ヨーロッパ・ラリー選手権第6戦バルム・チェコ・ラリー・ズリーンは、地元のドミニク・ストジテスキー(シュコダ・ファビアRS Rally2)がERC初優勝を飾り、来季からWRCのコントロールタイヤになることが決まっているハンコック・タイヤにERC初勝利をもたらすことになった。彼はこれでチェコ選手権でも今季3勝目を飾って初のチャンピオンに向けて強力な一歩を標した。
チェコ・ラリー・ズリーンの土曜日は、通算12度目、9年連続ERCチェコ優勝を狙うヤン・コペツキー(シュコダ・ファビアRS Rally2)がパンクのために表彰台圏外へと脱落、過去、何度もコペツキーと激しいバトルを演じてきたエリック・ツァイス(シュコダ・ファビアRS Rally2)もタイヤチョイスのミスによって豪雨のなかで40秒あまりも失速、悲願の母国ERC勝利のチャンスを失うという波乱のスタートとなっていた。
ストジテスキーは、コペツキーがタイヤトラブルに見舞われたSS5でトップに立つやミスのない走りを続け、2位につけるシモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRS Rally2)に21.1秒の差をつけて最終日をスタートすることになった。
バルム・チェコの最終日の舞台は、つぎはぎだらけの荒れたターマックとかき出された石によってさらに難易度が上がる。ストジテスキーはオープニングステージのSS10セメンティンでスローパンク、さらにSS11ピンデューラでも連続してスローパンク、これで彼はスペアを失うことになったが、彼の後方につけるライバルたちも難所に苦戦してペースは上がらない。ストジテスキーは、ワグナーに21.4秒差をつけて厳しい試練となった朝のループでは首位を守り切ったが、午後のループでもけっしてラクな展開が待っていたわけではない。
ストジテスキーは、SS12セメンティンではフライングフィニッシュを超えた直後に激しくスピンを喫してひやりとさせることになったが、それでも残りの2ステージでは堅実な走りをみせてトップを守りきり、ワグナーに19.2秒差をつけて、見事、ERC初優勝を飾ることになった。
「素晴らしいよ、なんて素晴らしい」と24歳のストジテスキーは語った。「今日は最初のステージでパンクして多くのタイムを失い、ひやりとしたが問題はなかった。チーム全員、家族、パートナー、そしてファンの皆さん、僕たちをサポートしてくれている皆さんに心から感謝したい」
ツァイスは、SS13のトップタイムでアダム・ブジェジーク(シュコダ・ファビアRS Rally2)を抜いて3位へ浮上、ワグナーには4.8秒届かなかったが、印象的なスピードをみせて表彰台を達成している。
5位にはフィリップ・マレシュ(トヨタGRヤリスRally2)、6位には2022年のERCチャンピオン、エフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRS Rally2)が続いている。
ERCチャンピオンのヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)は土曜日に2度のパンクによってポイント圏外へと大きく後退、選手権のリードをマティユー・フランセスキ(シュコダ・ファビアRS Rally2)に奪われることは確実だと見られていた。
しかし、ERC初タイトルを掛けて6位で最終日を迎えたフランセスキは、いきなり悲劇が待っていた。彼は荒れたオープニングSSで2本をパンク、さらに続くSS11でも1本をパンク、タイヤを使い果たしてしまいリタイアとなってしまった。
ステージエンドにたどりついたフランセスキはすべてが終わったという絶望の表情を浮かべて身動きできなかったが、後方から彼に追いついたパッドンはマシンを下り、選手権を戦ってきたライバルへ握手を求め、エールを送っている。
「僕はフランセスキを見つけて握手をした。彼は本当に悲しそうにしていてがっかりしていた。彼は非常に速くて才能のあり、しかも若い。諦めるべきではないし、何度でもチャンスはある。僕たちも昨日はすべてが終わったと思ったが、ラリーではすべてが起きるものだ」
パッドンはバルム・チェコでは13位に終わったが、パワーステージで3ポイントを獲得し、ランキングで13ポイントのリードを築いた。
「僕らにとっては残念な週末だった。もっと多くのポイントを持ち帰りたかった」とパッドンは語った。「チャンピオンシップの観点からは、もちろんもっと悪くなる可能性もあったが、他人の不運に頼りたくはない」
ERCの次戦は2 週間後に英国で初開催されるラリー・ケレディギオンだ。パッドンはウェールズのグラベルステージで2年連続のERCチャンピオンに輝く可能性をもっている。