ERC2017/06/04

アクロポリス初日、首位グリアジンが火災リタイア

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第3戦アクロポリス・ラリーは、3日に初日を迎え、オープニングSSからラリーをリードしてきた19歳のニコライ・グリアジン(シュコダ・ファビアR5)が火災のためにゴール目前でリタイアとなり、ナッサー・アル-アッティーヤ(フォード・フィエスタR5)が初日をリードすることになった。

 ERCジュニアU28リーダーのグリアジンは、今回のアクロポリスではジュニアタイトルがかかってないものの、先週末の母国ラウンドのラリー・タルシでカッレ・ロヴァンペラとの死闘を制して優勝を飾り、ベストコンディションでこのアクロポリスに乗り込んできていた。

 グリアジンは木曜日に行われた予選ステージで、ERCチャンピオンのカイエタン・カイエタノビッチ(フォード・フィエスタR5)を驚嘆させる速さをみせてトップタイムをマーク、そのタイムが偶然ではなかったことを金曜日のオープニングSSから証明することになった。

 オープニングSSとなった24.81kmのグラヴィアのステージで、グリアジンはスリッパリーなセクションでコースオフしそうになりながらもアル-アッティーヤを11.8秒をもリードしてスタートすることになる。

 30度を超える気温のなか、ハードタイヤでさえ荒れたステージではすぐにダメージを受けることになり、グリアジンのタイヤもかなり摩耗が進んでおり、カイエタノビッチがパンクのために早くも43秒の遅れをとることになった。

 グリアジンもSS2のバンピーで滑りやすくなったコーナーでグリップを失いスピン、リバースを使ってコースに復帰するなどリーダーにゆとりはない。それでも難所に苦しんだのは彼だけではなく、2位につけるアル-アッティーヤは8度の参戦経験をもちながらも初めてのコースとわずか2戦目の慣れないマシンのためにペースを上げられず、ぼろぼろのタイヤで朝のループを凌ぎきったグリアジンが17.6秒のリードを築いてラミアのサービスへと戻ってくることになった。

 午後のループでも厳しい戦いは続くことになった。グリアジンはSS4ではポップオフバルブに問題を抱えて5.2秒を失い、さらにSS5でも激しく摩耗したタイヤで滑りやすい路面と格闘することになったが、それでもアル-アッティーヤもブレーキに問題を抱えたため、ここでも彼はわずか1.4秒のロスにとどめて11秒をリードして最終ステージへと向かうことになった。

 だが、ロードセクションでグリアジンのファビアは突然出火、コドライバーのヤロスラフ・フェドロフとともに必死の消火作業を行ったものの、瞬く間にマシンは完全に燃え落ちてしまうことになった。

「何が起きたかわからないよ・・・、ロードセクションをただふつうに走っていただけなんだ。そしたらリヤからクルマがスライドを始めたんだ」とグリアジンはマシンの残骸を前に呆然とした様子で語った。

「そのあと僕らはクルマを止めて、なんとか火を消そうとしたけど、それは不可能だった。マシンの底から火が噴き出していたので、たぶん燃料タンクだと思う。助けてくれようとした人たちに感謝したい、僕も全力で立ち向かってきたんだけどね・・・」

 終盤のドラマで初日のリーダーに浮上したのはアル-アッティーヤ。明日の長い一日のためにソフトタイヤを組み合わせて使用するなど、豊富な経験を駆使してタイヤ戦術に集中してきたが、ゴールした際の彼のタイヤはスリック同然に摩耗していた。

「ニコライは残念だった。タイヤの摩耗は僕の想像を超え、ひどくすり減って滑りやすくなり、とても厳しい一日だった。ラリーリーダーになったことは驚きでもあり、満足しているよ」とアル-アッティーヤは一日をふり返っている。

 首位から8.4秒遅れの2位には、選手権リーダーのブルーノ・マガラエス(シュコダ・ファビアR5)が続き、オープニングSSのパンクで6位と出遅れたカイエタノビッチが3つのベストタイムでマガラエスの21.1秒後方の3位まで追い上げてきた。

 ERC2は選手権リーダーのルイス・ピメンテルが今回は欠場しているものの、17ポイント差で2位につけていた二人がギリシャ・ラウンドに出場し、逆転のチャンスを狙ったものの、二人は初日にそろってリタイアする波乱となった。アレクセイ・ルクヤヌクの愛弟子であるロシア・パフォーマンス・モータースポーツのセルゲイ・レメニク(三菱ランサーエボリューションX)が燃料ポンプトラブルのためにストップ、ティボール・エルディ(三菱ランサーエボリューションX)もSS17に向かうロードセクションでサスペンションダメージのためにリタイアとなった。

 これでイタリアのゼリンド・メリガリ(三菱ランサーエボリューションIX)がラリーをリードすることになった。

 明日の最終日は3つのステージを2回ループする126.68kmの一日となるが、33.86kmというラリー最長のエラティアのステージを2回走るなど、ゴールまでタフな戦いが続くことになりそうだ。