JAPAN2017/11/07

TGRの大倉、全日本最終戦でクラス2位表彰台を獲得

(c)Toyota

(c)Toyota

 11月3日〜5日、2017年シーズンの全日本ラリー選手権第9戦新城ラリー2017が愛知県新城市周辺で行なわれ、トヨタGAZOOレーシングの大倉 聡/豊田耕司(TGR Vitz CVT)がクラス2位表彰台を獲得した。

 モータースポーツの厳しい環境の下で「人を鍛え、クルマを鍛える」ことを目的として、2017年はJN3クラスにTGR Vitz CVTで参戦してきたトヨタGAZOOレーシング。チームは今シーズンの集大成となる最終戦に向けて、CVTの制御を最適化し、舗装路面での戦闘力アップを図り、さらにエンジンやトランスミッションなどを路面干渉から保護するために装着しているガード類を小型化、4〜5kgにおよぶ軽量化を施して臨むことになった。

 新城ラリーは、チームの地元である愛知県で開催される、言わば“ホームイベント”だが、ドライバーの大倉にとっては初参戦のラリーとなる。「昨年までオフィシャルとして参加していたので勝手知ったるラリーですが、スペシャルステージを走るのは初めてです。応援してくださる方も多いラリーですし、期待をパワーに変えて頑張ります」と、大倉はスタート前に意気込みを語った。

 慎重なペースでラリーをスタートした大倉は、曲がりくねったコースが特徴のSS5でSSベストタイムを記録するなど力走し、競技初日をJN5クラス2番手でフィニッシュ。ところが競技2日目のSS10、スタートから約1km地点で右リヤホイールを縁石に当ててしまい、TGR Vitz CVTはリヤサスペンションにダメージを負ってしまう。大倉は最小限のタイムロスでこのSSを走り切り、サービスへと帰還。チームはリヤのサスペンションAssyを交換する作業を時間内でこなし、車両を無事に送り出してみせた。

 大倉は残されたSSも順位を落とすことなく、第8戦ラリーハイランドマスターズに続くJN3クラス2位を獲得した。またこの結果、大倉/豊田はそれぞれ2017年全日本ラリー選手権JN3クラスの年間ランキング(ドライバー/ナビゲーター)2位を確定。CVT車両のもつポテンシャルを競技の場で実証した。

■大倉 聡(ドライバー)
「車両を縁石にヒットさせてしまい、メカニックに負担をかけてしまいましたが、完璧な修復作業で2位を守ることができてホッとしています。初めての新城ラリーは、やはり手ごわかったですね。攻めがいのある面白いコースでしたが、なかなか思うようにいきませんでした。ペースノートの精度も含め、あらためて自分の足りない点に気付かされました。シーズンの集大成として結果を残せて良かったです」

■豊岡悟志(チーム監督)
「最終日にサスペンションを交換するなど突発的な作業はありましたが、2位を獲得することができました。また、今回は本当にたくさんの応援も頂きました。チームのメカニックやスタッフにとっては、緊張しつつも大きな励みとなったはずです。今シーズンはCVT車両で挑みましたが、実戦の場でしか得られない様々なデータを得ることができました。チーム力という面では、全員が能動的に動けるようになったと感じていますが、それぞれのスタッフは自分で新たな課題を見つけ更なる成長を目指そうとしています。来シーズンに向けては、色々なプランを考えていますし、常に進歩を求め続けていきたいと思います」

■宮本昌司(チーフメカニック)
「縁石へのヒットはありましたが、ドライバーが限界まで攻めてくれているのは、車両やチームへの信頼があってこそだと思っています。観客のみなさんが大勢いるなかでの修理作業は緊張感もありましたし、とてもいい勉強になりました。今回、初参加のスタッフが加わっていたのですが、彼らもラリー現場の空気を感じられたはずです。チームに関しては、今シーズンを通してそれぞれの専門分野だけでなく、クルマすべてに関する経験や知識を得ることができました。私自身も、車両開発に関して手応えを感じています。しかし同時に、『もっとこれも取り入れたかった』という思いが残っていることも事実ですね」

■児島 星(CVT担当エンジニア)
「シーズンの最後となりましたが、耐久性があり効率のよいCVTができました。ラリーは想定外のことが起こりますが、そのなかで様々な経験やデータを得たことで、走行状態がCVTにどのような影響を与えるのかが分かってきました。このような環境でないと、分からないことがたくさんあります。例えば、アクセルとブレーキを同時に踏みながらコーナーを走行するなど、ラリーでは当たり前でも我々が想定していない状況もありました。実際に市場に投入する製品にもつながる貴重なデータをたくさん得ることができたと思います」