WRC2016/04/24

ラトバラ横転、パッドンが30秒リードで最終日に

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 世界ラリー選手権第4戦ラリー・アルゼンチンのDAY2は、ラリーリーダーのヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)が終盤で3回転クラッシュに見舞われ、ヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)が首位に立つことになった。パッドンはセバスチャン・オジエ(VWポロ R WRC)に29.8秒差をつけて明日の最終日に臨む。

 DAY2は北西部のプニージャ渓谷のヴィージャ・ブストス〜タンティ、ロス・ヒガンティス〜カンテラ・エル・コンドル、ボカ・デル・アロヨ〜バホ・デル・プンゴの3ステージをカルロスパスのサービスを挟んで2回ループする6SS/157.82kmの一日となる。

 よく晴れ上がり、さらにドライコンディションとなったオープニングステージでは、初日を3位で終えたパッドンがいきなりベストタイムで発進、路面掃除に苦しむセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)を抜いて2位に浮上、ラトバラに9.3秒差に迫ることとなった。

 パッドンはロス・ヒガンティスのステージでも連続してベストタイムを奪い、ラトバラに6.7秒差まで迫ることに成功する。しかし、彼は次のSS13ボッカイ・デル・アロヨのスローなセクションでリヤを滑らせてしまってタイムをロス、トップタイムを奪ったラトバラが13.3秒リードして朝のループを終えることになった。

 3位につけるオジエはこのステージでも10秒あまりも失い、すでにラトバラとは45.6秒もの遅れとなってしまった。彼は「いいループだったが、夢を見ることを止めなければならない。これが現実だ」とため息をつき、優勝をめざした追撃を断念せざるを得ないと悟った。

 朝のループを終えて、これで勝負はラトバラとパッドンの対決に絞られた。この日初のベストタイムを奪ったラトバラは「今日はセーフティにやっている。このままそれを続けるつもりだ」とメディアゾーンで語っていたが、彼の走行を追い掛けたヘリコプターの映像は17km地点でオフしてあわやバンクにヒットしそうになったシーンを映し出しており、朝のループで思ってもみない速さをみせるパッドンからまさしく限界の走りで逃げ切ろうという決意にも見えた。

 いっぽうのパッドンは、ニュージーランドのステージに似ていたことが朝のループの成功につながったと弾むような声で語った。「最初の2つのステージはニュージーランドに似ているんだ。僕らはあのようなステージが本当に大好きなんだ。なぜならとても速く、そして多くの石が転がっている。スピードを緩めないようにそれらをかわす必要があるんだ!」

 午後のループにむけて二人のタイヤ戦略は分かれた。VW勢はこれまでと同様に4本ともソフトをチョイスしたものの、気温が26度まで上がることが予測されるため、パッドンはフロントがハード、リヤにソフトを組み合わせる。だが、この作戦はマシンバランスを悪化させ、彼はハンドリングに苦しむことになってしまった。パッドンはSS13ヴィージャ・ブストスの最初のスプリットこそ最速で駆け抜けたものの、終盤でタイムを落として4番手タイム、連続してベストタイムを奪ったラトバラからは14.5秒もの遅れとなってしまった。

 このままラトバラがペースを上げて、さらに引き離すかに見えたが、次のステージで大きな波乱が待っていた。ロス・ヒガンティスの21km地点のハイスピードコーナーであろうことかラトバラがコースオフ、二人にケガはなかったものの3回転したマシンは大きく壊れ、彼はここでリタイアとなってしまった。

 これでパッドンがラリーリーダーに浮上、彼は最終ステージではクリーンな走りで4番手のタイムでまとめてフィニッシュ、オジエに対して29.8秒差をつけて明日の最終日には初優勝を賭けて臨むことになった。

「明日はまだ長い道のりとタフなステージが残されている。ワールドチャンピオンに対して30秒というのは決して大差ではない。セブが速いことは知っているからね」とパッドンはステージエンドで語った。

 二日目を終えて3位につけるのは、堅実なペースで大きなミスなく走ってきたアンドレアス・ミケルセン(VWポロR WRC)。彼はこの日の最終ステージでベストタイムを奪い、オジエに14.5秒差に迫っている。

 アクセルの故障で首位争いから後退したダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 WRC)は、SS11の3番手タイムでミケルセンの12.2秒後方まで迫ったものの、午後のループでペースを上げたミケルセンに追いつけず、17.7秒差の4位となっている。

 5位はMスポーツ・ワールドラリーチームのマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)。初日からシフトダウンに問題を抱えていたことを明かした彼は、この日も終日原因不明のこのトラブルに苛立つことになってしまった。

 ヘニング・ソルベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)は朝からパワーステアリングの壊れたマシンで奮戦、最終ステージで地元のマルコス・リガト(シトロエンDS3 WRC)に抜かれて7位に後退することになった。また、燃圧センサーの接続ミスで初日10位に終わったティエリー・ヌーヴィルはSS13では3番手タイムなどやっとペースを掴んで、ヘニングと同タイムの7位で二日目を終えることになった。

 チームからの絶対完走の指令のなか、エリック・カミリー(フォード・フィエスタRS WRC)もミスのない走りを続けており、9位でこの日を終えている。

 明日の最終日は16.32kmのエル・コンドル、22.64kmのミナ・クラベーロ〜ジュリオ・セザレの2ステージを走ったあと、2回目のエル・コンドルがパワーステージとなる、わずか3SS/55.28kmの一日だ。しかし、ヴィージャ・カルロス・パスは今夜から雨となると天気予報は伝えており、山岳地帯のステージは雨と霧のトリッキーなコンディションになることが予想されている。初優勝に挑むパッドンにとって最後の試練となりそうだ。