ピレリ・タイヤは、2020年の世界ラリー選手権の開幕を祝うために、創業150周年記念のカラーリングをほどこしたキメラEVO37をラリー・モンテカルロのシェイクダウンで走らせた。ピレリのモータースポーツ部門のトップであるマリオ・イゾラがドライバーを務め、なぜかコドライバーを務めたのは2003年のWRCチャンピオンであるペター・ソルベルグだ!
キメラのEVO37は、モンテカルロでも幾多の伝説を残したマルティニ・レーシングが走らせたグループBマシンのランチア037の開発に深く関わった人々の協力を得て、最新の技術を用いて一段上のレベルを目指したレプリカではなく、その正常進化であるエボリューション(EVO)モデルという解釈で製作されたマシンだ。
プロジェクトを進めるのは、ERCで2勝を飾ったことがあるルカ・ベッティが率いるキメラ・アウトモビリだ。キメラのEVO37は、ランチア037の37という数字は、ランチア037を強くイメージするものであり、このマシンの予定生産台数もでもある。
ソルベルグはこれまで長い間ラリーカーに座って過ごしてきたが、コドライバーシートはまったく新しい体験だった。
「僕がいいコドライバーになれるかどうかはわからないな・・・」と、ソルベルグは苦笑いを浮かべた。
「皆がどうして僕がコドライバーなのか質問するけれど、僕はわからないんだ。いつもは僕がドライバーで、ドライブしたいと思っている。でも、僕とマリオは非常に長い間、友達だからね!」
ソルベルグは、ピレリのモータースポーツのヘッドを務めるイゾラから、ピレリが前日に作成したペースノートを見てほしいと頼まれて笑い出した。
「いまや彼は偉くなって重要人物になっているが、一番うれしいのは、彼が2003年に世界チャンピオンになるために一緒に働いていた頃とまったく変わっていないことだ。彼はとてもいいやつなんだ」
キメラEVO37のプロジェクトには、実際にマルティニ・レーシングで指揮をとったクラウディオ・ロンバルディといった開発メンバーも参加、シャシー開発にはランチアで2度のワールドチャンピオンに輝いているミキ・ビアジオンも関わった。エンジンはブロックは純粋な037のものを流用したが、中身はイタルテクニカによって再設計されているという。
「エンジンは自分たちで作っているんだ」とベッティは語った。「オリジナルの037と同じだが、新しいんだ。ボディはカーボンファイバーだが、当時と同じくチューブラーシャシーを使用して、ダブルのダンパーもオリジナルマシンと同じだ。でも、スーパーチャージャーやターボチャージャーなどは新しいものだ」
イソラがエンジンを始動してシェイクダウンのステージへと向かって行く。ステージにこだまするサウンドを聴いていると、まるで1983年のラリー・モンテカルロでワルター・ロールが優勝した、まさに39年前のあの場所にタイムスリップするようだ。
スタートするときのイゾラの顔には不安が大きく描かれていたが、ゴールに到着したイゾラとソルベルグは顔を見合わせて笑った。
「スタート地点まで山を登ってきたとき、道路が霜で覆われていたんだ。ペターは『気にするな、何でもない。グリップはある』と言った。次にそういうパッチが現れたとき、僕は少し速くて、マシンはまっすぐ行きそうな感じだった・・・」とイゾラは語った。
「このマシンをフィニッシュまで連れていくことができて、本当に幸せだよ。見てのとおり、車幅がかなりワイドなので、ステージはとてもナローだった!でも今、ここにいる。正直、ピレリのために、そしてピレリの150周年を記念するこのカラーリングを担えることをとても誇りに思っている。本当に大きな瞬間だ」