WRC2024/06/04

小暮と山本がタフなサルディニアで厳しい洗礼

(c)Toyota

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 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかる、山本雄紀が、5月31日から6月2日にかけて開催されたWRC第6戦ラリー・イタリア・サルディニアにトヨタGRヤリスRally2で参戦。小暮はクラッシュで土曜日にリタイアを喫し、山本は土曜日のデイリタイアを経て完走を果たした。

 地中海に浮かぶサルディニア島を舞台とするこのラリーは、WRCではもっとも平均速度が低いイベントのひとつだが、目の細かな砂状のグラベルに覆われたステージは道幅がかなり狭く、道のすぐ側には木や大きな岩が迫るコースをハイスピードで駆け抜けるため、小さなミスが大きなアクシデントに繋がる難しさをもっている。

 前戦ラリー・デ・ポルトガルで初めて、4輪駆動のRally2カーでグラベルラリーに臨んだ小暮と山本は、デイ2でリタイアを喫するも貴重な経験を得ている。そして、今回のサルディニアではその経験を活かし、さらに多くの距離を走ることを目標にすることになった。

 彼らは確実性の高い走りを心がけ、競技初日となった金曜日の4つのステージを順調に走行、小暮はWRC2カテゴリー18位、山本は19位につけることになった。競技2日目の土曜日は、3日間で最長の一日であり、小暮と山本はさらに多くの経験を積むべくスタートしたが、彼らは最初のSS5で戦列を去ることになった。

 小暮はコーナー進入時のブレーキングが僅かに遅れ、アウト側の土手に激突。クルマはサービスで修理され翌日に再出走することができる状態となったが、彼は右肩に痛みを感じ、検査の結果骨折はしていなかったが、大事をとって再出走を断念、リタイアとなった。

 一方、山本はコーナー内側の茂みの中に隠れていたコンクリート片をヒットし、サスペンションを破損。スペアパーツを搭載していたため自力での修理を試み、コースに戻っている。しかし、次のステージの出走リミット時刻を過ぎたため、デイリタイアを余儀なくされている。翌日、山本は再出走を果たし、日曜日の非常にトリッキーな4つのステージを走破。貴重な経験を積んでラリー・イタリア・サルディニアを終えることになった。

 小暮はサルディニアを最後まで走りきることができなかったことへの悔しさを語っている。「サルディニアの道は幅がとても狭く、急なコーナーが連続して現れるなど、ポルトガルとはまったく異なる難しさでした」と小暮は語った。「SS5の狭いセクションでミスをしてしまいました。その直前にハイスピードな区間があり、ペースノートに記していた情報が少し甘かったため、ブレーキが遅れてコーナー外側の何かにぶつかってしまいました。メカニックたちは素晴らしい仕事でクルマを直してくれましたが、ラリーに復帰することはできずとても残念でした。次のラリーに向けて、何が起こったのか分析し、学ばなくてはなりません」

 山本は次のようにコメントしている。「ラリーを最後まで走り切ることが最大の目標だっただけに、複雑な気持ちです。土曜日の朝、レッキでは見つけることができなかった、茂みの中に隠れていたコンクリート片にぶつかってしまいました」と山本はふりかえっている。

「ステージの途中で止まり、何とか自力でクルマを修理したのですが、次のステージのスタートリミットに間に合いませんでした。日曜日に再出走したときは、全てのコーナーから学び、パワーステージはこれまで走った中で最もラフな道でしたが、より良いフィーリングを感じて走ることができました。距離は短かったとはいえ、いい経験になりました。次回はもっと我慢強く、そして賢く走らなければならないと実感しました」

 インストラクターのユホ・ハンニネンは、二人のサルディニアを次のように総評している。

「金曜日はふたりともミスも問題もなく走り、いいスタートを切った。土曜日に関しては、1つ目のステージが大きなチャレンジになるであろうことは、我々もドライバーたちも十分理解していた。恐らく、今回もっともトリッキーなステージだったはずだ。非常に残念なことに、とても貴重な経験になったであろう、その後の150km近いステージを彼らは走ることができなかった。ただし、経験が十分ではない時は、いくら注意をしていてもミスをしてしまうものだ」

「彼らにとって、今回のようなテクニカルなグラベルラリーへの出場は、クルマの種類に関係なく初めてだった。また、Rally2は、これまで彼らが乗ってきたクルマと比べるとかなり大きなステップアップとなる。そのため、現時点では大きなチャレンジであることは間違いなく、今後、様々な路面やタイプが異なる道で経験を積むためにはどうするべきか、考えなくてはならない」

「雄紀は日曜日に再出走し、独特なコンディションのステージを経験することができた。きっと驚くようないい経験になっただろうし、知らない道やコンディションを学ぶためには、ただ普通にステージを走り切ることがいかに重要か、気づいたのではないかと思う」

 小暮と山本の次戦は、7月5日から7日にかけて開催されるFIAヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第5戦ラリー・エストニアとなる。