ヒョンデのオイット・タナクは、セントラル・ヨーロピアン・ラリーで異例の決断をすることになった。1年間まったく開発されたことがなかった旧スペックのヒョンデi20 N Rally1を駆るというギャンブルともいえる選択は結果的に正解となり、タナクは総合3位に入っている。
たしかに2025年仕様のターマック仕様のi20 N Rally1はデビュー戦となったラリー・イスラス・カナリアスでライバルたちに大きな遅れをとったことから、昨年のセントラル・ヨーロピアン・ラリーで優勝を飾った古いスペックのマシンの方がターマックでの性能が優れていると判断したためだったのだろう。
タナクはセントラル・ヨーロピアン・ラリーの最終日にエルフィン・エヴァンスに抜かれて3位に終わったが、それでもチームメイトたちより遥かに優れたパフォーマンスを発揮し、この古いスペックのマシンに頼るという大胆な戦略が正しかったことを証明することになった。
「自分たちにできることはすべてやり尽くしたと思うし、この結果には満足すべきかもしれない」とタナクは総括している。
タナクによれば、旧型マシンを使うという決断は、戦略的な奇策ではなく、むしろやむを得ない事情によるものだったという。
「正直に言えば、他の選択肢はなかったんだ。結局は25年仕様のマシンはテストですぐに問題が起きたため、古いマシンしか試すことができなかったんだ。この選択肢しかなかったんだよ」
さらにタナクは、11月初旬開催のラリー・ジャパンにも2024年仕様車で出場することを明らかにしている。
「テストの予定もないし、25年仕様でのターマック走行経験もまったくない。だから本当に選択の余地はなかったんだ」と、彼は語っている。
2025年スペックのi20 N Rally1でセントラル・ヨーロピアン・ラリーに出場したティエリー・ヌーヴィルは最終日のクラッシュでドライバーズ選手権のタイトルの可能性を完全に失うことになった。
彼はシーズンを通してトヨタに叶わなかったことを素直に認め、とくにターマック仕様のi20 N Rally1のパフォーマンスが足りていないと状況を冷静に評価した。
「我々はまだ必要な場所にいない。これは今に始まったことではない」とヌーヴィルは述べた。
「正直に言って、シーズンを通して苦戦が続いてきた。グラベルよりもターマックの方が苦戦した。昨年と今年を比べると、フィーリング、スピード、コントロールの量が、今年は足りていないんだ」
ヌーヴィルは今年の初めにアップデートされた新しいサスペンションをもつi20 N Rally1のセットアップを熟成するにはあまりにも時間がなかったと認め、それを修正しなければならないと語っている。
「我々は努力を怠ったわけではない。チームは懸命に取り組んでいるし、僕らも懸命に取り組んできた。しかし、トヨタに対抗するためにそれを修正しなければならないんだ」とヌーヴィルは語った。
「オイットが今回、古いマシンで速く走っているのを見てわかっただろう。1年間、開発されなかった昨年のマシンの方がフィーリングが良かったことは分かっている。安定して速く走れるようになるには、あのレベルに戻る必要があるんだ。僕らはそのためにも今回、2025年仕様のマシンでの走行距離を積まなければならなかった」