WRC2020/05/18

プライベートチームがCOVID-19に悲鳴

(c)Sainteloc Racing

 世界ラリー選手権に参戦しているプライベーターのチームは、彼らが自らその根底を支えていると考えており、選手権の方向性を形づくっているFIAやWRCプロモーターに対して彼らの声にもっと耳を傾けてくれるよう求めている。

 新型コロナウイルス感染症の広がりによって世界ラリー選手権のほか多くの国の選手権が中断している状況にある。マニュファクチャラーチームの動向だけが注目されがちだが、WRC2、WRC3、そしてジュニアWRCに参戦する多くの競技者やその参戦を支えるプライベートチームもまたこの困難な状況に喘いでいることを忘れてはない。

 マニュファクチャラーチームが自動車メーカーの資金に支えられているのに対して、ラリーが開催されることで初めて食べていくことができるプライベートチームは、現在のCOVID-19がもたらした混乱のなかで一刻も早い再開を願っている状況にある。しかし、プライベートチームの多くは、将来に対する不安を感じており、FIAやWRCプロモーターからはラリーを再開に向けた最善の策ついても相談されることもなく、蚊帳の外に置かれていることに懸念の声が上がっている。

 サンテロックチームのラリーマネジャー、ヴァンサン・ドゥシエは、彼がFIAやWRCプロモーターがシーズン終了までにWRCを可能な限り多くの国で開催できるための計画を策定いくために各国政府と協力しながら調整していることは理解しているが、彼のようなプライベーター・チームの金銭的影響についても考慮することを彼らに対して要請していると述べている。

「モータースポーツやWRC主催者たちはプライベーターの存在なくやっていけるのか? と私は言いたい」とドゥシエは語った。

「プロモーター、主催者、チームやドライバー、我々は皆同様の立場にある。我々は皆、生き残るためにお互いを必要としているはずなのにこちらには何の相談もない。プライベーターのチームはFIAの様々な委員会などに参加招集されることなく、マニュファクチュアラーだけだ」

「最終的に我々にとっての資金は、顧客であるドライバーと彼のパートナー(スポンサー)であることを忘れてはならない。もちろん費用を賄うのは顧客であり、FIAでもプロモーターでもチームでもない。我々はあくまで供給する側だが、おそらく今後、経済危機が襲い掛かってくるだろう。顧客にとってもスポンサーにとってもこれからは厳しい時期になる。そのときに彼らのニーズに見合うラリーでなければならない」

 プライベーターのチーム間での共通する懸念は世界ラリー選手権のサポートシリーズ参戦のためにかかるコストである。

「チームとして存続するためにはとっては最低でも4戦もしくは5戦が必要だ。インターナショナルなラリーがなければ国内ラリーに参戦することもできるが、80%はWRCやERC(ヨーロッパ・ラリー選手権)で活動しているウチのようなチームにとっては酷い状況となる」とドゥシエは語る。

「タイヤ、ロジスティクス、技術コスト、そして人件費を削減しなければならない。モンテカルロでは我々は使用可能なタイヤ38本のうち、パンク1回含めて33本だけでエリック(・カミリー)とともにWRC3に勝利している」

 プライベーター・チームのオーナーをつとめた経験のあるFIAラリーディレクター、イヴ・マトンは現在の立場からこうした状況を謝罪している。

「我々はプライベーターのチームの困難な状況を考慮していく。彼らを支援していくために何かをやらなければならないことはよく分かっている、そして今の時点で何か強力な情報を提供することができず申し訳なく思っている」