WRC2023/02/08

悪夢ふたたび? 予想外に暖かいスウェーデンに

(c)Rally Sweden

 雪を求めて北へと舞台を移したはずが、ラリー・スウェーデンはふたたび天候の問題が再燃することになった。ラリーの舞台となるウーメオの近郊はいまのところ十分な雪はあるものの、思ってもみないほど暖かくなったことから、かつてのキャンセルの悪夢を思い出させる状況となっている。

 ラリー・スウェーデンの主催者は、先週、ウーメオ・スプリントのコースとポディウムが設けられるレッドバム・アレーナの写真をソーシャルメディアで公開、「素晴らしいコンディションでラリーの開催を待っている」とのコメントを発表してきたが、ラリーウィークの始まる月曜日は日中の気温が3度まで上昇したことから、週末の路面のコンディションを懸念する声が高まっている。

 ラリー・スウェーデンは1973年にWRCが誕生した当初から南部のヴェルムランド地方で開催されてきた。しかし、暖冬による深刻な雪不足が続いたため、2022年にこれまでより700kmほど北上してウーメオへと移動して開催されている。

 ウーメオは2週間前には十分な降雪があったあと先週はほとんど降らなかったが、早朝にはマイナス15度まで冷え込む厳しい寒さの日々が続いたため、路肩には大きなスノーバンクが生まれ、ステージの路面は雪と氷による理想的なコンディションとなっていた。

 しかし、週明けになると気温が上昇、火曜日の日中の最高気温はマイナス1度と暖かく、水曜日から木曜日まではさらに穏やかな陽気となり、氷点下になることはなさそうだ。ラリーが本格的に始まる金曜日の日中はマイナス1度で、土曜日はさらに1度下がるが、最終日の日曜日は4度まで上昇するとの予報だ。夜間も先週より10度近くも暖かく、マイナス2度からマイナス9度の週末になるとみられている。

 トヨタGAZOOレーシングWRTのチーム代表を務めるヤリ-マティ・ラトバラは、厳しい氷点下のスウェーデンからタイヤのスタッドがすべて消え去るような泥水の中のスウェーデンまで、さまざまなスウェーデンを経験してきた。彼は今年は北欧全体が暖かい冬だったと認めているが、ラリー・スウェーデンのキャンセルを心配する必要はないだろうと語っている。

「良い年も悪い年もあるだろうが、ラリーのキャンセルを心配する必要はないだろう。スウェーデンもこれまでよりもっと北に位置しているのだから、もっと自信を持っていいと思う」とラトバラは語っている。

「ただ路面と露出するグラベルは心配だ。先週我々がフィンランドでテストを行なったときは、気温がプラスだったので、氷の層が壊れてグラベルになった。ウーメオでは雪が降っているが、暖かいままならば路面の氷が溶けてくるので、同じようなコンディションになると思う。スノーバンクは残っても、路面が問題だ・・・」

 スノーイベントにおける完璧な路面コンディションがつくられるためには、いくつかの過程が必要となる。まずは雪が降ることが最大の条件となるが、その雪が日中の日射しですこし融けたあと、夜間の冷え込みでガチガチに凍結することが重要となる。この繰りかえしによって路面にはラリーに最適なぶ厚いアイスの層が生まれるのだが、雪が降ったとしても日中でも厳しい寒さが続くと、パウダースノーはいつまでも柔らかいままのためアイスの層が生まれない。そのためラリーカーの走行であっという間に凍結したグラベルが表面に露出することになる。