WRC2021/12/27

【TOP10-第9位】アドリアン・フールモー

(c)M-Sport

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「翼を授けられた次世代フレンチ」

Adrien Fourmaux
M Sport Ford World Rally Team

 アドリアン・フールモーのWRカー挑戦1年目のシーズンは衝撃のニュースとともに始まることになった。WRカーデビュー戦となったクロアチアでは5位でフィニッシュ、さらにWRカー3戦目となったサファリ・ラリーではキャリア最高位の4位でフィニッシュするとともに、キャリア初のベストタイムを獲得することになった。

 残念ながらラリー後にコースのショートカットが問題となり、彼は10秒のペナルティを科されることになり、チームメイトのガス・グリーンスミスが4位の栄誉に与ることになったが、Mスポーツの首脳陣たちは与えられる試練に対して期待以上の輝きをもって応える新人に瞬く間に魅了されることになり、ベテランのテーム・スニネンのプログラムを大幅に削って、フールモーにさらに多くのチャンスを与えることになった。

 フールモーはフランス自動車連盟(FFSA)とともにレッドブルからの大きな資金的なサポートを受けているが、Mスポーツのマネージングディレクターを務めるマルコム・ウィルソンは、それゆえに彼にチャンスを与えてきたのではなく、スーパースターの片鱗を感じとっているからだと強調している。

 ウィルソンは、フールモーがWRC初出場した2019年のモンテカルロで総合10位/WRC2 2位に入って以来、そのポテンシャルの高さに注目して少なからぬ投資を行ってきた。Mスポーツにとってのラリープログラムは、徹底したビジネスであり、外れる投資はしないのがウィルソンの信条だが、その一方ではではオイット・タナクやエルフィン・エヴァンスといったトップドライバーたちがMスポーツから育ったように、壮大な夢を買うときもある。

 もちろん、フールモーはいつもチームの期待どおりの成績を積み重ねたわけではない。前半戦での急成長の反動のように後半戦では小さな失敗を繰り返した。高速戦フィンランドでのペースに悩んだこともある。イープルのばかばかしいクラッシュ、不安定なセットアップに苦しんでガードレールへ接触して駆動系を壊したスペイン、タイヤギャンブルのミスによるモンツァでの横転のように、路面のコンディションの変化へのアプローチやそれに対処する方法など、まだまだいくつもの経験が不足していることはたしかだった。

 それでも高い分析力と学習力をもつフールモーは、そう遠くない将来に安定性を身につけ、将来の世界ラリーチャンピオンになることを予感させるような鋭いスピードにも磨きを掛けるだろう。レッドブル・カラーのフィエスタWRCがステージを駆け抜けるだけで、まるでセバスチャン・オジエがMスポーツに帰ってきたかのような強力な印象を残す。オジエが今季をもって世界ラリー選手権のフル参戦を止めることに失望しているフランスのラリーファンにとっては、フールモーが彼の後を継ぐようにWRCの階段を駆け上がりつつあることはどれほど素晴らしいニュースだろうか。

■アドリアン・フールモー
生年月日:1995年5月3日(26歳)
選手権ランキング:10位
獲得ポイント:42点
ベストリザルト:5位
優勝回数:0回
2位の回数:0回
3位の回数:0回
表彰台回数:0回
出場回数:8回
ベストタイム回数:1回
リードしたステージの数:0SS
リタイア数:1回
リスタートの回数:0回
パワーステージ勝利数:0回
パワーステージ獲得ポイント:0点