ERC2022/08/28

新王者に波乱、コペツキが母国戦で大きなリード

(c)RedBull Content Pool

(c)RedBull Content Pool

(c)RedBull Content Pool

 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦バルム・チェコ・ラリー・ズリーンのレグ1が8月27日土曜日に行われ、新ERCチャンピオンに輝いたエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が序盤にクラッシュする波乱に見舞われるなか、地元チェコのヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が34秒という大きなリードを手にしている。

 雨上がりの朝を迎えた土曜日、多くのドライバーが気温が上昇すればドライが進むとしてスリックタイヤをチョイスしてスタートすることになったが、オープニングステージが始まることからふたたび雨が降り始め、コースはフルウェットでところどころには水たまりが生まれた最悪のコンディションとなってドライバーを待ち受けた。

 この難しい朝のステージで素晴らしい速さをみせたのは地元のアダム・ブレジーク(シュコダ・ファビアRally2エボ)だった。前夜のスーパーSSでトップに立ったコペツキがミディアムコンパウンドのドライタイヤというチョイスのために出遅れるなか、ウェットタイヤを装着したブレジークがいきなり首位に立つことになった。

 ブレジークから0.1秒遅れの2番手タイムで続いたのは金曜日にタイトル獲得の祝福を受けたヤレーナだ。だが、新チャンピオンの快調なペースは長く続かない。全域にわたってウェットとなったSS3ドラジュコヴァ・ステージでヤレーナはコースオフ、木にクラッシュしてマシンを止めることになった。

 ヤレーナのシュコダはエンジンが脱落してしまうほどフロントを大破しており、衝撃の大きさを物語っていたが、幸いにも彼とコドライバーのサラ・フェルナンデスは自力でマシンから脱出、大きなケガはない模様だが念のために検査のために病院へと向かっている。

 チームMRFタイヤのチームマネジャー、ビベック・ポンヌサミーは、このクラッシュはドライバーのミスではなく、ラレーナのマシンに問題があったことが原因だと新王者を擁護している。

「エフレンのミスではなく、クルマに何かが起こったのだ」とポンヌサミーは語った。はまた、ヤレーナのマシンがかなりのダメージを受けたため、日曜日の再スタートは不可能であることも確認した。

 ドラジュコヴァは24.32kmというこの週末でもっとも長く、バルムを象徴する難しいステージと称されていたが、朝まで降った雨がさらに難易度を高めていた。このステージで過去10回の優勝を誇るコペツキは、けっしてこのコンディションに向いてないタイヤチョイスだったにもかかわらず、2番手を18.4秒も引き離す信じがたいタイムを記録してトップへと浮上する。

 前ステージで首位に立ったはずのブレジークも26秒も遅れて22.9秒差の2位へと後退するが、オーストリア王者のシモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRally2エボ)に比べればまだましだった。2位につけていたワグナーはジャンクションへの進入でオーバーシュートし、干し草の俵に激突してスピンを喫し、37秒遅れの5位へと後退してしまった。

 雨になることを誰よりも待ち望んでいたはずのエリック・ツァイス(シュコダ・ファビアRally2エボ)もペースが上がらない。同じくウェットとなった昨年のバルム・チェコ・ラリーでは最終ステージでクラッシュするまでコペツキを抑えて勝利目前の速さをみせたが、このドラジュコヴァ・ステージではコペツキに一気に19.8秒差もつけられ、早くも26.1秒遅れの4位にとどまっている。

「わからない」と、ツァイスはコペツキのタイムを知らされて途方に暮れたように語った。「限界だったんだ。なぜこんなにも差がついたのか僕にはわからないよ」

 コペツキは朝のループの最後のステージ、SS4セメティンでも連続してベストタイムを奪って早くもリードを28.4秒へと広げることになった。「本当にトリッキーだ。このステージもスタート後に雨が降り始めたから、ステージの70パーセントは湿っていたと思う。ドライだと予想してこのループをスタートしたので本当にトリッキーだったよ」とコペツキは語っている。

 コペツキから30秒近く離れた後方では二人の若手による激しい2位争いとなっている、2番手タイムでブレジークを抜いたツァイスが2位へと浮上するも、ブレジークはわずか1.6秒後方だ。

 だが、ブレジークは、午後のループの最初のステージ、SS5ブレゾヴァをスタートして3.4kmでエンジンのパワーを失ってしまいマシンをストップ、彼はボンネットを開けて修理作業を行うことになった。彼は外れてしまったターボパイプを直してどうにかコースへと戻ったが、6分あまりも遅れて36位まで後退、期待されたERC初表彰台は厳しい状況となってしまった。

 このステージではコペツキがまたもやベストタイムを奪ってリードを32.8秒へと拡大、ツァイスがSS6でこの週末初のベストタイムで昨年の雪辱を果たすべく追い上げをみせるも、コペツキはSS7ではこの日4度目となるベストタイムを奪って、ツァイスとの差を34.6秒へと広げてレグ1を終えることになった。「確かに、ここでは安全に行ったよ。愚かなミスはしたくないから、ペースを少しコントロールしている。このステージも非常にトリッキーだったが、幸いなことに、僕らはフラットアウトしなかったんだ」

 ツァイスは朝のループの遅れを午後のループで挽回しようとしたが、ギリギリの走りをしたにもかかわらず、ほんのわずかも縮められなかったとチャンピオンの速さに完全に舌を巻いた。「正直に言うと、僕らは本当に本気でプッシュしたんだ。最初のループではセットアップとタイヤが悪かったから、午後はペースを上げてもっと速く走ろうとした。けれど、ミスター・コペツキは自分がチャンピオンである理由を示してくれてくれたよ!」

 ツァイスの13.6秒後方の3位には、朝のループの問題から挽回したフィリップ・マレシュ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が続いている。コペツキのチェコ選手権のメインライバルであるマレシュはトップ3につけていたがSS3のスピンをはじめ、SS4ではジャンプのあとの着地でコースオフして岩に衝突して8位へと後退したが、上位陣がトラブルに見舞われるなか表彰台のポジションまで挽回している。

 マレシュの9.5秒後方の5位にはワグナー、2分近く離れた6位にはノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)、7位にはズリーンのグリップの低いアスファルトにペースを上げられなかったシモーネ・カンペデッリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が続いている。

 ケン・トルン(フォード・フィエスタRally2)は厳しいステージに翻弄され、SS3でコースオフ、SS4では今度は横転してしまい、リタイアとなっている。