ERC2020/10/04

ルクヤヌクがファフェをリード、ソルベルグは波乱

(c)ERC

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 2020年ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第3戦ラリー・ファフェ・モンテロンゴは10月3日に初日をむかえ、トリッキーな路面コンディションのなかで波乱が続くなかサンテロック・ジュニア・チームのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)が後続に38.3秒という大差をつけてラリーをリードしている。

 新たにERCカレンダーに加わったオールターマックのラリー・ファフェ・モンテロンゴは、ドライとウェットというミックスしたコンディションの朝を迎え、ウェットタイヤを装着したルクヤヌクはラリーのオープニングループの3ステージすべてにおいてベストタイムを奪ってラリーをリードした。

 金曜日のシェイクダウンでコースオフを喫したオリヴァー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は、スタートが危ぶまれるほどのマシンダメージをメカニックたちの13時間に及んだ作業の結果、無事にラリーをスタート、慎重な走りに徹するかに見えたが、SS1モンティムではルクヤヌクからわずかに0.1秒差という2番手タイムで発進、SS2アンジョスではルクヤヌクがジャンプスタートで10秒のペナルティを受けたことで一時トップに立つことになった。

 しかし、選手権で2位につけるソルベルグは3ステージ連続して2番手タイムでサービスに戻ってきたときには、ルクヤヌクのジャンプスタートの疑いは晴れたために首位を失うことになった。それでも彼は3.2秒差の2位で続いており、3位につけるチームMRFタイヤのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)には6.3秒差をつけている。

 オープニングループの最大の波乱はエミル・リンドホルム(シュコダ・ファビアRally2エボ)の早すぎるリタイアだ。彼はチームメイトのブリーンを従えてシェイクダウンでMRFタイヤ勢として1-2を占めるというサプライズを演じたが、3位で迎えたSS2でガードレールにヒットして9位に後退、さらにSS3ではブレーキトラブルによって壁に激突して横転、リタイアとなってしまった。

 ブリーンの1.9秒後方には15番手という不利な走行ポジションながらヒュンダイ・エスパーニャのイヴァン・アレス(ヒュンダイi20 R5)が続き、さらに0.3秒差で2度のフランス・チャンピオンを獲得しているヨアン・ボナート(シトロエンC3 R5)がつけており、3台は接戦模様となっている。

 天気予報は雨が降り出すことを伝えてはいるものの、降りそうで降らない曇り空のもとで2回目のループはスタートする。上位陣がドライタイヤを選ぶなか、雨に賭けたソルベルグはレインタイヤをチョイスするものの、このギャンブルは裏目にでてしまう。

 スリッパリーなコンディションとはいえ、おおむねドライとなったSS4ではルクヤヌクは2番手タイム、これに対してソルベルグは5秒をロスすることになり、二人のギャップは8.7秒へと拡大する。さらに朝のループで「タイヤに苦戦していた」と語ったブリーンがここではベストタイムを奪ってソルベルグの0.6秒後方へと迫ってきた。

 続く14.13kmと長いSS5でも雨は降らず、ソルベルグはここでも7.6秒を失い、ブリーンだけでなく、アレスにも抜かれて4位へと後退することになる。「路面がドライすぎだ。雨にならなえれば僕らは厳しいよ」と訴えるが、完全なドライとなったSS6ではさらに8秒も失い、首位からは24.4秒遅れの4位で2回目のループを終えることになった。

 ルクヤヌクはドライが進むにつれてペースを再びアップ、SS5とSS6で連続してベストタイムを奪って首位を堅持、ブリーンが18.3秒差の2位で朝のループを終えるが、アレスも2.5秒差でピタリと続いている。

 そして迎えた最終ループ、ついに天候が急変することになる。前ステージでレインを選んだソルベルグを含め、ルクヤヌクとブリーンはいずれもドライをチョイスしてSS7をスタートしたものの、途中から黒雲から雨が降り始め、ステージを濃い霧が覆い始める。

 ここでベストタイムを奪ったのは、15番手という後方からのポジションでスタートしているアレスだ。シェイクダウンで5番手タイムながらもここでは予選がなかったことから2つのループでは汚れた路面に苦戦してきたが、雨が降り始めた情報をその後方のポジションゆえに知ることになり、レインタイヤを武器にブリーンを捕らえて2位へと浮上することになる。

 SS7でスピンを喫したブリーンにはさらに不運が待っていた。彼はSS8ではローカル選手権のマシンが流したブレーキオイルに乗って村のなかを走るタイトなコーナーで石の壁にリヤをヒット、タイヤを失ってしまい、為す術もなくステージエンドでリタイアを決意する。「どうしてこうなったのかわからない。スローコーナーで路面にあったオイルは見えたが突然リヤを失った。それまではタイヤもマシンもうまくいっていたので、本当にがっかりだよ」

 ブリーンのSS7のトラブルで3位へと上がってきたソルベルグもまたこのSS8でトラブルに見舞われる。明らかにエンジンに問題を抱えて失速した彼はここで6分をロス、さらに続くSS9も8分あまりを失ってして首位からは16分という絶望的な遅れとなってしまった。彼は原因がわからずこのトラブルに困惑してるようだった。「エンジン・パワーに問題があるんだ。何かがエキゾーストを塞いで邪魔をしているような感じだ。どうしようもなかったよ」

 上位陣の相次ぐ波乱のなか、さらに雨が強く降り出した最終ステージでは選手権を争う最大のライバルのトラブルを知ったルクヤヌクも大きくペースダウン、さらに2位につけるアレスもまたペースを落として安全に走行、ルクヤヌクが38.3秒をリードして初日を首位をキープした。アレスとは0.4秒という僅差の3位にはボナートが続いており、2位争いは明日に持ち越しだ。

「かなりのギャップが開いたので僕らにとってフィニッシュすることが重要だった。難しい一日でタイヤチョイスも厳しかったが、ここではドラマはなかったので、いい一日になった言えるね」と、ルクヤヌクは語っている。

 グレゴワール・ムンステル(ヒュンダイi20 R5)が総合4位、ERC1ジュニアではソルベルグの後退で首位へと浮上することになり、スペインのエフレン・ヤレナ(シトロエンC3 R5)が5位、MOLレーシングチームのノルベルト・ヘルツィグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が 6位で続いている。

 プロダクションカテゴリーとなるERC2で2度のチャンピオンを獲得しているティボール・エルディJr(三菱ランサーエボリューション)がオープニングステージからリードしており、今回から注目のニューマシン、アルピーヌA110RGTを投入したERC2ポイントリーダーのゼリンド・メレガリは4WD勢を相手に3位につけていたものの、SS6でクラッシュのためにリタイアとなっている。

 ERC3ジュニア選手権はホセップ・バッサス(プジョー208 Rally4)がリード、選手権リーダーのケン・トルン(フォード・フィエスタRally4)は雨でナーバスになっていることを認めながらも堅実なペースで20.7秒差の2位につけている。