WRC2022/09/16

トークスポーツ、46分でボディ交換の大作業

(c)WRC Promoter

 ラリー・デ・エスパーニャが以前、ミックス路面で開催されていたとき、ターマックからグラベルへのスペック切り替えのためにサービスは75分間の作業が認められていた。それでは問題のあるシャシーからエンジンルームのすべてのパーツやドアパネルやバンパーなどをすべての外観をはぎ取って新しいシャシーに移植する作業にはどのくらいの時間が必要になるだろうか・・・。トークスポーツWRTは先週末のアクロポリス・ラリーギリシャのスタート数時間前に、エイヴィンド・ブリニルドセンのシュコダ・ファビアRally2エボのシャシー交換作業をわずか46分という短時間でやってのけた。

 負傷したマルコ・ブラシアの代役として土壇場で出場が決まったブリニルドセンだが、先週の水曜日の午後に行われたアクロポリス・ラリーのための事前車検でシャシーのダメージが見つかり不合格となったことから、彼の出場は厳しい状況と見られていた。

 ドイツを拠点とするトークスポーツWRTは、ブリニルドセンに荷物をまとめて帰国するよう伝えるか、代替シャシーを現地で探して出場にむけて作業を行うかという難しい決断を迫られることになった。

 トクスポートはこの週末に空きのあるマシンを探して必死に電話をかけた結果、ハンガリーのトップカーズ・ラリーチームからシャシーを調達することができた。代わりのシャシーを搭載したトレーラーは水曜日の夕方にハンガリーを出発、ギリシャに向けて夜通し走り続け、ラミアに到着したのは木曜日の朝、9時58分だった。すでにシェイクダウンは始まって時間だったが、チームはブリニルドセンのマシンの準備を急いで開始した。再車検の締め切りは11時で、夕方にはラリーはスタートする。もたもたしている暇はない。

 チーフエンジニアのヤニック・ウィロックスが、あわただしかった状況をふりかえった。

「車検でシャシーに問題が発生したんだ。その解決策のひとつが、別のマシンを探すことだったんだ。しかし、ギリシャのラリーでは、みんな自分のクルマを使っているので、そう簡単にはいかなかった」

「ギリシャでマシンを探すのを諦め、ドイツやチェコにもシャシーはあったが、ここまで運ぶのに時間がかかりすぎたので、トップカーズのおかげでハンガリーに1台だけ見つけることができた。ブダペストを午後6時ごろに出発し、夜通し運転して間に合わせてくれた」

 あとはメカニックの腕の見せ所だったが、それは簡単な作業とは思えなかった。ハンガリーから借りたマシンからすべてのパーツを取り外して裸のボディにしたあと、トークスポーツWRTが所有するマシンからすべてのパーツを取り外してこの代わりのシャシーに移植しなければならないからだ。

「道路の事情で少し遅れがあったが、午前10時にここに到着し、スクラッチのシャシー交換作業の締め切りは午前11時だった。エンジンが搭載されたシャシーが届いたので、まずはそのエンジンを取り外すなどした。40人ほどのメカニックがいたが、10分ほどで我々が所有するエンジンとフロントアクスルが搭載された。そして46分後にはクルマが完成したよ」

「ここにいるすべての人のコミットメントが非常に高く、誰もがスタートに向けてプッシュしていた。メカニックたちの仕事ぶりには脱帽だ」と付け加えた。

 トークスポーツWRTのメカニックたちの作業はこれだけで終わったわけではない。木曜日の夜にアテネのオリンピック・スタジアムのスーパーSSでクラッシュしたアンドレアス・ミケルセンのファビアRally2エボは翌朝のリスタートに間に合わせるために、一度、200km離れたラミアのサービスに戻され、大破したフロントセクションの大修理を行ったあと、ふたたび280km離れた土曜日のスタートが行われるルートラキにむけて運んでいるのだ。

 ブリニルドセンはテストもなく突然の代役を任されながらも総合10位、WRC2カテゴリーで4位でフィニッシュ、10分のペナルティを受けて土曜日にリスタートしたミケルセンも総合13位、WRC2カテゴリーで7位でフィニッシュしており、チームの努力に報いている。