている。

 また、R5マシンでの初のターマック・ラリーに臨んだラルフス・シルマチス(シュコダ・ファビアR5)は、オープニングSSを12番手タイムでスタートしたあとじょじょにペースを上げて8位まで順位を上げる大健闘をみたものの、SS6のパンクで14位と大きく遅れてしまった。

 ERCジュニア選手権とERC3選手権ではオペル・ジュニア・チームのクリス・イングラム(オペル・アダムR2)が初日に引き続いて首位をキープ、ポーランドのウーカシュ・ピエニアチェク(オペル・アダムR2)を47.6秒引き離している。また、13.5秒差の2位で続いていたチームメイトのマリヤン・グリーベル(オペル・アダムR2)はSS5でステアリングを破損、なんとかSS6に向かうもマシンを止めることになった。

 また、ルカ・ロセッティ(トヨタGT86CS-R3)は後輪駆動にとって苦手なダーティな路面ではタイムを落とし、さらに最終ステージではインターコムの問題もあったが、初日、ピエニアチェクから4.1秒遅れでERC3の3位につけている。