WRC2020/01/31

FIA、次世代ドライバー発掘の新プログラム始動へ

(c)Hyundai

 FIAは今年の夏、次世代のワールドチャンピオンの発掘、育成のための新しいプログラム、「ラリースター」を立ち上げることを明らかにした。

 ラリースター・プログラムは、24歳(あるは25歳)未満の才能ある若いドライバーを発掘することであり、現世界王者のオイット・タナクが2010年に参加していた「ピレリ・スタードライバー」とともに、フランスから生まれた二人の世界王者であるセバスチャン・オジエとセバスチャン・ローブらのキャリアをスタートさせるのを後押ししたFFSA(フランス自動車連盟)の「ラリー・ジューヌ」という2つのプログラムをミックスしたものがベースになるという。

 ラリースター・プログラムは、さらにヨーロッパ以外からの才能にチャンスを与えることに目標を置く。ラリースターを可能な限り広い裾野から見いだすために、FIAはモーターカーナと呼んでいるパイロンをたてた簡略な選考イベントを計画するほか、デジタルゲーム界のプレイヤーからのエントリーを設ける仕組みも検討されている。

 まずは、各ASN(モータースポーツ統轄機関)が第1回戦を行い、ヨーロッパ、中東と北アフリカ、アフリカ、アジア-パシフィック、北アメリカの6大陸ファイナルの一つへ進出させるそれぞれの地域のファイナリストたちを選出することが求められる。

 それらの各ファイナルから6名のドライバーに加えて女性ドライバー1人が選ばれ、彼らはヨーロッパで6〜8戦のリージョナルや国内ラリーに参戦しながら1年間のテストとコーチングを受ける期間が与えられる。

 そしてそのグループより選出された3人のベストドライバーたちはさらにFIAジュニアWRC選手権での2年間のプログラムに進み、その中の1人のドライバーがタイトルを獲得した場合は彼らには翌年の(Rally2マシンによる)WRC3への出場権が与えられる。

 この構想のための初期資金はFIAイノベーション基金から賄われるが、FIAはラリースターを継続的なものとするためにさらなるパートナーシップや投資を求めていくと説明しており、来シーズンよりWRCにタイヤの独占供給を行うピレリも、以前のピレリ・スタードライバー・プログラムの今日版といえる今回の新たな構想に関わることになると見られている。

 FIAラリー・ディレクターのイヴ・マトンは「我々はラリー・ジューヌとピレリ・スタードライバーの双方とともにモータースポーツの世界で新しいものが何なのかを見てきた」と語っている。

「我々の元にはこれらをミックスしたものだ。これらを現世代にリンクしそれらをグローバルにつなげていく。アフリカ、ヨーロッパあるいはアジアに行くというのであれば、セレクション(の過程)はそれぞれ違ったものになるはずで、我々としてこうする、もっと分かりやすいものにしていく」

「これはエキサイティングだ、FIAとしては初めて正式なグローバルな育成プログラムになる。我々はこれを6月に各ASNに紹介し、可能な限り早くファーストインテイクに向けて取組んでいきたい」

 FIAのラリースターのプロジェクトリーダー、ジェローム・ロッセルはラリー・ジューヌの初期のプログラムに関わっている。

「ラリー・ジューヌの成功の鍵の一つとなったのは、可能な限り大きなドライバーのサンプルをとったことだ」とロッセルは語っている。

「最も多かった年には10,000人の参加者がいた。ドライバーたちはフランス中から集まり、彼らは15ユーロという少ない費用で最初のイベントにエントリーしている」

 また、今回のラリースターの大きな特徴となっているのは、デジタルゲーム界からのエントリーに門戸を広げ、エントリーの壁をできるだけ低く設定したことだ。今季のジュニアWRCに出場するジョン・アームストロングはeスポーツWRCのチャンピオンであり、ラリースターは将来のトップドライバーになりうる才能をゲームプレイヤーの中からも見いだそうという初の試みでもある。FIAは、コードマスターズの「DiRT」やBig Benインタラクティブの「WRC8」との連携を行うことを検討している。