WRC2020/09/19

ローブがトルコ初日をリード、ヌーヴィルが2位

(c)Hyundai

(c)Toyota

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 2020年世界ラリー選手権(WRC)第5戦のマルマリス・ラリー・トルコは、金曜日のレグ1を終えて開幕戦ラリー・モンテカルロ以来の参戦となるセバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)がラリーをリード、チームメイトのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が1.2秒差の2位で続いており、ヒュンダイ・モータースポーツが初日を1-2態勢で終えることになった。

 初日の金曜日はイチメレル(13.90km)とギョクチェ(11.32km)を走る2SS/25.22kmという短い一日となるが、この2つのステージの総合順位で明日のスタート順がシャッフルされるだけに、鋭く尖った石が無数に転がる極悪な路面にひるむことなく、上位を目指す誰もがスタートから全開の鞭を入れることになった。

 SS1イチメレルでは一番手のポジションで走行するセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)が予想されていたとおりに路面掃除のために5.1秒遅れの5番手タイムと苦戦するなか、5番手という走行ポジションからスタートしたヌーヴィルがベストタイムで発進、8番手という後方からスタートしたローブが3.3秒差の2番手タイム、オイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が3.5秒差の3番手タイムで続き、ヒュンダイが1-2-3態勢でスタートを決めることになった。

 4番手タイムにはグリップの低さに驚いたと語りながらも3.9秒差で続いたエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)、5.1秒差の5番手にオジエ、5.2秒差の6番手にはカッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)がテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)が続いている。

「僕らにとって良いステージだったが、明らかにトリッキーなコンディションで、かなり滑りやすかった。ラリーはタフなものになるだろうから、最後の1メートルまで何が起きるかわからない。いい週末を過ごして優勝を目指したいね」と、選手権で遅れをとるヌーヴィルは上機嫌で語った。

 8カ月ぶりにWRCに帰ってきたローブも「プッシュしようとしたし、フィーリングを掴もうとした。完璧とは言えないが、悪くはなかった。いいスタートになったよ」と、ほっとしたように笑みをみせる。いっぽう、3番手タイムでステージをスタートしたタナクは、3分間しかない走行間隔について「ギャップを広げることを要求したが、まったく聞き入れられなかった」と不満げな様子だ。「主催者が何もしなければ、次のステージも悪くなってしまう。僕らには厳しくなる」

 ダストの恐れについて聞かれたトルコ主催者は、スタート前、コースマーシャルが最初のステージの状況を監視していると説明、「最初は3分間のギャップでスタートし、必要に応じて4分間に増やすことも可能だ」と語っていたが、けっきょくSS2ギョクチェも3分間隔でスタートすることになる。タナクの懸念は現実のものとなり、巻き上げられたダストは林のなかのセクションでは風に吹き飛ばされることなくその場にとどまり、さらに日没がそこまで迫っているためオープンなセクションでも夕日がダストに乱反射して、後続のマシンになるほど視界に苦しむことになった。

 このステージでベストタイムを奪ったのはなんと一番手というもっとも不利だったはずのポジションで走行するオジエ、0.5秒差の2番手タイムで続くのは8番手という路面がクリーンになった後方のポジションからスタートしたローブだ。ローブはヌーヴィルを抜いて1.2秒差ながら首位でこの日を終えることになった。

 ローブは砂埃の影響で視界が悪くなっていたことを認めたが、しっかりとしたペースノートに助けられたと語っている。「今夜は本当に気持ちがいい。ダストの中でも速く走ろうとしたし、正確なペースノートがあったのでそれができたし、最終的にトップになれたことは最高の結果だよ」

 いっぽう、このステージでさらにリードに広げる計画だったヌーヴィルは、ベストタイムのオジエからは5秒遅れとなり、ステージエンドで不満を露わにする。「どこもかしこもダストだらけで、本当にむかつくよ。毎年言っても誰も聞いてくれないんだ!」。昨年、彼は同じようにダストに視界を阻まれてイシルベルデで壁から転落、タイトル争いから脱落していただけにその怒りももっともだ。

 もっと苦戦を覚悟していたオジエにとって、ヌーヴィルの0.1秒後方の3位というのは予想してなかった結果だったようだ。彼はステージエンドで「まさしくパワーステージのようだった」と全開で攻めたことを打ち明けたものの、「全力を尽くしたが、僕たちにできることはあまり多くない。明日は僕たちの出走順の前に、何台かクルマがいることを願っているよ」と土曜日の走行順については悲観的な予想をしていたが、この予想はいい意味で裏切られることになった。

 エヴァンスはオジエから0.8秒差の4位、ロヴァンペラがさらに0.6秒差、首位から2.7秒遅れの5位、スニネンも首位から4.2秒差の6位で続くなか、もっともダストのカーテンに苦しむことになったタナクは3番手から7位へと転落することになった。

 タナクと首位とのタイム差は4.8秒にしか過ぎないが、明日は4番手でコースを走ることになるため、ライバルたちより大きな走行順のハンデを負うことになってしまった。「どうしてスタート間隔が訂正されなかったかなんて僕にはわからない。こうなるのは分かっていた。この遅れにはがっかりしているよ」と、タナクは首を横に降る。

 8位にはハードタイヤを選んだことでペースが上がらなかったエサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)、シェイクダウンで転倒してしまったガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)もグリップ不足に悩みながらも、ヒュンダイ2Cコンペティションのピエール-ルイ・ルーベ(ヒュンダイi20クーペWRC)を抑えて9位で初日を終えている。

 明日の土曜日は、数々のドラマが起こることでも知られるダッチャ半島のタフなコンディションのルートをめぐる一日となる。オープニングステージのイェシルベルデは現地時間8時45分(日本時間14時45分)にスタートとなる。