WRC2016/05/21

波乱のポルトガル初日、ミークが31秒をリード

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 ラリー・スウェーデン以来、3カ月ぶりに世界ラリー選手権に帰ってきたクリス・ミーク(シトロエンDS3 WRC)が大荒れとなったラリー・デ・ポルトガルの初日、13番手という有利なポジションを味方にして素晴らしいタイムを並べてラリーをリード、セバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)を31.9秒引き離している。

 ラリー・デ・ポルトガルDay1は木曜日に行われたスーパーSSに続き、金曜日からいよいよ本格的なグラベルステージに戦いの舞台を移す。マトジニョスのサービスを北上したラリーカーは、スペインとの国境に近いた27.44kmのポンテ・デ・リマ、18.03kmのカミニャ、18.70kmのビアナ・ド・カシュテロの3つのステージをマトジニョスのサービスを挟んで午前と午後で2回ループしたあとポルト市街地に設けられた1.85kmのストリートステージを2回走行する一日となる。

 ポルト北部エリアの山岳地帯は数メートル先も見えないほどの濃い霧のなかで夜明けを迎えたが、ステージが始まる時間には青空も除き始めて概ねコースの視界は良好となった。だが、路面はしっとりと水分を含んだものとなり、さまざまなドラマを引き起こすことになった。このステージでトップタイムを奪ったのは、なんと13番手の後方からスタートしたミーク。一番手のスタートながらコースが湿っていたためにルースグラベルの掃除を免れたことで、このままトップタイムを決めるかに見えたセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)を5.6秒も上回り、なんと首位に浮上して金曜日をスタートすることになった。

 ミークは続くSS3でも「前を走るクルマによってコーナーには石がかき出されていた」と不満を述べながらも2連続トップタイム、オジエも表面を覆うグラベルが少ないこのステージでも連続して2番手タイムを並べたものの、ミークに5.9秒遅れというまさかの展開となった。

 ミークはSS4ではスタート直後の轍のなかを通過した際にタイヤに激しい衝撃をうけたあとハンドリングに不調を覚えたものの、それでもオープニングの2つのステージと異なり、表面にかなりのルースグラベルが残ったこのステージで苦戦したオジエに5.6秒差をつける好タイム、朝のループを終えて、オジエに11.5秒差をつけてトップでマトジニョスのサービスへと帰ってきた。

 朝のループを終えて14.6秒差の3位には、シェイクダウンから好ペースを維持しているダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 WRC)。彼は昨年のオープニングステージでトップタイムでリーダーに立ったあと、激しく摩耗したタイヤで4位までポジションを後退させたことから、今年はペースをコントロールする用心深さをみせている。

 朝のループで意外な速さをみせたのはDMACKワールドラリーチームのオット・タナク(フォード・フィエスタRS WRC)。今回から新しいグラベルタイヤにアップデートしたDMACKで彼は最初のロングステージこそ摩耗に悩まされたが、SS3では3番手タイムを出すなど、DMACKのタイヤ進化に助けられて4位で朝のループを終えることになった。

 また、ヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)は6番手という絶好のポジションでのスタートのはずが、朝の2つのステージではドライという予想が完全に外れたため、ハードすぎるセッティングのためにともに7番手タイムと誤算のスタートとなってしまった。それでも彼はSS4のベストタイムで7位からタナクと並ぶ4位まで浮上して朝のループを終えている。

 だが、ここから首位争いにどれだけカムバックするのか期待されたものの、ラトバラは午後のループの最初のステージとなるSS5ポンテ・デ・リマで大きなミスを犯してしまう。穴にマシンを落としたあとパワーステアリングのトラブルに見舞われてしまい、彼は40秒あまりをロス。さらに彼はパワステオイルを失ったマシンのまま、残りのステージでも走ることになったため3分50秒あまりをロス、優勝を本命視されながらもけっきょく初日は9位と冴えないスタートとなってしまった。

 また、このポンテ・デ・リマのステージでトラブルに見舞われたのはラトバラだけではない。朝の走行で激しくダメージを受けた路面でコースオフ寸前になるマシンが続出、なかでもヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)は横転してラリーを終えることになってしまった。

 パッドンは思い通りに走らないマシンに首をひねりながら朝のループで22.9秒遅れの6位に甘んじることになったあと、サービスでデフを交換、ポンテ・デ・リマの最初のスプリット表示でオジエを0.5秒上回り、速さを取り戻したように見えたが、その直後に深い轍ができた11.9km地点の高速コーナーで横転してしまう。

 不運なことにコースオフマシンは枯木の上に着地して止まったため、焼けたエキゾーストから出火、マシンは瞬く間に火に包まれて炎上することになった。さらに、この危険なセクションでは4位に付けていたタナクもコースオフ、炎上するパッドンのマシンのすぐ横に彼はフィエスタを止めたため、主催者は消火活動のためにこのステージを一時中断させ、その後、キャンセルすることを決定した。

 スチュワードは走行していないドライバーにはノーショナルタイムを与えることを決定し、そのなかにはラリーリーダーのミークも含まれていたが、彼には朝のループのタイムを参考に19分20.6秒のベストタイムが与えられることになった。こうして波乱が続出したSS5を終えて首位はミーク、オジエを9.6秒も上回るタイムでソルドが19.8秒差の2位に浮上、オジエは首位から26.3秒遅れの3位となってしまった。

 ミークは残りの2つのロングステージでも快調な走りをキープして連続してトップタイムを奪い、最後のスーパーSSではハードタイヤでタイムを失ったものの、オジエに対して31.9秒という大量リードを築き上げて初日を終えることになった。

 午後のループでも2連続で2番手タイムを並べたソルドは、SS6を終えてオジエに対して6.9秒差をつけて2位でこの日を終えるかにみえたが、SS7で左フロントタイヤをパンクしてオジエに2位を譲り、5.4秒差の3位で初日を終えることになった。

 アンドレアス・ミケルセン(VWポロR WRC)はSS4でコースにでていた巨大な石を巻き込み、激しい衝撃をボディに感じてあわやの瞬間はあったものの、ライバルたちがトラブルに見舞われた危険なステージを慎重な走りで切り抜けたあと、SS7では2番手タイムを奪い、ソルドのわずか15秒後方に迫る4位でフィニッシュした。

 オープニングステージで慎重すぎたとはいえ32秒もの遅れをとったティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 WRC)は11位でこの日をスタートしたものの、じょじょにペースを上げてミケルセンに迫ってみせたが、ソルドと同様にSS7でバルブのトラブルから左フロントのパンクに見舞われてしまう。それでも彼はパンクでフェンダーを壊したマシンでこの日最後にポルトで行われた2つのストリートステージでともにベストタイムを奪い、ミケルセンと19.9秒差の5位となっている。

 朝のループで左フロントのパンクに見舞われたステファン・ルフェーブル(シトロエンDS3 WRC)が午後のループでは堅実な走りをキープしてMスポーツの2台を抑えて初日の6位。マッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)は朝のループでふたたびシフトダウンに問題を抱えて10位と出遅れたが、修理が叶ったマシンで午後のループでは自信を取り戻して7位となっているが、チームメイトのエリック・カミリー(フォード・フィエスタRS WRC)もほぼ同じペースで午後のループを走り、3.7秒差の8位につけている。

 また、昨年のラリーGB以来、久しぶりにヒュンダイから出場となったケビン・アッブリング(ヒュンダイi20 WRC)はSS3でステアリングアームを壊してリタイアとなっている。

 土曜日はマトジニョスの東に位置する37.67kmのアマランテのロングステージが含まれる6SS/165.28kmの長い一日となる。オジエの1番手スタートは変わらず、マシンが完全に燃え落ちたパッドンとともにタナクもラリー2でのスタートを断念することになったため、首位のミークは11番手のポジションでコースを走ることになる。