トップドライバーたちはどのようにしてカーナンバーを決めたのだろうか?WRCの公式YouTube チャンネルに投稿されたビデオのなかでドライバーたちが自身のカーナンバーにまつわるエピソードを語っている。
世界ラリー選手権では2019年からトップドライバーたちは自由に自身のカーナンバーを選ぶことが認められることになった。チャンピオンもカーナンバー1で走る必要はなく、たとえばカッレ・ロヴァンペラはワールドチャンピオンになった今でもカーナンバー69にこだわっている。
ロヴァンペラは、2020年にトヨタからトップカテゴリーにデビューした当時、カーナンバー69ならひっくり返ってルーフを下にした状態でも同じ数字に見えるからだとその数字を選んだ理由を説明したが、最近のビデオでは別の説明をしている。
「69という数字を選んだ理由はいくつかあるんだ。そのうちのひとつは、父が69番でラリークロスを走っていたから。うちのガレージには、69というゼッケンがついたボコボコのドアがまだあるんだ。いつも小さい頃からそれを見ていたし、カーナンバーを選ぶことになったとき、それは当然の選択だったよ! それに、みんなが覚えてくれているという意味でもいい数字だよ」とロヴァンペラはにこりと微笑んでいる。
キャリアの多くをカーナンバー1で戦ってきた8度のワールドチャンピオンであるセバスチャン・オジエにとって、カーナンバー17は彼の叔父との大切な思い出がある特別な数字だ。今年初めに亡くなったその叔父のおかげで、彼はモータースポーツの世界に入ったのだ。
「僕が幼い頃、家族ではモータースポーツ好きがたったひとりだった。叔父がナンバー17でオートクロスのレースに出ていたんだ。 僕はずっとそのナンバーが好きだったし、12月17日生まれだからね。だから選択は簡単だった」とオオジエは語っている。
勝田貴元はトヨタ・ヤリスWRCでのトップカテゴリーデビューを果たした2019年のラリー・ドイッチュランドで17番を選んでいたが、このナンバーでの参戦は2戦で終わっている。チームメイトとなったオジエが2020年の参戦に17番を望んだため、その代わりに勝田は18番を選んでいる。「最初は9番を選びたかったんだけど、9度のワールドチャンピオンであるセバスチャン・ローブがそれを選ぶだろうから、18番にしたんです。18番を選んだのは、娘が2018年に生まれたからなんです。それに僕にとって初めてWRC2で優勝した年ですし、1+8は9になるのでそれを選びました」
ティエリー・ヌーヴィルは、2013年に11番のマシンで初めてドライバーズ選手権2位となったことからお気に入りの数字となっている。
「2013年にMスポーツ・フォードのドライバーになり、WRC挑戦2シーズン目でドライバーズ選手権の2位となった。初めてのポディウムを含め、何度か表彰台を獲得し、それでそのナンバーが好きになった。どうしてかな。いつもいいフィーリングだったし、このナンバーを手元に置きたいと思ったんだけど、それは当時は不可能だった。チームも変わって7番になり、3番になり、さらに5番になった。でも、自分で選べるようになったので11番を手に入れたんだ」
ヒョンデのオイット・タナクにとって、ナンバー8はただの偶然の出会いだ。2018年シーズンにトヨタに移籍したタナクは、チームに与えられたナンバーのなかから8番が用意されただけだ。
「8番は自分で選んだものではないんだ。最初にトヨタに入った年にヤリ-マティがナンバー1ドライバーで(7番を選び)、僕は8番になった。次の年、僕はチャンピオンになったが、自分でナンバーを選べるようになったので、それまで8番だったこともあり、そのままにすることにした。どこかの国ではラッキーナンバーだと言われたし、僕にとっては無限大を意味する番号でもある。その数字がしっくりきているんだ」
エサペッカ・ラッピは2019年にシトロエンでシーズンを迎えたときから4番を選んでいるが、それほどの思い入れがあったわけではないと説明している。
「2019年に自分のカーナンバーを選ぶことになったが、それまでそれほど4に思い入れがあったわけではない。数字の4がアルファベットのAに似ているから、L4PPIというハッシュタグを考えたんだ。それが4番を選んだたった一つの理由だよ」とラッピは語っている。
エルフィン・エヴァンスも33番以外に思いつかなかったと笑っているが、そのナンバーはすでに彼のイメージとしてすっかり定着している。「33は簡単な選択だった。EEを逆さにした数字だからだ。あまりクリエイティブな選択ではなかったけれど、これ以上のものは思いつかなかった」
グレゴワール・ミュンスターは、大好きなコミックの主人公にちなんだ13番が自身にとってもラッキーナンバーだと語っている。
「13番はちょっとだけ特別なものだ。子どもの頃読んでいたコミックスで、それはミシェル・ヴァイヨンがレーシングドライバーとして成功する物語だ。彼の母がある日、カーナンバー13でルマンで勝つという夢を見て、『くよくよするな、いつかその日はやってくる』といつも言って、主人公ががんばる、そんな物語なんだ。それで僕はそのナンバーが好きになったんだ」
アドリアン・フールモーが16番を選んだのは、セバスチャン・ローブやセバスチャン・オジエらを輩出したFFSAが主催するラリー・ジューヌで勝利を手にし、同時に医師への道を断って、ラリーで生きていくことを決意した2016年にちなんだものだ。しかし、それらは本当の始まりであり、いくつもの16にまつまる運命的なエピソードを彼は披露している。
「すべての始まりは2016年にFFSAに選ばれたことだ。そのあとFFSAの支援で16戦のフランス選手権を走ったあと、2029年のモンテカルロでWRCにデビューして、初めてポイントを獲得したんだ」とフールモーは語っている。「そしてその16戦目のWRCとなったクロアチアでWRカーで初めて走り、その2戦後のサファリ・ラリーの16番目のスペシャル・ステージで初めてトップタイムを奪ったんだ。また、昨年16戦のラリーを走って今年Rally1カーのシートに戻れたことも特別なことだ」
アンドレアス・ミケルセンは、初めて好きなカーナンバーを選べるようになった2019年には、自身の生まれた1989年にちなんで89番を選んだが、久しぶりにヒョンデに戻ってトップワークスに復帰した今年は9番を選んでいる。「2013年に初めてワークスチームのシートを手にしたフォルクスワーゲンで成功したときのカーナンバーが9番だったんだ。89番ではそれほど成功しなかったナンバーだったので、オリジナルの9番に戻すことにしたんだ」