WRC2018/07/01

VWのパイクスピーク成功が、WRCのEV化を加速?

(c)VW

 フォルクスワーゲン・モータースポーツがみせた今年のパイクスピーク・ヒルクライムにおける成功は、思ってもみなかったほど速い時期に世界ラリー選手権がEVマシンへと転換する可能性を示した。

 今年のパイクスピーク・ヒルクライムで、ロマン・デュマはVWの電気自動車であるI.D. Rパイクスピークを駆り、新記録を樹立して優勝した。これまでは2013年にセバスチャン・ローブが駆った3.2リッター・ツインターボ・エンジンを搭載したプジョー208T16パイクスピークの記録が最速だったが、VWはその記録を19.99kmのコースで16秒も縮め、7分57.148秒の新記録を打ち立てた。

 I.D. Rパイクスピークは2基の電気モーターを搭載し、最高出力680馬力、最大トルクは649Nmを発揮、0-100km/h加速はわずか2.25秒というF1をしのぐ速さをみせている。

 世界ラリークロス選手権が2020年に完全EVマシンの選手権に移行するなか、さらに長距離を走るWRCのEV化は困難とされてきたが、フォルクスワーゲン・モータースポーツ・チームディレクターのスヴェン・スミーツは、今回のパイクスピークでの成功によって、EVラリーカーの可能性をWRCに示したと信じている。

「我々は電気自動車という新しいテクノロジーが信じられない可能性を秘めていることを証明した。しかし、我々が示したのは、何が可能かを示しただけで、まだほんの始まりにすぎない」とスミーツは語った。

「この分野は今後5年間でさらにどんどん進歩するだろう。バッテリーマニュファクチャラーによって、スピードだけでなく、長距離を走れるようになるだろう。私は数年以内に、電気自動車で40〜50kmのステージを競うことができるようになると確信している」

 フォルクスワーゲン・モータースポーツのテクニカルディレクターを務めるフランソワ‐クサビエ・ドゥメゾンは、今年の初めにI.D. Rのバッテリーの仕様を変更したと説明、EV技術の進化で達成可能な進歩率の証拠だと語った。

「プロジェクトを開始したとき、我々はサプライヤーから供給されたプロトタイプのバッテリーを持っていた」とドゥメゾンは語った。

「1月にこれを手に入れたが、もう一つ別にバッテリー開発プログラムを並行して実行し、最終的に、我々はエネルギー密度が向上された新しいバッテリーにした。それは、軽量化されているにもかかわらず同じエネルギーが得られた」

 VWはバッテリーとともに充電器についても革新的な技術を投入しており、将来は充電時間についてもかなりの短縮が可能になるはずだとしている。