ERC2016/06/26

ルフェーブル追撃も、ロイクス11度目イープル優勝

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第5戦イープル・ラリーの最終日は、6ステージ連続してトップタイムを奪い、31.8秒差というはるか後方から5.4秒差まで猛追したステファン・ルフェーブル(シトロエンDS3 R5)のスピードに注目が集まったが、彼はギヤボックス・トラブルでリタイアとなり、見事、地元のフレディ・ロイクス(シュコダ・ファビアR5)が11度目の優勝を飾ることになった。

 朝が早く日没も夜の10時近いという長い一日を使って行われるイープル・ラリー、タフな最終日には例年、首位争い波乱が起こっており、最後のゴールまでなにが起きるかわからないとされているが、いきなりオープニングステージにドラマが待っていた。

 6.9秒をリードして最終日を迎えたブライアン・ブフィエ(シトロエンDS3 R5)のペースが上がらず、8秒近くを失った彼は、0.9秒差ながらいきなりロイクスに首位を譲ってしまう。さらにブフィエは次のSS9でもリヤデフへの違和感を訴えて5秒をロス、朝の2つのステージを終えて、ロイクスに6.7秒のリードを許すことになってしまった。

 首位に立ったロイクスは11度目の優勝に近づくことになったようにも見えたが、SS9を走り終えた彼は、「プッシュしてみたが、僕にとってはこれが限界だ。ルフェーブルのタイムは信じられないよ!」と悲鳴に近い声を上げる。ギヤボックス・オイルが高温になる問題などから31.8秒という後方で最終日をスタートしたルフェーブルが朝から連続ベストタイムで猛追を開始、わずか2つのステージを走っただけで17.7秒差まで迫ってきたからだ。

 ロイクスの懸念したとおり、ルフェーブルはその後のペースを緩めない。SS10からSS12までベストタイムを連取した彼は、ロイクスとの差を11.1秒にまで縮めて2位に浮上してサービスへと帰ってきた。

 いっぽう、朝のループでペースが上がらなかったブフィエにはさらなる不運が待っており、SS9後のサービスで修理を行ったあと彼のペースは戻り、ロイクスの8.9秒後方で逆転のチャンスを伺っていたものの、SS11で今度はギヤシフトの問題に見舞われ、ついにSS12でマシンを止めることになった。

 これで優勝争いはロイクスとルフェーブルの完全な一気討ちとなった。前半の5ステージで20秒を縮めたルフェーブルは、後半のループの最初のステージとなるSS13でリヤのダンパーに違和感を感じながらも、この日6つめのベストタイムで奪い、ロイクスの5.4秒後方まで迫ってきた。そして、ついに奇跡的な逆転劇が見られるかと思われていたSS14でまさかの出来事が発生する。ギヤボックスに問題を抱えたルフェーブルはマシンをストップ、ERC初優勝の夢はここで潰えることになった。

 ルフェーブルの不運なリタイアによって、後続に対して45秒あまりのリードを築くことになったロイクスは、残りの4ステージを大きくペースを落としてクルーズ、波乱のイープルをノートラブルで制することになった。

「ルフェーブルが消えてプレッシャーもなくなったが、戦いがそこで終わったことはがっかりだったよ。僕は勝利がほしかったが、それはこのような形の勝利ではない。彼のスピードは本物だったし、彼こそ勝者に値する」とロイクスは語った。

 サバイバル戦となったイープル、その表彰台は、ロイクスとともにすべてベルギー出身ドライバーが占めることになった。

 ロイクスの10.9秒後方につけて最終日をスタートしたヴィンセント・ヴェルシューレン(シュコダ・ファビアR5)は、プジョー・ベルギー・ルクセンブルクのクリス・プリンセン(プジョー208T16 R5)と激しくポジションを争いことになった。安定した速さをみせて追い上げたプリンセンは、ペースノートのミスからSS12でスピン、追撃はそこまでとなったかに見えたが、ヴェルシューレンがSS13で2度、ジャンクションでオーバーシュートするというミスを犯して後退したため、プリンセンが2位でフィニッシュすることになった。

 最終ステージまで続いた残された表彰台をめぐる僅差のバトルは、ヴェルシューレンがここでもスピンをするというミスを犯し、ベルント・カシエール(フォード・フィエスタR5)が3位を勝ち取っている。

 表彰台には届かなかったものの、過去8度ベルギー・チャンピオンに輝いているピーター・チューン(フォード・フィエスタR5)が初日パンクから追い上げて6位でフィニッシュするなど、地元ベルギーやオランダのドライバーたち上位陣を占める結果となり、ERCレギュラーメンバーの最上位はチェコのヤロミール・タラブス(シュコダ・ファビアR5)の7位だった。

 また、オペル・ジュニア・チームのマリヤン・グリーベル(オペル・アダムR2)8.4秒をリードして最終日を迎えたERCジュニア選手権は、クリス・イングラム(オペル・アダムR2)が激しくプッシュ、SS10を終えて二人の差は1.5秒まで縮まったが、イングラムが午後のステージでブレーキとタイヤに問題を抱えて大きくタイムをロス、グリーベルが優勝を飾っている。

 ERC次戦は7月15〜17日に行われるラリー・エストニアとなる。TOYOTA GAZOO Racingチャレンジプログラムの勝田貴元と新井大輝がフォード・フィエスタR5で挑む初のERCイベントとしても注目されている。