ERC2016/05/09

21歳シルマチス、アクロポリスでERC初優勝

(c)ERC

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 ヨーロッパ選手権(ERC)第3戦アクロポリス・ラリーは、シュコダ・バルチック・モータースポーツの新鋭ラルフス・シルマチス(シュコダ・ファビアR5)がR5マシンでのデビュー戦にもかかわらずセンセーショナルなERC初優勝を飾ることになった。

 初日のオープニングステージからラリーをリードしてきた若きシルマチス。そしてパンクで遅れながらもシルマチスを2秒リードして最終日を迎えたアレクセイ・ルクヤヌク(フォード・フィエスタR5)。この二人の対決が注目されたアクロポリス・ラリーの最終日だが、なんとオープニングステージSS7の同じコーナーで二人がコースオフをするという波乱の幕開けとなった。

 ルクヤヌクはペースノートのミスからオフ、右のリヤタイヤをパンクして19.6秒をロス、いっぽうシルマチスも岩に激しくヒットしたものの彼は幸運なことにパンクを免れ、17.6秒差でラリーリーダーを奪い返すことになった。

 コースオフしたときにはナーバスになっていたと認めたシルマチスだが、冷静さを取り戻して次のSS8でも連続して2番手タイムをマーク、その差を20.9秒へと広げてみせる。ルクヤヌクもラリー最大のヤマ場となる33.86kmのエラチア〜カーヤのステージでの挽回を誓っていたが、なんと彼はノートに記載されてなかったイン側の穴にタイヤをヒットしてコースオフ、ステアリングアームの修理に17分あまりを要して14位に後退することになった。

 ライバルが消えたことで後続に対して1分18秒という大差を築くことになったシルマチスは、午後のループではセーフティに走ることを目指していると語りながらも快調なペースをキープ、終わってみれば2分42秒もの大差をつけて伝統の一戦で記念すべきERC初優勝を飾ることになった。

 最終ステージのゴール後、シルマチスとコドライバーのアートゥル・シミンスはルーフに駆け上がって喜びを爆発させた。

「僕は僕のベストを尽くそうと思った。ステージではカイトとルクヤヌクのほうが僕より速かった。次のラリーにむけて大きな経験になると考えて、僕も前より速くドライブすることにしたよ。本当に夢が叶ったよ!」

 最終ステージでは思ってもみないドラマが待っていた。地元のランブロス・アサナスラス(シュコダ・ファビアR5)はチェコのヤロミール・タラブス(シュコダ・ファビアR5)を大きくリードして2位確実と見られていたが、トラブルで遅れていたマシンに走行ラインをふさがれて失速、35秒もロスして泣きながらゴールすることになった。それでもわずか0.1秒差でアサナスラスが逃げ切ることになり、昨年の3位を上回る2位表彰台を伝統の一戦で獲得することになった。

 いっぽう、タラブスは朝のループではウォータースプラッシュでフロントを壊してあわやの瞬間もあったが、2013年に母国チェコで獲得して以来の3年ぶりのERC表彰台に立つことになった。

 エストニアのラウル・イェーツが新しいシュコダ・ファビアR5でERC自己ベストとなる4位でフィニッシュ、5位にはポーランドのヤロスラフ・カウトン(フォード・フィエスタR5)が続いていたものの、SS7のパンクに続き、最終ステージでもトラブルに見舞われて6位に後退することになった。

 これでスバル・ポーランドのボイチェフ・フフォワ(スバル・インプレッサWRX STI)が5位でフィニッシュするとともに、開幕戦から3戦連続でERC2優勝を飾ることになった。ERC3はトルコのムラート・ボスタンチ(フォード・フィエスタR2T)が後続を2分40秒引き離して優勝を飾っている。

 また、初日のオープニングSSで横転したカイエタン・カイエタノビッチ(フォード・フィエスタR5)は34位からラリーをスタート、残りの11ステージのうち8SSでトップタイムを奪い、見事8位まで順位を戻して選手権リーダーをキープしている。シルマチスと優勝を争ってきたルクヤヌクはなんとかポイント圏内でフィニッシュすべく午後のループでも猛プッシュしたが、ターボトラブルに進撃を阻まれて10位でラリーを終えることになり、選手権ではカイエタノビッチから25ポイントのビハインドとなってしまった。

 ERCの次戦は6月2〜4日にポルトガル領アソーレス諸島のサン・ミゲル島で行われるラリー・アソーレスとなっている。