WRC2020/10/11

ソルド首位堅持、オジエとヌーヴィル僅差2位争い

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 2020年世界ラリー選手権(WRC)第6戦ラリー・イタリア・サルディニアは2日目の日程を終えて、ヒュンダイ・モータースポーツのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)が首位を堅持。その後方ではセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)とティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)の激しい2位争いが展開された。

 ラリー2日目、土曜日は、アルゲーロ東部のモンテ・アクート・エリアの伝統的なステージで争われる。WRCのスペクタクルなアクションを象徴するようなミッキーズ・ジャンプで有名なモンテ・レルノ(22.08km)とコイルーナ〜ローレ(15.00km)の2ステージを連続して2回ループした後、アルゲーロのサービスを経て、前日と同じくセーディニ〜カステルサルド(14.72 km)、テルグ〜オジーロ(12.81km)の2ステージ、計6SS/101.69kmのスケジュールだ。

 天候は晴れ。朝7時の気温は13度で日中は23度まで上昇するという予報。出走順は前日の順位のリバースで3分間隔でのスタートとなる。先頭は金曜日にコースオフしてリタイアとなった勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)。SS2でエンジントラブルによりマシンを止めたエサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)は再出走を諦めている。1.勝田、2.カッレ・ロヴァンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)、3.オイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)、4.ピエール-ルイ・ルーベ(ヒュンダイi20クーペWRC)、5.ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)、6.エルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)、7.オジエ、8.ヌーヴィル、9.テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)スニネン、10.ソルドのオーダーだ。タイヤ選択はほぼ全員がミディアム5本をチョイスするなか、ヌーヴィルとフォードMスポーツの2台がミディアム6本を選んでおり、この戦略の違いがトップグループのバトルにどう影響するのか注目された。

 土曜日の最初のステージはモンテ・レルノの1回目。ラリーカーが飛び上がった後、まるで奈落に落ちるような強烈なジャンプアクションがあるミッキーズジャンプでも知られる。今年のコース設定ではスタートから500mほどの地点にレイアウトされていたが、無観客の開催のためジャンプへの歓声は沸かない。コースは全体的にワイドだが所々にテクニカルな要素を含んでいる。

 ここでベストタイムを刻んだのはオジエ。「太陽の位置が低く、(視界を遮って)難しい所もあった」というエヴァンスがセカンドベスト。2本のスペアタイヤを積むヌーヴィルが3番手タイムにとどまり、オジエに3位のポジションを譲ることに。ソルドはオジエよりも5秒遅い4番手タイムだが、「道路の中央に牛がいて、少し怖かった! 太陽のせいでもタイムを少し失ったが、オーケーだ」と22.6秒のリードをキープしている。

 SS8のコイルーナ〜ローレもサルディニアのクラシック・ステージだ。路面は概ねサンディで、スタート付近の小さな湖を通過した後、ハイスピードに転じ、ルースな岩石の多い並木道をワンディングしながら抜けていく。2.68km地点にあるリノのジャンプの後、通常のクレストの多い柔らか目なコースに入り、ブドゥソのモトクロス・トラックをモディファイしたコースをループしてからヌラーゲ・ロエルのヘアピンを通過してフィニッシュする。
 
 このステージではスタートから8.8km地点でロヴァンペラがコースオフ。クルーに怪我はなかったが、ヤリスはリヤタイヤがもぎ取られた状況で、リタイアを余儀なくされる。

 ベストタイムはソルド。ハンドブレーキに問題を抱えるスニネンを抜いたオジエが2位へとポジションアップ、ソルドのアドバンテージは36.5秒になった。前ステージでオジエにポジションを譲ったとはいえ、ヌーヴィルが猛然とアタックを開始しており、1.3秒後方まで迫ってきた。前日まで首位争いをしてきたスニネンはここで4位まで後退。フィエスタの右リヤに軽いダメージを受けており、「ジャンクションをハンドブレーキを使って回ろうとしたが、リバースにする必要があった」と無念を隠せない。センターデフに問題を抱えており、ハンドブレーキがフロントホイールをロックさせるというやっかいな症状だ。

 ソルドを追い、ヌーヴィルに追われるオジエは、2回目のモンテ・レルノで意地のベストタイム。ヌーヴィルとの差を2.9秒に広げ、ソルドとの差も31.3秒とする。だがヌーヴィルは食い下がる。スペアタイヤを2本積んでいるハンディをモノともせずに2回目のコイルーナ〜ローレを激走。オジエよりも5.9秒速いベストタイムを叩き出し2位浮上を果たし、ふたたびヒュンダイが1-2態勢を築く。オジエは「良くない走りだった。エンジンをストールさせてしまった。2〜3秒ロスしていると思う」と苦渋の表情だ。

 2回のループを終えた時点での順位は、首位ソルド、31.6秒差に2位にヌーヴィル、その3秒後方にオジエがつける。19.6秒差の4位にはSS10でスニネンをかわしたエヴァンス。5位スニネンの後方5.9秒の6位にタナク、7位にルーベという状況だ。
 
 オジエを抜き返すことに成功したヌーヴィルは、前日にマシンバランスを悪化させたはずのスペア2本をふたたび選択したギャンブルについて、「僕らのマシンはトヨタよりタイヤの摩耗がほんの少し大きい。(6本という選択は)ややセーフティな選択をしたのはそのためだ。最初のループでは苦しかったが、2回目ではプッシュもできたし、選択はうまくいったようだ」と説明し、うれしそうに笑顔をみせている。

 アルゲーロのサービスを挟んで午後は前日に走ったセーディニ〜カステルサルド(14.72 km)、テルグ〜オジーロ(12.81km)を再走する。

 SS11、セーディニ〜カステルサルドのルートは、路面変化が多く、リズムが掴み難いコースで、前日の走行でも多くのドライバーが苦労していたが、その罠に勝田が嵌まってしまった。彼のヤリスはブレーキを失い、最後の数kmは守りの走りに徹しなければならなかったが、何とか最後まで走りきった。

 秒差の2位争いを展開するヌーヴィルとオジエのバトルは熱を帯びてきた。最後のループにむけて、オジエはミディアム3本とハード2本を組合せ、ヌーヴィルはミディアム5本をチョイス、戦略は分かれることになった。オジエは「僕たちのタイヤ選択は彼とはわずかに違っているが、悪いステージではなかった」とベストタイムを刻む。ヌーヴィルは序盤のスプリットタイムではオジエを凌ぐものの、終盤タイムを落としオジエよりも1.6秒遅いセカンドベストに留まる。「上り坂でホイールスピンしすぎてしまった。僕たちはタイヤ戦略が違っているが、どれがベストなのか見当がつかない」と話す。

 首位を走るソルドもヌーヴィル同様にオールミディアムを選択しており、オジエよりも6.2秒遅い4番手タイム。「僕のタイヤは少しソフト過ぎて、マシンのバランスは満足できるものではなかった。しかし、仕方がない」と2位以下とのタイム差を測るように語った。

 この日最後のSS12はテグル〜オジーロ。1.4秒差のヌーヴィルを追い掛けるオジエは渾身の走りでベストタイムを刻み、逆転2位浮上を果たす。タイトコーナー進入でワイドになりベールを引っ掛けたヌーヴィルは、「一生懸命走ったが、彼らは僕たちよりも少しスピードがあるようだ。橋でブレーキをかけるのが遅れて、たぶん2秒ほどロスしてしまった」と悔やむ。フロントタイヤの摩耗は大きく、ステージ終盤でタイヤ選択の差が出た恰好だ。それでも両者のタイム差は1.5秒に過ぎない。オジエは「明日、彼(ヌーヴィル)に勝つことは重要だ!」と語った。

 首位を守るソルドは、またしてもミスのない完璧な走りを披露した。「僕のタイヤは完全に摩耗してしまった。ステージ終盤になるとアンダーステアになるのを感じた」と言いながらもこのステージをセカンドベストタイムであがり、2位オジエに対して27.4秒のギャップを保って最終日に臨むことになった。

 ヌーヴィルの後方29.5秒差の4位にはエヴァンスがつける。午前のループではハンドブレーキのトラブルがあり、ヘアピンコーナーの連続するコースで苦戦を強いられたスニネンは5位。エヴァンスとのタイム差は8.5秒だ。

 ラリー最終日はカーラ・フルミーニ(14.06km)とサッサリ〜アルジェンティエラ(6.89km)の2つのステージをサービスなしに2回ループする6SS/41.90kmのスケジュールが組まれている。2回目のサッサリ〜アルジェンティエラがライブTVのパワーステージとなる。