2025年世界ラリー選手権(WRC)第12戦セントラル・ヨーロッパ・ラリーは金曜日を終えて、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)とカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)が驚異的なハイペースのバトルを続けており、オジエがリードもロヴァンペラがわずか0.6秒差で食い下がっている。また、3位にはエルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が続き、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームが1−2−3態勢を築いているものの、エヴァンスはトップ2台からは30秒近くも突き放されている。
金曜日はWRC史上初めてヨーロッパ3カ国を一日で横断する歴史的なルートとなる。最初のステージのグラニット・ウント・ヴァルト(10.86km)はドイツのステージで、第2ステージのベーマーヴァルト(15.27km)はオーストリアのステージ、第3ステージのコル・デ・ヤン(23.37km)はチェコの新しいステージとなる。朝の3ステージのあと、南ボヘミアの州都であるユネスコ世界遺産のチェスキー・クルムロフにも近い、カプリツェでのリグループとタイヤ交換を経て、午後のループは、朝と同じ3つのステージを逆順に、コル・デ・ヤン、ベーマーヴァルト、グラニット・ウント・ヴァルトの順で走ったあとパッサウに戻る6SS/99.00kmの一日となる。
木曜日の2ステージを終えてオジエがリード、1.6秒差の2位でロヴァンペラが続き、8度目のマニュファクチャラー・タイトルに王手をかけているトヨタが1−2態勢を築く展開となっていたが、金曜日はヒョンデ勢の反撃とともに始まることになった。
曇り空となったSS3グラニット・ウント・ヴァルトでベストタイムを奪ったのはティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)、さらにオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)が0.2秒差の2番手、アドリアン・フールモー(ヒョンデi20 N Rally1)が0.4秒差の3番手タイムで続き、ここではヒョンデが1−2−3を占めることになった。
「一日の良いスタートになった。いくつかの場所ではちょっと驚いたけどね。みんなアンチカットにすぐ近くを攻めているから、少し泥が掻き出されている。走り自体は良かったけど、ちょっとアンダーステアと格闘していた」とヌーヴィルはふりかえった。
ここでヒョンデ勢がタイムを伸ばしたのは、トヨタ勢の最高速度が190km/hに満たないなかでヒョンデ勢は194km/hに達したことも影響しているだろう。さらに、コースは無数のボラードによってインカットが規制されており、かき出されるダートはわずかにあったものの、ヌーヴィルが言うほどではなく、路面はほぼクリーンだったことも後続にはプラスに働いた。
ラリーをリードし続けるオジエは、今回もチームメイトを上回るタイムをマークした。エヴァンスはオジエから0.5秒遅れ、ロヴァンペラは0.6秒遅れてしまう。オジエはロヴァンペラに2.7秒差をつけ、ラリーをリードしている。
「クリーンな走りだった。路面に少しダストが積もっていたので、このステージは(後方のドライバーは)もっと速く走れるかもしれない」とオジエは評価し、その通りになった。
それでもロヴァンペラはオジエから1.1秒も遅れてしまい、もう少しペースを上げなければならないと決意しただろう。「そこまで悪くもなかったが、明らかにちょっと遅すぎた」とつぶやいた。
フールモーは3位を維持。首位のオジエとは3.6秒差、ロヴァンペラとは0.9秒差に迫ってきた。ヌーヴィルはタナクとともにトップから5.6秒遅れで4位を分け合っている。
サミ・パヤリ(トヨタGRヤリスRally1)は、今回はトップのペースについていくことができずに4位から6位に後退、7位には勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)、エヴァンスは木曜日にオープニングステージでシケインのストローベイルに接触して動かしたとして5秒のペナルティが加算されており、トップから11.5秒遅れとなってしまっている。
SS4ベーマーヴァルトでは素晴らしい速さをみせたのはロヴァンペラだ。15kmのこのステージでオジエに2.1秒差をつけて駆け抜け、トップまでわずか0.6秒差に迫ることになった。
「かなりうまくいった。ドライビングは少しスムーズだったが、ペースを維持することができた。最初とそれほど大きな違いはないけど、もう少しスピードを載せて、少し勇気を出して攻めてみたんだ」とロヴァンペラは語った。
このステージも前のステージと同様にコースにはあまり汚れはないものの、一番手で走ったオジエは、最終コーナーではリヤタイヤを草むらに落としてひやりとする瞬間に見舞われるなど、昨日まで生活道路だったステージで路面をうっすらと覆っているダストに手を焼いたようだ。「かなり埃っぽい。後ろのマシンにとっては間違いなく路面コンディションが良くなるだろう。完璧ではなかった。埃のせいでグリップが大きく変わるんだ」とオジエは説明した。
オジエとロヴァンペラの後ろでは、フールモーがトップから3.2秒差の3位につけており、タナクは4.9秒差の4位となっている。タナクはチームメイトとは異なり、2024年仕様のマシンに戻してセントラル・ヨーロッパに臨んでいるが、これまでのところ若きチームメイトの速さにも及ばない。「驚くほどトリッキーなステージだ。頑張っているが、全くバランスが取れていない」
パヤリが2番手タイムを奪い、不安定なグリップに苦しんでいるヌーヴィルの1.1秒後方へと近づいてきた。
南ボヘミアに設けられた新しいコル・デ・ヤン(SS5/6)は、ラリー前からこの週末の最難関のステージになると多くのドライバーが語っていた。朝のループの最後のステージとして行われたSS5は幸いにも雨は降ってないものの、バンピーでナローな序盤の森のなかのセクションは全域にわたって湿っており、とくに3km地点の暗い森のなかには水たまりもある。いくつかの村と森を抜けて田園地帯へと抜ける10km地点までは路肩の濡れた泥と落ち葉が路面を覆っており、多くのトラブルが引き起こされることになった。
ここでオジエはスタートポジションを最大限に活用し、驚異的な最速タイムを叩き出してライバルたちを圧倒することになった。ロヴァンペラはただ一人、オジエに3.3秒差のタイムで食らいついたが、エヴァンスはミスもあって12.9秒遅れ、タナクも17.8秒遅れとなってしまった。
「チャレンジングなステージだった。どこも限界まで攻め続けるのは難しかった」と、オジエはフィニッシュ時に冷静に語った。「このステージでは差がつき、ミスも起こりやすいことは分かっていた。今週末、トップスタートで恩恵を受けられるのはこのステージだけだったが、同時に、あんなコンディションで攻めるのは容易ではなかった。そのなかで、カッレも素晴らしい仕事をしてみせた。僕たち2人が他のドライバーよりも良いパフォーマンスを見せていたのは明らかだと思う」
オジエとしては無理して勝利を狙う必要はなく、ロヴァンペラにとってチャンピオンシップ争いでは勝利が不可欠でありオジエを逃がすわけにはいかない状況にある。百戦錬磨の8度のワールドチャンピオンはロヴァンペラの弱みを理解しているかのように付け加えた。
「カッレは週末を通して常にプッシュしてくるだろう。チャンピオンシップ獲得のためには、今週末に勝たなければならない立場にいることを彼は理解しているからだ。彼は間違いなく速い。彼との戦いは熾烈になるだろうが、今のところ我々は互角の戦いを繰り広げている。非常に接戦なので、どのように展開していくか見守ろう」
ステージはかき出された泥の海で滑りやすくなり、後続になるほど大きくタイムを落とすことになった。3位のタナクでさえ22.7秒遅れ、エヴァンスは24.1秒遅れの4位、勝田が26.8秒遅れの5位となり、この日の朝、首位争いが期待されたフールモーでさえ、トップの2人からは30秒近くも引き離されて6位へと沈んでしまった。
5位につけていたヌーヴィルは濡れた森のなかで姿勢を乱してバンクにヒット、ステアリングに問題を抱えた彼は、さらにジャンプの着地でワイドになってしまい草のなかに隠れていた大きな岩で右フロントのバンパーを壊すとともに右のリヤタイヤをパンクしてしまい、1分20秒あまりをロスして8位まで後退することになった。
ヌーヴィルは今季、記録的なパンクの多さを嘆いてきたが、今回は自身の責任を認めるしかなかった。「グリップもバランスも全く感じられず低速コーナーでオフしてしまった。そして、ジャンプでのパンクは言うまでもなく僕のミスだった。少し右に寄りすぎてしまった。着地してディッチの石にヒットしてしまった。空中に飛び出したら手遅れだ。避けきれないよ」とヌーヴィルはうなだれた。
また、9位につけていたグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマRally1)も右リヤをパンクしたあとヌーヴィルと同じジャンプでワイドになってしまい、右リヤサスペンションを壊してマシンを止めることになった。
3.9秒差の2位でタイヤフィッティングゾーンを迎えたロヴァンペラは、追う者がより大きなリスクを犯す必要があることを知ってはいるものの、まだ限界で攻めているわけではないと静かな口調で認めた。
「泥だらけの森の中ではもっと勇気を出せたらとは思うが、他のドライバーがセブにどれだけ遅れをとったかを考えると、あの出走順から見ても僕のタイムは良かったと言えるだろう。路面はどこもかしこもダートだったが、僕たちにとっては良い走りができたので、満足している」とロヴァンペラはふり返った。
カプリツェでのタイヤ交換を経て、午後のループはコル・デ・ヤンのリピートとなるSS6から始まる。天気予報は小雨の可能性を伝えていたものの、いまのところ雨が降り出す気配はなく、全ドライバーがレインタイヤを選ばず、朝と同様にソフトタイヤ5本を選んでステージに向かって行った。
朝のループのラリーカーの走行でコースは汚れが進むかにも見えたが、コースはドライとなったところも多く、クリーンになったところも多い。それでも、あいかわらず森の中のセクションは泥に覆われているなか、ロヴァンペラが猛攻を仕掛ける。彼は首位のオジエに1.5秒の差をつけるベストタイム、2.4秒後方に迫ることになった。
「かなり良いステージだった。2回目のループはセバスチャンのダートが少し増えたので、僕らに少し有利に働いた。スタートで泥に長く留まりすぎて少しタイムを失ったが、それ以外は概ね順調だった」とロヴァンペラは語った。
コル・デ・ヤンにおけるヒョンデ勢の苦労は続いており、タナクはロヴァンペラより9秒も遅れてしまい、トップからは30.2秒遅れとなり、後方のエヴァンスが0.4秒差に迫ってきた。「全力で行っているのは先ほどと同じだ。少なくとも少しは改善できたが、タイムを見ればわかる。まだまだ彼らにはほど遠いよ」とタナクは率直に語った。
フールモーはここでも18.7秒も遅れてしまい、2.9秒差だった5位につける勝田との差は11.5秒へと広がってしまい、キャリア初優勝という野心をもってスタートしたはずが、大きなトラブルがないにもかかわらず、トップからは46.9秒という絶望的な遅れとなってしまった。「こんなコンディションでマシンを駆るのは本当に大変だ。全く安定していない。ただマシンと格闘しているだけだ」
ヌーヴィルのトラブルも続いており、走行中にボンネットが部分的に外れてしまい、挽回の作業はさらに困難なものとなった。彼はフィニッシュ時に、最速タイムから26.6秒遅れをとった自身のトラブルを苦笑するしかない。「ボンネットが開いたのはほんの数百メートル後だった。時速200キロで森の中を走っているのはいつも怖い。さっきミスを犯したから、今そのツケを払わされているんだ」
チェコの森の試練から抜け出してクリーンなターマックのベーマーヴァルトの2回目の走行は、首位のオジエがロヴァンペラとのバトルを避けたかのようにややペースを落とし、ベストタイムを奪ったロヴァンペラが0.3秒差に迫ることになった。オジエは、ライバルのペースにも動じることなく、「クリーンな走りだった。この結果がどうなるか見てみよう。今は路面コンディションもかなり均衡しているだろうからね」と語った。
ヒョンデのフールモーがクリーンになった路面ではさきほどとはうって代わって速さを取り戻して2番手タイムを奪って追い上げを開始するなか、タナクのペースは上がらない。8番手タイムにとどまったタナクは1.5秒差でエヴァンスに抜かれて4位へと後退してしまった。「こういうことだよ。僕らは良い走りだった。フィーリングも良かった」とタナクは諦めたように語った。
エヴァンスが3位へとポジションを上げたことで、トヨタは1−2−3態勢となった。「今のところ最高のステージとはなっていないので、もっと良いフィーリングとリズムを見つけようと努めている」とエヴァンスはさらなるペースアップを誓った。
この日の最終ステージ、グラニット・ウント・ヴァルトでは、オジエがロヴァンペラをわずか0.3秒差で上回り、金曜日もトップを守り切ることになったが、その差はわずか0.6秒にすぎない。
「普段ターマックで一番手で走る時よりも大変だった。うまくいったのはSS5だけだ。他のステージはダストがあり、路面掃除が必要だった。接戦のままになりそうだ。でも今日はいい一日だったし、満足できる」とオジエは笑顔をみせた。それでもロヴァンペラとの息詰まるバトルについて聞かれると、「言った通り、この2つのステージでは路面掃除が影響している。大量ではないけれど、小さなことが勝敗を左右する状況だ」
金曜日を通して、オジエは出走順のトップを走っていたが、土曜日は状況が一転し、ラリーリーダーはRally1ドライバーの最後尾でステージを走行することになる。ロヴァンペラはこのステージのタイムは明日の走行順のことを考慮した戦略もあったと認めた。
「セブが多くのステージで優位に立っていたため、3番手からのスタートにもかかわらず、僕らは力強いパフォーマンスができた。このギャップは許容範囲だ。出走順で彼より前に出たかったからね。明日はセブより前にスタートできるのは僕らにとって良いことだ」とロヴァンペラはふりかえっている。
トヨタは金曜日を終えて1-2-3をキープ、最終ステージでトップタイムをマークしたエヴァンスは3位につけているが、チームメイトのオジエとロバンペラからは30秒近く遅れている。それでもタナクとの差を3.3秒へと広げることに成功している。
タナクは首位から32.8秒差の4位となっており、ドライバーズタイトルのライバル3人が彼の前に立ちはだかるという厳しいスタートとなっている。さらに彼の後方2.9秒差には、トヨタの勝田がプレッシャーをかけるべく迫っている。
6位の勝田の10.4秒後方にはフールモーがつけており、さらに9.9秒差でパヤリが続き、朝のループのパンクで遅れたヌーヴィルがさらに1分近く遅れた8位で続いている。
セントラル・ヨーロッパ・ラリーは、土曜日もドイツとチェコで6つのスペシャルステージが行われる。オープニングステージのSS9メイド・インFRGは、現地時間8時15分、日本時間15時15分のスタートが予定されている。