WRC2016/07/31

ミーク独走、フィンランド初優勝に完全王手

(c)Citroen

(c)Michelin

(c)DMACK

 世界ラリー選手権(WRC)第8戦ラリー・フィンランドは、アブダビ・トタル・ワールドラリーチームのクリス・ミーク(シトロエンDS3 WRC)がこの日もノーミスの走りで首位をキープ、フォルクスワーゲン・モータースポーツのヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)に41秒という大差をつけることに成功している。

 ラリー・フィンランドのDay2は、数々の歴史と伝説を生んできたオウニンポウヤのステージをふくむ6SS/150.48kmというラリー最長の一日だ。オープニングステージとして行われるオウニンポウヤは33kmのフルスケールながらこれまでとは逆方向でステージとしてドライバーを待ち受ける。

 なかでも昨年、平均速度132.18km/hというオウニンポウヤの最速記録を打ち立てたラトバラにとっては得意中の得意のステージだ。ミークに初日18.1秒のリードを許しただけに、ここでどれだけタイムを奪い返すか注目されたものの、いつもより一時間早く起きてこのステージのビデオを観て感覚を研ぎ澄ませたというミークがベストタイムを奪取、ラトバラをなんと13.5秒を引き離し、その差を31.5秒へと広げてみせた。

 勝負を賭けた自信のステージで痛烈な一撃を食らうことになったラトバラだが、次の高速ステージのパイヤラーとピーラヤコスキでも路面のルースグラベルにてこずって続けざまにミークの先行を許し、朝のループを終えて36.4秒差まで遅れることになった。

 予想以上に路面のグラベルがあった朝のステージを終えて、ラトバラは午後のループでの逆襲に期待するも、またも彼はオウニンポウヤでミークの凄まじい速さに驚くことになった。ミークはこのステージで朝のタイムを10秒近く上回り、とうとうラトバラを42.2秒差の彼方へと突き放すことに成功する。

 ミークはこのあともパイヤラーのステージでこの日4度目のベストタイムを奪い、ラトバラに41秒差をつけてユバスキラのサービスへと戻ってきた。ラリー・フィンランドでの初優勝に王手をかけた彼は、これまでの人生のなかで特別な一日だったと振り返った。

「悪くないね。今日は特別な日になった。昨日は僕にとってラリーカーをドライブしてベストな一日になったが、今日はそれを上回ったよ。41秒というのは安全圏だ。そのままゴールしたいよ」

 いっぽう、二人の後方では3位のポディウムをめぐって、めまぐるしい攻防戦が繰り広げられることになった。金曜日を終えて3位のティエリー・ヌーヴィルと4位のアンドレアス・ミケルセンの差はわずか1.1秒。この二人による戦いが土曜日も続くかに見えたが、ルースグラベルの掃除に手間取る二人に後方から予想外のドライバーたちが遅いかかることになった。

 ミケルセンにとって不運だったのは、この日のオープニングステージでブレーキラインを壊したセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)が修理に手間取ってSS14のスタートTCに遅れた影響でコースオープナーを務めることになったことだ。ミケルセンはここでいきなりトリッキーなコンディションにリズムを崩してスタートしてすぐのところでコースオフ、22秒を失って7 位までポジションを落とすことになった。また、彼のライバルと目されたヌーヴィルも朝のループではフィーリングに苦しみ、二つのステージを終えて6位まで後退することになった。

 二人に代わって後方からペースを上げてきた一人はクレイグ・ブリーン(シトロエンDS 3 WRC)だ。彼はオープニングステージで4番手タイムで4位に浮上、SS14パイヤラーではエリック・カミリー(フォード・フィエスタRS WRC)のクラッシュによる影響で攻めることができなかったものの、SS13と同じ4番手タイムがノーショナルタイムとして与えられて3位に浮上した。好ポジションに恵まれているとはいえ、彼は以降も連続して素晴らしいタイムを叩き出し、午後のループでもライバルたちに付け入る隙を与えずに3位をキープすることになった。

 そして、もう一人驚くペースで3位争いに殴り込みをかけてきたのが、前日にサスペンショントラブルやパンクなど相次ぐ問題で10位まで順位を落としていたオット・タナク(フォード・フィエスタRS WRC)だった。彼はSS14のトップタイムで5位まで浮上するも、ふたたびSS15で左リヤのパンクに見舞われて16秒あまりをロスすることになったが、それ以降もペースはまったく衰えない。

 タナクにとって誤算だったのはデイサービスで雨が降り始める気配があったことからハードだけではなく、ソフトをミックスして装着したことだった。彼は思った以上にドライコンディションとなったステージに選択ミスを覚悟したものの、SS17でミケルセンを抜いて7位に浮上、SS18ではミークのベストタイムからわずか1.1秒遅れのタイムで一気にオストベルグ、パッドン、ヌーヴィルを抜いて4位まで躍進。3位のブリーンに11.5秒差まで迫ることになった。

 ヌーヴィルとチームメイトのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)はともに表彰台を争うはずが、ともにルースな路面でのハンドリングに苦しんで順位を落とすことになったが、午後のループではヒュンダイ最上位のポジションをめぐって0.1秒差のタイムを争う激しいバトルを繰り広げることになった。ヌーヴィルは最終ステージの2番手タイムで5位をものにしたが、パッドンはわずか2.7秒差の6位につけている。

 また、パッドンのわずか2.4秒後方には、SS16サーラーティでの初めてのベストタイムを奪うなどやっと高速ステージでリズムを掴んだマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)が迫っている。さらにはその18秒後方には、3位の表彰台を狙うはずが、フラストレーションがたまる一日になったミケルセンも控えており、最終日の展開はまったく読めない状況となっている。

 明日の日曜日は6.83kmのレンパーのステージ、10.15kmのオイッティラを2回走行する4SS/33.96kmという超スプリントの最終日となる。はたしてミークが恩師であるコリン・マクレーでもなしえなかった英国出身ドライバーの初優勝をフィンランドで奪うことができるか、注目のオープニングステージは現地7時(日本時間13時)にスタートする。