WRC2021/12/31

【TOP10-第2位】エルフィン・エヴァンス

「次世代王者にふさわしい実力。」

■エルフィン・エヴァンス

Elfyn Evans
Toyota GAZOO Racing WRT

 エルフィン・エヴァンスは、2年連続でドライバーズ選手権の2位に終わったが、最後まで史上最強のワールドチャンピオンを追い詰めたという意味で彼自身が次世代のワールドチャンピオンにふさわしい実力をもつことを証明することになった

 2021年のドライバーズ選手権のタイトル争いは、セバスチャン・オジエがリード、あとわずかなところで前年のタイトルを逃したエヴァンスが追い掛ける展開で最初からスタートすることになった。

 同じチームでまったく同じマシンという条件も同じだったとはいえ、二人の実力がきわめて拮抗していることは、初開催となったクロアチアでの真っ向勝負ではっきりすることになった。

 その最終日、エヴァンスは2回のベストタイムを記録してオジエを抜いて首位に立ったあとそのまま逃げ切るかも見えたが、最終ステージの最終コーナーでの小さなミスのためわずか0.6秒の差で優勝を逃すことになった。オジエが得意なターマックでこれほどエヴァンスに苦しめられたことはこれまでなかっただろう。あらためてエヴァンスのたくましい成長を感じさせる一戦となった。

 エヴァンスはシーズンをふり返って、ケニアのミスとアクロポリスのギヤトラブルが痛手になったことを認めている。ケニアでは、オジエからわずか11ポイント差のビハインドで2位につけていたが、愚かなミスによってリタイアとなり、その差はさらに34ポイント差にまで膨らんでいる。あってはならない問題だったが、後悔すべきところがあるとしたら、それはそのあとのイベントで彼の勢いが弱まったことだろう。

 エヴァンスはエストニアではオジエの後方5位でフィニッシュ、イープルでは3カ月前のポルトガルで優勝して以来、オジエを抑えて4位でゴールしたが、パワーステージの遅れからポイントの挽回はわずか1ポイント、ポイントを大きく縮めるチャンスがあったアクロポリスではギヤボックス・トラブルで6位に終わり、オジエとの差は44ポイント差へと広がることになってしまった。

 これまで「ポイント差を縮めるためにも勝利がほしい」と語りながらも、うまくバランスのとれたけっしてミスをしない走りから勝利にむけてさらに一歩踏み出せないラリーが続いたようにも見えたが、エヴァンスは突如、フィンランドのスリリングな高速ステージで覚醒したかのようなスピードをみせた。

 エヴァンスはここでラリーの主導権を握っていたヒュンダイの2台を大胆なペースをみせて抜き去り、今季2勝目を飾ることになり、さらにターマック戦のスペインでも惜しくも優勝を逃すも2位でフィニッシュ、ギリシャで44ポイントまで拡大していた選手権のビハインドはオジエのスランプもあって17ポイントへと激減することになった。

 エヴァンスは昨年、選手権を14ポイントリードして最終戦モンツァを迎えていたが、雪が降り積もったベルガマスク・アルプスの麓の山岳ステージでクラッシュ、タイトルを目前で失うことになったが、もうその悪夢に悩まされることはないときっぱりと語ってステージへと向かって行った。

 接戦でもけっして弱くなく、ペースが乱れることはなく、うまくバランスがとれた速さには定評があった。それでいて、オイット・タナクのリタイアがなければポルトガルの勝利はなかったように、エヴァンスはどちらかといえば守りのドライバーだったようにも思う。

 しかし、エヴァンスの2021年の終盤戦は彼の新しい側面を見たように思う。最終戦モンツァでも強靱なパフォーマンスをもって、オジエを最後まで追い詰めた。いつ限界を超えてもおかしくない激しい攻防のすえに、オジエに勝利を許すことになったが、ワールドチャンピオンに輝くためにはあれほどまでに勝利に対してハングリーにならなければならないことを彼は完全な敗北のなかで知っただろう。

「2年前の自分に聞いたら、2年連続でタイトル争いをするなんて夢のまた夢だと言っていただろう。そういう意味では、僕たちはハッピーだが、いまその瞬間にいると、もっと上を願ってる。ちょっと複雑な気持ちだが、僕らは将来に向けてよりハングリーになれた」

生年月日:1988年12月28日(33歳)
選手権ランキング:2位
獲得ポイント:207点
ベストリザルト:1位
優勝回数:2回
2位の回数:0回
3位の回数:5回
表彰台回数:7回
出場回数:12回
ベストタイム回数:37回
リードしたステージの数:31SS
リタイア数:1回
リスタートの回数:1回
パワーステージ勝利数:1回
パワーステージ獲得ポイント:26点