WRC2016/04/25

パッドン、緊迫バトルを制してWRC初優勝

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 世界ラリー選手権第4戦ラリー・アルゼンチンは、ヒュンダイ・モータースポーツNのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)がわずか2.6秒のリードで迎えた最終ステージで圧巻のベストタイムでセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)を突き放すことに成功、見事、WRC初優勝を飾ることになった。

 アルゼンチンの最終日は、エル・コンドル、ミナ・クラヴェーロ〜ジュリオ・セザレの2ステージを走ったあと、2回目のエル・コンドルがパワーステージとなる3SS/55.28kmの一日だ。二日目を終えて、すでにパッドンはオジエに対して29.6秒をリードしており、最終日のスタート前にはオジエも「無理して優勝を狙うタイム差ではないし、これらの難しいステージでは限界までプッシュするのはリスクが高い」と語り、2位キープを宣言していた。

 しかし、最終日のオープニングステージとなる16.32kmのエル・コンドルには深い霧が立ちこめ、まさしく何が起きてもおかしくない状況となっていた。結果的には一番手のポジションで走ったオット・タナク(フォード・フィエスタRS WRC)がベストタイムで走りきることになったが、彼でさえ「ボンネットしか見えなかった」と語ったほどに視界は最悪。彼の後方でスタートしたマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)も6.3km地点でコーナーに気づかずオフ、幸い観客によってコースに戻されるなど、深く立ちこめた霧のなかで波乱のドラマが起きようとしていた。

 トリッキーでコンディションとなったこのステージで最初の7kmの地点でパッドンはオジエからわずか0.5秒遅れという順調なペースで走行していたものの、突然、ヘアピンでエンジンをストールするトラブルに見舞われてしまう。さらにこのトラブルはこれで終わりではなく、またもヘアピンで発生したため、彼は5秒あまりをロス、オジエから7.4秒遅れの4番手タイムと出遅れ、リードは22.4秒となってしまった。

 ステージ後、パッドンはチームとやりとりしながら修理を行ったものの、次のミナ・クラヴェーロをスタートするものの最初の5.9km地点におかれたスプリットですでに8.4秒をロス、22.64kmのステージを走りきった時点ではその遅れは19.8秒へと広がり、彼のリードは最終ステージのみを残してわずか2.6秒となってしまった。

 そして、霧が晴れたエル・コンドルの最終ステージ、雨は降らず、路面はドライコンディション。しかし、狭くハイスピードなステージにはかき出された無数の石が転がっており、前日のクラッシュでリスタートしたヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)が8.1km地点でパンクした左フロントタイヤを交換するためにストップするなど、無理して攻めれば何が起きてもおかしくない状況となっていた。

 この路面を見たオジエはマキシマムでのアタックを止めてクリーンに走ってポイントを獲得することを優先。前ステージでの遅れをとり戻すために限界ぎりぎりの走りでステージを走りきったパッドンが、オジエに11.7秒差をつける素晴らしいベストタイムを奪って逃げ切ることに成功、初優勝を飾ることになった。

 パッドンはパワーステージのボーナスポイント3点を獲得して、ドライバーズ選手権でも2位に浮上している。

 また、ヒュンダイにとっては今季から投入された5ドアの新しいi20 WRCによる初の勝利となり、VWによる連続勝利記録を阻むことになった。

 残された表彰台をめぐるバトルも最終ステージまでどうなるかわからないものとなった。二日目を終えて3位につけたのはアンドレアス・ミケルセン(VWポロR WRC)。だが、彼の17.7秒後方につけていたダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 WRC)が2度の2番手タイムで激しく迫ってきたが、どうにかミケルセンが11.9秒差で逃げ切ることに成功、開幕戦につづく今季2度目の表彰台に立っている。
 
 また、シフトダウンの問題や最初のステージでのコースオフはあったものの、オストベルグがどうにか5位を守り切ってフィニッシュしている。

 燃圧センサーの接続ミスで初日にエンジンが止まる症状で苦戦したティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 WRC)も、最終日にヘニング・ソルベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)と地元のマルコス・リガト(シトロエンDS3 WRC)を抜いて6位まで順位を戻してフィニッシュ。Mスポーツから完走を厳命されていたエリック・カミリー(フォード・フィエスタRS WRC)も初めてラリー2を使わない完走を果たしている。