WRC2016/03/20

ガードレールによる深刻な事故を防ぐ画期的一歩

(c)FIA Institute

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 FIAインスティテュートは、イギリス人コドライバーのギャレス・ロバーツが命を落とし、ロバート・クビサが重傷を負うことになったガードレールでの深刻なクラッシュ事故を防ぐための取り組みにおいて、多くの命を救う可能性を秘めた画期的な一歩を踏み出した。

 ロバーツは、2012年のタルガ・フロリオでクレイグ・ブリーンに同乗していたプジョー207 S2000でクラッシュした時に死亡し、クビサはその一年後、ロンデ・ディ・アンドラで彼がドライブするシュコダ・ファビアS2000がガードレールの開口端に衝突したことで、彼の右腕に大きな損傷を負うことになった。

 FIAインスティテュートはガードレールの開口端の周りに装着するデバイスをドイツでテスト、これによってロバーツやクビサが関わったアクシデントの特徴となったガードレールがコクピットに貫通することを防ぐことに成功している。

 FIAインスティテュートの代表的な機関として一連の取り組みを行っているグローバル・インスティテュート・フォー・モータースポーツ・セーフティ(GIMSS)は、ラリー仕様に仕上げたフォルクスワーゲン・ゴルフを無人で時速110キロでガードレールに猛スピードで激突させるテストを行った時のデータを公開している。

 今回テストされたデバイスは、直径70センチで高さが1メートルの鋼鉄製の円筒でなかには砂が詰まっており、その重量は550kgだ。剥き出しになったガードレールの端をこの鋼製円筒で保護することで、衝突時には時速36キロまでクルマを減速させることができたという。そして最も重要なのは、ガードレールが上向きに屈折することで、バルクヘッドを突き破って室内へ貫通することが避けられたことにある。

 グローバル・インスティテュートのリサーチ・コンサルタント、アンディー・メラーは次のように語っている。

「そもそもクルマと保護されていないガードレールの端には、あまりにも相容れないものが存在する。この研究の焦点となるのは、露出されたガードレールの端がクルマに貫通することがないように十分な早さで曲がるようにするためのメカニズムを設計することにあった」

 メラーによれば、このデバイスはさらなる改良を続けていく必要があるものの、価格も100ユーロで販売できる目処が立てば、これらの円筒が世界ラリー選手権のイベントに導入され、そしてさらに国内レベルのラリーにも採用されて多くの危険な事故がなくなることが期待されている。