WRC2022/12/27

【TOP10-第7位】エサペッカ・ラッピ

「風が吹くままに」

(c)Toyota

Esapekka Lappi
Toyota GAZOO Racing WRT


シトロエン、Mスポーツで苦難のシーズンをすごしたあと、4年ぶりに古巣トヨタに帰ってきたエサペッカ・ラッピは、キャリア新章をスタートすることを楽しんでいるように見えた。2017年にトヨタでWRカーデビュー4戦目で初優勝を果たしたあと勝利からは遠ざかっていたが、初登場のスウェーデンの初日をリードし、センセーショナルな復活勝利を奪うかにも見えた。

しかし、トップカテゴリーのマシンを彼がドライブしたのは2020年末にMスポーツ・フォードを離れて以来、わずか1回だったため、決定的なスピードでトップを守りきることはできず、カッレ・ロヴァンペラとオイット・タナクに抜かれて3位でシーズンをスタートしている。

ラッピは今季、セバスチャン・オジエとGRヤリスRally1をシェアしており、トップレベルのペースを取り戻すまで時間もかかった。トリッキーなターマックで知られるクロアチアではオープニングステージで岩に衝突、残念ながら戦列を早期に離れることになった。しかし、この痛恨のミスのあと、ラッピがみせたリカバリーは素晴らしかった。リスタートした土曜日以降、4つのステージで奪ったベストタイムが彼の才能を示すものだった。

猛暑のサルディニアも2つのステージでトップタイム奪って初日をリードするも、土曜日朝、左側に隠れていた岩に激しくクラッシュし、コースアウトとなった。

ラッピには速さもあったが、不安定さと不運もあった。エストニア以降の高速ラウンドでは久々の勝利を狙いたいと意気込んだが、エストニアはウォームアップ最速をみせたが、ブレーキのトラブルとパンクで7位に終わっている。フィンランドでも、自ら跳ね上げた石でフロントガラスを壊して優勝争いから脱落、最終日もゴール目前で横転、フロントガラスを失い、ラジエータにダメージを負い、ボロボロの姿にながらも必死に3位を守り切った。

ベルギーでも3位のポディウムを達成、ギリシャでもチーム最上位である2位につけていたが燃料系のトラブルに見舞われてリタイアとなり、今季4度目の表彰台はならなかった。

ラッピにとってギリシャがシーズン最後の参戦プログラムになることは6月ごろにはわかっていたようだし、新シーズンもトヨタに残ることに期待を寄せていたはずだった。だが、タナクがヒョンデを離脱したことで、ラッピの運命も大きく動く。

ラッピがふたたびトヨタを捨て、ヒョンデで走る未来を選んだことは意外な決断にも見えるが、パートタイムでチームの選手権を優先する人生より、フルシーズンへ挑みたいというハングリー精神が上回ったということのだろう。

夏のフィンランドでロヴァンペラが優勝を飾ったときに、ラッピがつぶやいた言葉が思い出される。「カッレは無敵になり始めた。僕も昔は速かったが、今はもう自分が速いとは感じない。完璧な走りができたと感じたときでも、彼らは常に僕より少し速かった」

その言葉は、進化を続ける若者へのただ純粋な感嘆であるようにも見えたが、あるいはもっと異なる気持もあったのだろうか。トヨタはロヴァンペラのためのチームになりつつある。まるで風のように、ラッピは一つの場所にとどまらないで新しい場所へと飛び立った。

■エサペッカ・ラッピ
生年月日:1991年1月17日(31歳)
選手権ランキング:9位
獲得ポイント:58点
ベストリザルト:3位
優勝回数:0回
2位の回数:0回
3位の回数:3回
表彰台回数:3回
出場回数:7回
ベストタイム回数:14回
リードしたステージの数:3SS
リタイア数:0回
リスタートの回数:3回
パワーステージ勝利数:0回
パワーステージ獲得ポイント:5点