WRC2020/02/16

エヴァンスが17.2秒リード、今季初勝利に近づく

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 2020年世界ラリー選手権第2戦ラリー・スウェーデンは2日目の日程を終えて、トヨタGAZOOレーシングWRTのエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)が2番手以下に17.2秒の差をつけてラリーをリード、ラリー・モンテカルロの最終日に失った今季初勝利に大きく近づくことになった。

 暖冬に伴うコンディションの悪化で、前日に引き続きラリー2日目となる土曜日のアイテナリーも大きく変更を余儀なくされている。当初予定されていたトースビー空港の東南エリアのSS9/12トーントルプ(19.92km)、SS10/13ハグフォース(19.80km)、そしてコリンズ・クレストを含みラリー・スウェーデンの象徴的なステージでもあるSS11/14ヴァルゴーセン(16.64km)はいずれも十分なウィンターコンディションにないことからスタートの10日前にキャンセル。また初日に行われたカールスタッド・スーパーSS(1.90km)の2回目の走行もキャンセルとなっている。そのため、土曜日は変則的な行程となり、前日の午後に予定されていたSS4ホフ-フィンスコグ(21.26km)、SS5フィンスコーゲン(20.68km)、SS6ニッケルヴァットネット(18.94km)を走行したあと、SS16トースビー・スプリント(2.80km)で締めくくる、前日と同じ4SS/63.68kmをループする。前日同様に、SS7の前にナムノでのタイヤフィッティングゾーンが追加されている。

 スタートを前にして、前夜、ステージのあるヴェルムランド地方は-1度までしか気温が下がらなかったが2.5cmほどの積雪があったとの情報があった。スターティングオーダーは、初日に電気系トラブルでリタイアとなったラトバラが土曜日にリスタートしなかったため、勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)が一番手でスタートすることになり、ルースサーフェスのWRCで初めてのコースオープナーとしての洗礼を受けることになった。

 この日のオープニングステージとなるSS6ホフ・フィンスコグを走り終えた勝田のインプレッションは「もっとアイスのあるコンディションを想定していたが、そんなに悪くはなかった。ところどころで昨日よりもちょっと滑りやすくなっていたが、問題はない」というものだ。ステージ開始時点で気温は4度近くまで上昇し、降ったはずの新雪もすでに溶け始めたばかりか、固く凍結していたはずの路面すら柔らかく緩み始めている。この難しいコンディションをスタッドタイヤで走行しているにもかかわらず、なんと勝田の平均速度は131km/hを超えている。そして彼のあとから続くドライバーたちも前日とはまったく異なった路面に驚きの声を上げることになる。

 このステージでベストタイムを奪ったのは、ラリーリーダーのエヴァンスだ。セカンドベストのタイムを刻んだオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)との差を11.7秒に広げてみせた。3番手タイムのセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)は「今回のステージの方がトリッキーさが増しているし、終盤でスタッドを何本が失っている。とはいえ、フィーリングはいいので、楽しんでいきたいと思う」と虎視眈々と上位を窺う。

 オジエに0.1秒差まで迫られたカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)は歴戦のチャンピオン相手に3位を守りたいと強気のアピールだ。「このスピードに対処できるのであれば大丈夫のはずだ」と彼は頰を紅潮させる。

 SS7フィンスコーゲンを前に、ほとんどのドライバーがスタッドタイヤ6本を選択した中、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)とテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)の二人だけが5本を選択している。フィンスコーゲンは前日を走った際にも後半セクションではグラベルが露出しており、この選択はギャンブルにも見えたが、ヌーヴィルは初日、コースオープナーとして23秒遅れの6位と出遅れており、残されたステージが少ない以上、ウェイトを落としたマシンでポジションアップの賭けに出るしかない。

 問題はこのフィンスコーゲンのあと、同じタイヤセットのままSS7ニッケルヴァットネットの2つのロングステージをこなさなければならないことだ。フィンスコーゲンでは前日まで路面に貼り付いていたアイスはかなり溶け出してルーススノーが覆っているように滑りやすくなっており、また、終盤のグラベルのセクションもさらにエリアが広がって、スタッドを次のステージまでもたせるためにどこまでペースを上げたらいいのか誰一人として正解を知るものはいない状態だ。

 ここまで3位で健闘してきたロヴァンペラは、「自分が出来る限りベストなパフォーマンスで昨日よりもずっといい走りをしていると思うが、タイムがついてこない。スタッドをある程度失っていると思うが、どこでそれを保持していけばいいのかはっきりと分からない」と7番手タイムに沈み、3番手タイムを記録したオジエにそのポジションを譲ることとなった。

 徐々にi20クーペWRCのドライブに慣れてきたと語るタナクは、オジエのタイムを0.3秒上回ってみせるが、ラリーリーダーのエヴァンスはさらに3.6秒上回る圧巻の連続ベストタイムでタナクとの差を15.3秒に広げた。

 快調なペースでラリーをリードするエヴァンスだが、SS8のニッケルヴァットネットでひやりとする瞬間があった。スタートから17.5km地点の左コーナーでワイドに膨らんであわやの場面もあったが、彼は3連続のステージウィンを奪う。「フィニッシュ間近でサンプガードが接触してクルマがアンダーステア状態になった。まだまだすごくトリッキーだ!」とSSフィニッシュで興奮気味に語る。この日のフォレストステージすべてを制して2位のタナクとの差は16.9秒に広がった。

 また、このステージではロヴァンペラが気を吐いてみせた。「簡単ではなかった。フロントタイヤの消耗が激しくてロードセクションで修正しなければならなかった。ステージの最初にフィーリングを掴む必要があったが、今度はタイヤに応じてセットアップした方が良さそうだ」としながらも渾身のセカンドベストを刻んでオジエを逆転、3位に返り咲いた。

 スペア1本のギャンブルに出たヌーヴィルはSS7ではエヴァンスからは4.3秒遅れと追撃の決め手を欠くタイムだったが、それでも5位につけるエサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)に0.8秒差まで迫ることに成功することになった。しかし、ラッピとしてもオジエが5秒前にいるだけにポジションは譲れない。SS8ではタイヤを温存するためにペースダウンを余儀なくされたヌーヴィルを突き放し、ラッピは二人の差は4.9秒へと広げてみせた。

 この日最終のSS9、トースビー・スプリントはわずか2.80kmと距離が短いこともあって大きなタイム差はつかない。それよりも小さなミスが大きなタイムロスに繋がる。それゆえに各ドライバーともにステディにステージをこなしていく。そうした中、チャージを掛けたのはヌーヴィルだ。前日の1回目の同ステージでエヴァンスが記録したベストと同タイムで一番時計を奪取。ジリジリと上位進出を窺う。セカンドベストはオジエ。平凡なタイムに終わったロヴァンペラを0.5秒抜いて再び3位浮上を果たす。エヴァンスは4番手のタイムに留まったが、タナクを0.3秒上回り、その差を17.2秒へと広げることとなった。

「僕たちにとって良い一日だったし、やれたことにも満足している。明日がどうなるかは誰にもわからないが、ここ2日間と同じリズムをつかめることを願っている」とエヴァンスは語った。彼はすでに最終日に残されたリケナス・ステージのコンディション悪化を避けるために、予定された2回の走行のうちオープニングSSの走行がキャンセルとなり、勝利まであとわずか21.19kmのみとなっていることを知っているものの、最後まで油断はしないで臨むつもりだ。「もちろん、明日は自分たちにできる最高の仕事をするつもりだ。長いステージなので、もしコンディションに合わせることができなければ、簡単に多くのタイムを失うだろう」

 2つのステージが残っていればまだしも、わずか1ステージで17.2秒を逆転することは不可能だ。開幕戦でノーポイントに終わったタナクは「明日はこれ以上プッシュするつもりはない。僕たちはフィニッシュする必要がある。それが明日の主な目標だ」と語っていた。

 トリッキーなコンディションとなったラリー・スウェーデン2日目を終えて、3位には11.6秒差でオジエが続き、わずか0.5秒後方の4位にはロヴァンペラ。「明日は難しいだろう。セブはWRカーで何度もここをドライブしているが、僕は初めてだ。ベストを尽くし、どうなるか見てみるよ」とロヴァンペラは言葉は控え目だが、王者を相手に初のポディウムへのチャレンジに心を躍らせているようだった。

 調子を上げてきたラッピはこのSS9でサードベストを刻んでロヴァンペラの5.4秒遅れの5位。さらに4.5秒差の6位にヌーヴィルがつける。7位に「クリーンな走りを心がけている」きたというブリーン、8位にスニネンが続いている。

 また、コースオープナーという試練の1日となった勝田は、「コーナーごとにグリップの変化が激しくてドライブするのが非常に困難だった。しかし今僕たちはここにいる、だから大丈夫だ」と9位で健闘しており、最後のトースビー・スプリントではキャリアベストとなる5番手タイムでしめくくってみせた。