ERC2021/08/30

コペツキが50回記念チェコで歴史的な10勝目

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第4戦のバルム・チェコ・ラリー・ズリーンは29日日曜日に最終日を迎え、チェコの新鋭エリック・ツアイス(フォード・フィエスタRally2)がERC初勝利を目前にして最終ステージでクラッシュするというドラマチックな幕切れを迎え、アグロテック・シュコダ・チームのヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が50回目の開催を迎えたこのイベントで歴史的な10勝目を飾ることになった。

 22歳のツアイスは、土曜日の夜に土砂降りの雨が降る難しいコンデイションのなかで行われたピンドゥーラ・ステージで強烈な速さをみせてコペツキを逆転、2.1秒差をつけてトップで最終日を迎えていた。

 ズリーン市は晴れた朝を迎え、路面はほぼドライになったとはいえ、前日の雨によって森の中のセクションは湿っており、かき出された泥がグリップを惑わせる。最終日に残されたのは6ステージ、ベテランのコペツキが失われたタイムを取りもどすかにも見えたが、新星ツアイスはそれを許さない。オープニングSSのハレンコヴィツェをツアイスはコペツキに4.2秒差をつけるベストタイムで発進、さらに彼はそれに続く2ステージでも連続してベストタイムを奪い、朝のループを終えてコペツキに20.2秒という大差を築く。

 ツアイスは、SS12マホヴァでは賢く走らなければ行けないと自分に言い聞かせて走りながらもコペツキを13秒も引き離す、驚くべき速さをみせつけた。

「ここのステージでは初めて泥が出なかったし、素晴らしい走りができた。前のステージでは僕らは速すぎて、いくつかミスをしたので、もっと賢くなって、限界を超えないようにしようと自分に言い聞かせて走った。ミスター・コペツキは僕のことをテストしているようだった。僕らは絶対に集中力を途切れさせることなく、最後まで走らなければならない」

 ツアイスはサービスを挟んだあとのSS13でもこの日4つめとなるベストタイムを刻んだものの、続くSS14では3番手タイムとややペースを落としてフィニッシュ、「20.2秒のリードがあるので、少しでも安全なドライブを心がけている。ステージ上に大きなドラマはなかった」とコメントした。

 だが、上空を覆う黒い雲からは突然の雨が路面を濡らし始め、想像もできなかったドラマが最終ステージに待っていた。ツアイスもコペツキも、そろってレインタイヤのスペアを搭載していない。マヨーヴァの森のステージは狭くてハイスピードのセクションが連続しており、残り10km地点でツアイスがクラッシュ、マシンを横倒しにしてストップする。

 リバースでステージスタートしたコペツキは、後方での異変をステージエンドで知らされて言葉を失った。「クラッシュ? ・・・それでも、彼は優勝にふさわしいと思う。コンディションが変わりやすく、濡れているところもあれば乾いているところもあり、本当に難しいラリーだった。昨日もいい戦いができたが、最後のピンドゥーラの走行から彼は速すぎたと感じていた。でも、本当に彼は勝利にふさわしいことを見せた」

 39歳のコペツキが初めてバルム・チェコ・ラリーで優勝を飾ったのは、2004年、24歳のときのことだった。彼はシュコダ・ワークスのファビアWRCで総合優勝を飾ったが、主催者はヨーロッパ選手権で認められていないWRカーをドライブしたチェコ選手権の上位勢をリザルトから除外しながらもチェコ選手権でのポイントを与えるという矛盾した裁定を下すことになり、そのため公式結果では彼のバルム・チェコでの最初の勝利は2009年と記録され、勝利数についてもこれまで8勝とされてきた。しかし、事情を知るメディアたちは今年のさらなる勝利は彼への敬意を込めて10度目だと報じている。

 一方、最終ステージでクラッシュしたツアイスとコドライバーのジンドリシュカ・ジャコヴァには幸いにもケガはなかったが、後続のマシンは道路をふさぐツアイスのマシンに阻まれてここでストップ、ステージはこのままキャンセルとなってしまった。ステージ上空のヘリコプターはあまりにも悲惨な結末にショックで路面に倒れ込んでいるツアイスを映し出し続けることになった。

 トーク・スポーツのアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)はすでにステージをフィニッシュしており、優勝したコペツキから40.1秒差の2位となっている。「ライバルたちはみんな本当に速かった。およそ10年ぶりにバルム・ラリーに戻ってくるのは簡単ではなかったが、僕たちは選手権のためもベストを尽くすことができたと思う」

 ディフェンディングチャンピオンであり、選手権リーダーでもあったサンテロック・ジュニアチームのアレクセイ・ルクヤヌクは、水曜日に行われたテストでシトロエンC3 Rally2をクラッシュさせたあとエンジンルームの出火によってハーネスが燃えてしまったためチェコ・ラリー・ズリーンには出走できなかった。そのため、ミケルセンはここで逆転、シーズン中盤にしてERCのトップに立つことになった。

 3位でフィニッシュしたのは地元のフィリップ・マレシュ(シュコダ・ファビアRally2エボ)だ。2019年のERC1ジュニア王者の彼は初日のTCへの遅着によって14位で土曜日をスタートしたあと追い上げ、最終ステージでハンガリーのノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)を3.8秒差でかわして3位でフィニッシュ、5位にはORLENチームのミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)が続いている。

 ERCジュニアはケン・トルン(フォード・フィエスタRally3)が今季3勝目を飾り、初日にクラッシュしたオスカー・ソルベルグ(フォード・フィエスタRally3)もリスタートして最終日に完走を果たして2位でフィニッシュした。

 ERC3ジュニアは、ジャン-バティスト・フランセスキ(フォード・フィエスタRally4)が金曜日の朝にTCへの早着のため3分というペナルティを科されながらも最終日にルーマニアのノルベルト・マイオール(プジョー208 Rally4)を逆転して優勝を飾っている。