WRC2018/12/30

【TOP10-第4位】ヤリ-マティ・ラトバラ

(c)Toyota

 連続する不運とミスにもう勝てないことも覚悟したシーズンだった。しかし、ヤリ-マティ・ラトバラは母国フィンランドのポディウムで不振のループから脱し、ふたたび勝利を争うメンバーとして最前線へ帰ってきた。

 ラトバラは開幕戦モンテカルロでは3位のポディウムを獲得、悲願のワールドチャンピオンに向けて好スタートを切ったかに見えたが、雪に阻まれて不利な走行順によっていきなり金曜日だけで1分以上も遅れることになった2月のスウェーデン以来、コルシカのクラッシュやメキシコのオルタネータトラブルなど自らのミスやマシンの不運なトラブルによって苛立つイベントが続いてきた。彼の不調はそうして雪が少しずつ降り積もるように蓄積することになった。

 アルゼンチン、ポルトガルではともにシェイクダウンから復活にむけて気合いの入ったトップタイムを叩き出したながらもいずれも本番では速さをみせながらもサスペンションを壊してリタイアとなってしまった。2戦連続してサスペンションの問題が発生したため、彼はサルディニアでは「全開でドライビングすることが不安だ」と語り、レッキのときにクルマを停めてステージや路肩に転がる石を取り除いていたと明かすなど、彼はいっそうナーバスになっていたように思う。しかし、いっそう慎重なアプローチを期していたにもかかわらず、メキシコに続いてまたもオルタネータトラブルでマシンを止めることになった。

 タイトルを争うどころか前半戦を終えてドライバーズ選手権では9位に留まり、チームメイトたちに比べて不運も多いようにも見えるが、新たにチームに加わったオイット・タナクがすんなりとヤリスに適応し、さらにチーム最速のパフォーマンスみせていることが、ラトバラにとって過度のプレッシャーとなり、自らにどちらがチームのエースなのか、その答えを出すためにさらに過激に攻めたことが負の連鎖を招いていたのだろうか。しかし、なにかが吹っ切れたかのように彼の長いトンネルは終わることになる。

 5戦連続リタイアで苦境に立たされていたラトバラが失っていた安定性を取り戻したのは母国フィンランドだった。フィンランドに初勝利したタナクとともに彼は3位のポディウムに立ち、ドイツでは2位争いが期待されながら最終日の朝に油圧式のセンターデフとギヤボックスの問題からリタイアに終わったとはいえ、そこから二度と不調のループが続くことはなかった。

 タナクとの優勝争いとなったトルコで、タイトルのかかったタナクを優先させ、自ら闘いから身を引いて2位に甘んじ、ウェールズ・ラリーGBで優勝トロフィーを手にすることはできなかったが、彼はたしかに失いかけていた勝利への情熱がたしかに戻ってきたと感じたようだ。

 トップカテゴリーに進出した2008年以降、初めて勝利を飾ることなく終えるシーズンになるかもしれないと思われたが、ラトバラは最終戦のオーストラリアで素晴らしい勝利を飾ってシーズンを締めくくった。キャリア18回目となった勝利は、2019年に彼がふたたび旋風を巻き起こす可能性を十分に示すものだ。

■ヤリ-マティ・ラトバラ
生年月日:1985年4月3日(33歳)
選手権ランキング:4位
獲得ポイント:128点
ベストリザルト:1位
優勝回数:1回
2位の回数:2回
3位の回数:2回
表彰台回数:5回
出場回数:13回
ベストタイム回数:24回
リードしたステージの数:12SS
リタイア数:3回
ラリー2の回数:1回
パワーステージ勝利数:1回
パワーステージ獲得ポイント:17点