WRC2025/04/22

WoRDAとFIAが合意、ステージのコメント再開へ

(c)RedBull Content Pool

 世界ラリー選手権のドライバーとFIAは、いわゆる「不適切発言問題」で緊張状態にあったが、両者が正式に合意に達したことから、ドライバーたちの「沈黙による抗議活動」は終わりを迎えることになりそうだ。

 前戦のサファリ・ラリー・ケニアではドライバーたちはステージエンドでのコメントを拒否している。これはFIAが不適切発言に対して極端に厳しい姿勢を取ったことに対し、新たにWRCに参戦するドライバーとコドライバーで結成されたWoRDA(世界ラリードライバー協会)による抗議行動だった。

 WoRDAは2月のラリー・スウェーデンの後に設立、ラリー・スウェーデンにおいて、ヒョンデのアドリアン・フールモーがステージ後のインタビューの中で不適切な言葉を発したとして1万ユーロの罰金を科されたことがきっかけとなっている。

 WoRDAは、感情が高ぶった瞬間にとっさに出た発言によって罰せられるべきではないと強調し、FIAおよびモハメド・ビン・スレイエム会長との話し合いを求めていたが、サファリ・ラリーの前までに返答は得られなかった。

 サファリ・ラリー後、WoRDAとFIAは話し合いを行うことで合意したと報じられたが、その会合の実現にはしばらく時間がかかったようだ。しかし、WoRDAとFIAロードスポーツ・ディレクターのエミリア・アベルとの前向きな会談が行われたことによって、今後のペナルティ適用方法について最終的に双方が納得する解決策を合意することになったという。

 この合意内容については、WoRDAのスポークスマンであり、事実上の代表を務めるジュリアン・イングラシアによって明らかにされている。

「ここに至るまでの道のりは長かったが、我々のスポーツにとっては大きな前進です。解決策が見つかって大変嬉しく思います」とイングラシアは語っている。セバスチャン・オジエのコドライバーとして8度のワールドチャンピオンに輝いた彼は、サファリ・ラリーのあとも粘り強く、FIAとの話し合いの実現を目指してきた。

 今回の合意の重要なポイントは、WRCが特異な環境であることがFIAに認められたことだ。ドライバーたちはラリーの週末の間におよそ20回のステージエンド・インタビューにおいてコメントを求められるが、その瞬間の本音や感情を見聞きすることを期待しているのはファンのみならず、WRCの発展にとっても意味のあることだ。

「私たちの競技特有の側面を考慮するために調整が必要でしたが、FIAとWoRDAの共通の目標が達成されました。これは、FIA国際スポーツコード(FIA国際スポーツコード)の付録Bを変更するものではありません。付録Bに定められた規則に可能な限り忠実に従いつつ、ラリーファンが期待する感情とリアリティを十分に表現できるようにすることです。この合意では、人を悪意をもって罵る言葉のみが対象となっています。WoRDAは、付録Bが定める暴力や重大な違反行為は私たちのスポーツにはあってはならないという点に同意しています」とイングラシアは付け加えている。

 今後、ステージ終了直後のインタビューの中で発せられた不適切発言については、誰かを侮辱したり攻撃的な意図がない限り罰則の対象とはならない。これらのインタビューは、競技直後の感情が高ぶった状態で行われているために、ある程度の柔軟性が必要だとの判断が下されたことになる。

 同様の柔軟な対応は、チーム内の無線コミュニケーション、スペシャルステージやロードセクション中のドライバーとコドライバーのやり取りにも適用される。これらはWRCの中継中にライブで放送される可能性もある。

 ただし、よりフォーマルな形式のインタビューの場では、ドライバーたちは言葉選びに注意が必要となる。たとえば、サービス前のメディア・ゾーンといったコントロール・ゾーンでの記者とのインタビューでは、より厳しい基準が適用される。

 また、FIA公式記者会見などの場でも、不適切発言は厳禁とされており、ゼロ・トレランス・ポリシー(ゼロ容認の方針)が維持され、こうしたコントロール・ゾーンでルール違反をした場合、スチュワードから高額な罰金と注意を受けることになる。

 今回のWoRDAとFIAの合意により、今週行われるWRC初開催イベントのラリー・イスラス・カナリアスでは、ドライバーたちは通常通りステージエンドでのインタビューに応じることになると見られている。