6月13〜15日に行われたヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第3 戦のロイヤル・ラリー・オブ・スカンジナビアは、最終日の8ステージすべてにおいてベストタイムを奪ったオリヴァー・ソルベルグ(シュコダ・ファビアRS Rally2)が2年連続優勝を飾ることになった一方で、彼と初日から激しくトップを争ってきたヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)が最終ステージで右フロントタイヤをパンクして3位へと後退、ミッコ・ヘイッキラ(トヨタGRヤリスRally2)が2位でフィニッシュするという波乱のエンディングとなった。
スカンジナビアの初日は、ソルベルグとパッドンがすべてのステージにおいてコンマ数秒を奪い合う息詰まるバトルを繰り広げ、ソルベルグが3.3秒をリードして最終日を迎えている。
しかし、パッドンは前日同様にルースグラベルの多い路面に最終日もてこずることになり、じわじわとタイムをロス、4連続ベストタイムを奪ったソルベルグが朝のループを終えて13.7秒差へとリードを広げることになった。
パッドンは、午後のループの最初のステージでも渾身の走りをみせるも、0.1秒差でまたもベストタイムはソルベルグのものとなった。「チャンピオンシップで勝ちたいが、ラリーでも勝ちたいんだ!今朝のオリヴァーのドライビングはとても良かった。でも、絶対なんてことはない」と、パッドンはステージエンドで逆転への意気込みをみせたが、残されたのはわずか3ステージだ。リーダーとの差を縮めるためにどれだけ大きなリスクを負わなければならないかは明確であり、彼は次のステージではペースを落として最後のパワーステージでのポイントのためにタイヤを温存する戦略に切り換える、
トップ争いがソルベルグ優勢へと流れを変えるなか、二人の後方ではヘイッキラとマティユー・フランセスキ(シュコダ・ファビアRS Rally2)による壮絶な3位争いが続いている。ヘイッキラが4.2秒をリードして土曜日を迎えたものの、選手権リーダーのフランセスキも必死に食い下がっており、最終ステージを前にしてポップオフバルブの問題に見舞われたことでその差は3.8秒へと縮まることになった。
だが、フランセスキは最終ステージの終盤、高速ストレートのあとの難しいジャンクションでミスしてバンクにヒット、マシンを横転させてリタイアとなってしまう。さらに、2位につけていたパッドンもワイドになって草むらの石で右フロントタイヤをパンクしてしまい30秒近くをロスしてしまう。
パッドンは2位をヘイッキラに譲ったとはいえ、どうにか3位でフィニッシュ、今季初表彰台を守ることになったものの、あまりの悔しさに拳をステアリングを叩きつける。「今年はこんなことばかりだ、今回もまたポイントをプレゼントしてしまったよ・・・」。それでも選手権リーダーのフランセスキがクラッシュしたため、パッドンは56ポイントで並び、タイトル争いのトップに立った。「オリヴァーも素晴らしい走りだったが、他のドライバーが速くなってきていて、僕らのパッケージには限界があったのだろう。このラリーのために改良を施したが、今朝のようにグリップレベルが低いと、戦いを挑むことができなかった」。
ヘイッキラは開幕戦ハンガリーでは最終日にサスペンションを壊してまたも優勝のチャンスを逃しており、最終ステージのフランセスキとパッドンのドラマを惜しみながらも、優勝のような気分だと彼にとってERC最高位となる2位を喜んだ。「ライバルたちには申し訳ないが、正直なところ、とてもいい結果になったよ。自分にとってとても難しいラリーの後だったので、まるで優勝したような気分だ。ソルベルグとパッドンのスピードについていけなかったことは、まったく自分の責任ではない。彼らは本当にプロフェッショナルなドライバーだからね」
ソルベルグは、午後もプッシュを続け、イベントの最後を飾るパワーステージを含む最終日の8ステージすべてを制し、38秒差をつけて2年連続で母国ラウンドで優勝することになった。
「素晴らしい気分だ。週末に向けて大きなプレッシャーがあった、去年に続いてまた勝ちたかったからね。昨日はひどいフィーリングだったけど、今日もスリッパリーなコンディションだったけどコントロールもよく、スピードもあり、自信がもてたよ」とソルベルグは語っている。
「そえにしても本当にギャップが小さいなかでのラリーだった。昨日の僕にとって、ここのレベルはWRC2よりもずっと高かった。タイムも僅差で、クレイジーでファンタスティックだった」
フランク・トーレ・ラーセン(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が最終日にスピンを喫しながらも、TRTラリーチームのマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)の追い上げから逃げ切って4位でフィニッシュした。
チームMRFタイヤのマルティンシュ・セスクス(トヨタGRヤリスRally2)はSS10の終盤で2度にわたってエンジンがストールする問題に見舞われてトップ5争いから脱落、6位という残念な結果に終わっている。
昨年のERCスカンジナビアでジュニアERC優勝を果たした20歳の自動車メカニック、イサック・ライエルセン(シュコダ・ファビアRS Rally2)がERCレギュラードライバーのミコワイ・マルツィックを抑えて殊勲の総合7位フィニッシュを果たしている。
最終日はトップ15のみがリバースでスタート、19位で最終日を迎えたペター・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は好ポジションでステージに臨んだがステアリングラックの問題に見舞われて期待されたベストタイム獲得はならず、15位でフィニッシュした。「本当にクレイジーなステージだった。楽しかったけど、心拍数はかなり上がっている。もちろん、また次にラリーを走るなら、その前に、たくさんのテストが必要だが、たぶん、若い選手たちに将来を任せるほうがいいだろう!」
ERCジュニアは、初日をリードした地元のパトリック・ホールベルグ(プジョー208 Rally4)はクラッシュ、ミッレ・ヨハンソン(オペル・コルサRally4)が逆転優勝を飾っている。
ERCの次戦は7月5〜7日に行われるラリー・エストニアだ。