WRC2019/02/16

スニネン、波乱続出スウェーデンでDAY1トップに

(c)M-Sport

(c)Toyota

(c)Citroen

 2019年世界ラリー選手権(WRC)第2戦ラリー・スウェーデンは、DAY1を終え、Mスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)がリードしている。暖かい気温もあって路面を覆っていた氷が溶け出し、コンディションが悪化。先を急ぐドライバーに罠を仕掛けた。こうした状況でスニネンは果敢にアタックを重ね、キャリア初のラリーリーダーで金曜日を終えた。しかし、2位にはわずか2.0秒差でオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がつける接戦だ。

 ラリー・スウェーデンは、木曜日の夜、カールスタッドにあるフェリェスタッド競馬場でのスーパーSSで幕を開けた。2台併走の顔見せ的なステージだが、出走順は主催者の判断に委ねられており、ここで粋な計らいをする。ステージはWRC2から始まり、前年のウイナー、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は、チャンピオンのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3WRC)との一騎打ち。そしてトリを飾るのは9年ぶりにWRCに帰ってきたマーカス・グロンホルム(トヨタ・ヤリスWRC)と、同じく今季WRCに復帰したセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)の組み合わせ。かつてタイトル争いを展開した偉大なチャンピオン経験者のふたりは、喝采を浴びて激走した。ふたりの勝負は1.9秒差でグロンホルムに軍配が上がる。とはいえ「ストレートでも轍のせいでステアリングを取られて大変だった」と振り返るように、カールスタッドはステージが始まった夜の8時でも気温3度と暖かく、路面の氷が溶け出してルーズになり、深い轍ができて後続のドライバーほど苦戦することになった。

 こうしたコンディションでベストタイムを奪ったのは、ヌーヴィル。0.8秒差でオジエが続き、3番手にはアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)、4番手にタナク、5番手にヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)、スニネン、エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3WRC)が続く。もっとも距離の短いステージでは大きな差はつかず、ヌーヴィルからラッピまではわずか3秒差だ。

 翌金曜日、ラリーはカールスタッド北方のトースビーに設けられたサービスパークを軸に、国境を超えてノルウェーにある雪と氷の森林ステージへと挑む。21.26kmのホフ・フィンスコグ、24.88kmのスヴルリヤ、18.10kmのレーデンはスタートとゴールはスウェーデンだが、コースの中盤はノルウェーを走る。この3つのステージを午前と午後で2回走り、8.93kmのトースビーでゴールする計7SS/139.31kmが舞台となる。

 スタート前に懸念されたのは、気温の高さだ。SS2のホフ-フィンスコグの1回目の走行が始まる朝8時の時点での気温は7度。路面は氷がところどころで溶け始め、グラベルが露出している。このステージでベストタイムを奪ったのはタナク。「意外にグリップはいいよ。ぬかるんでいるところは数カ所だけだった」とラリーリーダーに躍り出る。セカンドベストはスニネン。3番手タイムはラトバラが記録して、総合順位は首位にタナク、3秒差でオジエ、さら0.8秒差でヌーヴィルというオーダーになる。

 SS3のスヴルニアはステージ中ほどにフルモの大ジャンプを含むチャレンジングなコースだ。ステージエンドの気温はマイナス1度で、路面には薄く新雪が積もっていた。このステージで気を吐いたのはスニネン。「ラインがややワイドになった。前後のバンパーがついているかどうか、わからないくらい攻めた」と、自身今季初のベストタイムを刻んでヌーヴィルを抜き、2位浮上を果たす。セカンドベストはタナクで、「まだまだ週末は長いよ」と余裕の表情で首位を守る。

 午前のループの最後のステージはSS4のレーデン。国内ラリーでも使用されている伝統的なステージだ。ここでグロンホルムにアクシデントが起こる。朝の2つのステージでもハイスピードスピンを喫していた彼は、このステージでもスタートから6.6km地点でコースオフ。スノーバンクを超えてスタックしたためにコースに戻ることができず、リタイアとなってしまう。

 ベストタイムはタナク。2位のスニネンとのタイム差を5.5秒に開いた。ラトバラもセカンドベストを記録したことで、ヌーヴィルを抜いて3位に浮上し、スニネンの0.1秒差まで迫ってきた。

 午前のループを終えて首位を走るタナクは「今のところはスウェーデン的なコンディションで状態はいい。しかし2回目のループは大きく変わるだろう。どうやって対処するかを考えなくては」とコメント。2位のスニネンは「良い感触を掴んでいる。でもそれが落とし穴になるかもしれない。とにかくミスをしないことだ」と話した。

 多くのドライバーが気温上昇を懸念してきたが、SS5、2回目のホフ-フィンスコグは予想どおりに厳しいコンディションとなった。路面の氷はさらに溶け、シャーベット状となりコースを覆う。全域でグラベルが露出し、さらに1回目の走行の後に併催されているヒストリックラリーにエントリーしたマシンは走行したため、WRカーのそれとは異なる轍がコース上に出現することになった。

 先頭ランナーのオジエは苦戦。轍に蹴られて大きくマシンをスライドさせ、スノーバンクに突っ込み、タイムロス。5位から7位へとポジションを落とすことになる。またヌーヴィルもジャンクションでワイドになってスピン。その後スノーバンクに乗り上げて4位から6位へと後退してしまう。

 明日以降の出走順を有利にすべくペースを上げ、罠に落ちたオジエとヌーヴィルとは対照的に、タナクはあえてペースを落としクリーンな走りに徹した。そのために首位から3位へとポジションを落としたものの戦略的には正しかったと言うべきだろう。首位には2番手タイムのラトバラが立ち、2位はリヤにダメージを負いながらも3番手タイムで食い下がったスニネンがキープしている。

 2回目のスヴルリヤも、1回目の走行後、路面の氷が溶け出してグラベルがあちこちで露出した難しい状況だ。このコンディションで先頭を走るオジエに再びアクシデントが襲う。スタートから16.1km地点でリヤをスライドさせてコースオフ。スタックしてしまう。観客のいない場所だったこともあり、脱出に手間取り、リタイアとなる。

 ベストタイムはスニネン。ラトバラを抜いてキャリア初のラリーリーダーとなった。「嬉しいね。本当にいい気分だ。ヒヤリとする瞬間もあったけれど、大丈夫だった。僕たちはとにかくフラットアウトで行くしかない」と満面の笑みで語った。スニネンは「フラットアウト」という宣言とは裏腹に続くSS7レーデンでは「ラリーをリードしていることは嬉しいけれど、重要なのはラリーをどの順位で終えるかだ」と、慎重な走り。それでも2番手タイムで追い上げてきたラトバラに5秒差をつけて首位を守る。

 金曜日最後のステージは、9.56kmのトースビー。すっかり陽が落ちて暗くなったステージで、またしてもドラマが起きる。追撃を期してさらにペースを上げたラトバラがスタートから2.2km地点でコースオフ、スタック。周りに観客がいなかったためシャベルで雪かきをして脱出を試みるもリタイアとなってしまう。

 ラリーリーダーのスニネンも無事ではすまなかった。走行中にライトポッドの装着が緩むトラブルに見舞われ、ペースを落とす。なんとか首位は守ったものの、セカンドベストを刻んだ2位タナクとの差は2秒まで縮んだ。

 17.8秒差の3位にはSS3、4でコーナーでワイドになり過ぎ、ボディにダメージを受けながらもしぶとく走ったミケルセン。4位は2回目のループでペースを上げ、SS5、7でベストタイムを奪ったエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が28.6秒差で追う。エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3WRC)は、なかなかペースが掴めず、SS5では5速で回る右コーナーでスノーバンクにヒットし、タイムロス。それでもトップから42秒差の5位にしがみついている。

 本格復帰2戦目のローブは、一定しない路面コンディションに悩まされながら、クリーンにドライブすることを自身に課して6位。ラッピとのタイム差は6.8秒だ。ローブに3.9秒差の7位はヌーヴィル。オジエがリタイアしたとはいえ、明日の出走順を考えると困難な状況に変わりはない。

 クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)は「マシンの感触もいいし、クリーンに走れている」としながらも、うまくリズムが掴めていないようだった。5位で迎えたSS7ではスタート時にエンジンをストールさせてタイムロスするなど、ついていない。ヌーヴィルに0.4秒差、首位から53.1秒差の8位で土曜日を迎えることになる。

 土曜日、ラリーは、ハグフォースやヴァルゴーセンといったスウェーデン伝統のステージを走る。SS9レンメンのスタートは日本時間で15時半過ぎとなっている。