ERC2022/05/14

56歳モンゾン、ERCカナリアス勝利にむけてリード

(c)ERC/RedBull Content Pool

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 スペイン・チャンピオンに2度輝いた56歳のルイス・モンゾン(シュコダ・ファビアRally2エボ)が長年蓄積された地元の経験とノウハウを駆使して、ヨーロッパ・ラリー選手権第3戦のラリー・イスラス・カナリアスの初日をリードした。

 最後にラリー・イスラス・カナリアスを優勝したのは、15年前だ。それはとても大きな意味を持つ。なぜなら彼は、地元のヒーローだからだ。彼はラリー開催地のラス・パルマスで生まれ、彼の自宅はラリーのシェイクダウンステージに位置している。

 モンゾンはカナリアスでは3勝を誇りながらも、ここ数年勝てなかったのはカナリアスがERCとして開催されるようになったため、いつもERCの強豪に押され気味だったからだ。ここまで長かったが、ようやくヨーロッパ中の強豪を打ち破ってグラン・カナリア島に優勝トロフィーを持ち帰る絶好のチャンスを得たのである。

 
 モンゾンは金曜日の朝に行われたSS3サンタ・ルチアでベストタイムを奪って首位に立つや、SS4テヘダで最速タイムを叩き出し、4度のフランス・チャンピオンであるヨアン・ボナート(シトロエンC3 Rally2)に8.9秒のギャップを築く。

 しかし、午後のループになると新世代のドライバーたちの反撃が始まった。最初に仕掛けたのは、シモーネ・カンペデッリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)だ。チームMRFのセカンドドライバーであるカンペデッリは、今シーズンのスタートは不調だったが、SS5バルセキーロで最速タイムを叩き出して3位へと浮上してきた。「ようやく!」とカンペデリは安堵の表情を浮かべて叫んだ。ERCでは3年間マシンの故障が絶えなかったが、ようやく実を結んだかのように思えた。だが、彼は次のステージでガードレールに激突し、戦線離脱となった。

 モンゾンにとって、ライバルが1人減ったことになるが、気を抜くわけにはいかない。SS6サンタ・ルチアではスペインのエンリケ・クルス(フォード・フィエスタ Rally2)がベストタイム、開幕戦勝者であるスペインのニル・ソランス(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が2番手タイムで3位へと浮上してきた。モンゾンはここでも3番手タイム。

 ソランスは、金曜日の午前中に行われたステージで、気温がかなり低かったにもかかわらず、フロントタイヤが熱だれをおこしてグリップ不足に悩まされたが、「午後はセットアップも決まってきたので、リヤエンドが限界まで動いている。これならいける」と語り、この日の最終ステージ、SS7テヘダでついに最速タイムを記録してボナートを抜いて首位のモンゾンに8.4秒に迫ってこの日を終えることになった。

 しかし、ソランスに言わせれば、それは0.4秒の差だったはずだ。SS3サンタ・ルチアでは、木曜日のないとステージでベストタイムを奪って優勝争いが期待されたシモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRally2エボ)がアンダーステアで岩壁に衝突し、マシンを大破してステージを塞いだため、赤旗が出されたのだ。ソランスは不満げだった。

「SS3がキャンセルされた後、僕たちには非常に悪いノーショナルタイムを適用した。それはトップから8秒遅れのタイムだ。ステージを走ったドライバーのうちで最も遅いタイムが適用されるなんて馬鹿げているよ」

「もちろんまだマシンを快適に感じないことは確かだ。タイヤが正しい温度でうまくいくのは数キロメートルだ。でも、グリップ不足に悩まされた朝に比べればずっとよくなっている。この方向性を続けて、自分たちのドライビングスタイルに合わせてマシンを改良していく必要がある」

 ベテランのモンゾンと若手ソランスの対決の図式は、前戦のラリー・アソーレスでみせた地元ヒーローのリカルド・モウラとERCジュニアチャンピオンのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)の戦いを彷彿とさせる。モウラは、数十年にわたる地元の知識を生かしてリードしていたが、最終ステージでヤレーナが逆転で勝利を飾り、MRFタイヤに初のERC勝利をもたらした。

 ソランスが8.4秒差を最終日にどれだけ縮めるかが最終日のハイライトになるだろう。しかし、トップから20.3秒遅れて4位につけているヤレーナが優勝争いに加わることは厳しいかもしれない。

 アルミンド・アラウージョの欠場により事実上の選手権リーダーとなったヤレーナは、トップから20.3秒遅れて4位につけているが、朝のループではどうにか戦えたが、気温が上がった午後のループではタイムは精彩を欠いたものとなっている。それでも彼はタイヤの進化を認め、ポジティブに前を見つめている。「新しいMRFタイヤは素晴らしいパフォーマンスだ。トップカーよりペースは少し劣ったが、僕らはまだ表彰台のバトルを続けているし、パフォーマンスには満足しているよ」

 フランスのターマックのエース、ボナートは首位から12.1秒差、2位のソランスからは3.7秒遅れの3位につけており、ヤレーナに8.2秒差をつけている。コンスタントに速さを発揮したボナートだが、最終ステージでブレーキに問題を抱えており、麻苧の最終日に巻き返しを期している。「ブレーキが熱すぎる! 熱くてブレーキペダルが踏めないほどだ! いや、これは冗談だ。今日は僕の誕生日なんだけど、モンソンのタイムを見ると、僕の将来はかなりいいんじゃないかと思うんだ。彼はすごく速いんだけど、明日は長いから、期待したいよ」

 モンゾンの実力は確かだ。このラリーでの彼が飾った3勝のうち1つは、同じチームの同じマシンを駆るWRCチャンピオンのユハ・カンクネンを破ってのものだった。56歳という年齢からくる疲労との戦いでもあるだろうが、モンゾンは地元の熱狂が自身を後押ししてくれていると感じている。

「プレッシャーを感じている」と、モンゾンは認めた。「しかし、家族と一緒にホームでレースをしているので、それが救いとなっている。自分の走りにとても満足しているし、楽しいから大丈夫だよ」

 最終日はラリー最長となる27.42kmのモヤ-バリェセコ・ステージから始まる6SS/97.52kmの一日となる。はたしてモンゾンが逃げ切ってカナリアスの4つめの勝利トロフィーを獲得するだろうか!