Ott Tanak
Hyundai Motorsport
1年前のモンテルロでの恐ろしいクラッシュに始まったオイット・タナクとヒュンダイi20クーペWRCのしっくりとしなかった関係は、試練の1年を経て最速のパッケージに仕上がったかに見えたが、決定的な局面でタナクを裏切り続けた。
2019年の世界ラリーチャンピオンが翌年をヒュンダイで走る契約を交わしたとき、このような困難が待っていることを予想はしてなかっただろう。トヨタで走った2シーズンで10勝を挙げ、タナクはどのマシンに乗っても速いと評価されたにもかかわらず、2020年にヒュンダイに来てからわずか2勝だ。シーズンも5位に終わり、5年ぶりに選手権でトップ3から陥落することになった。
開幕戦モンテカルロは2度のパンクでリタイアとなり、2年連続でノーポイントでシーズンをスタートすることになったが、初開催のアークティックで勝利を飾って流れに乗ったかにも見えた。しかし、ポルトガルはサスペンションが突然外れてしまい、22秒差でリードしていたラリーを失い、サルディニアでも40秒の差をつけているなかでレーシングラインに転がっていた岩をクリーンヒットしてリタイアとなっている。そして、サファリでは、突然の雨のなかでフロントガラスの曇り止めの故障さえしてなければ勝てていただろう。
3戦で3勝する計算が外れ、さらに母国戦エストニアではさらに裏切られる結果が待っていた。選手権リーダーのセバスチャン・オジエから64ポイントのビハインドという待ったなしの状況で、彼の勝利へのアプローチはやや強引すぎたのだろうか。タナクは初日、激しいコースオフでダブルパンクを喫してリタイアを喫してしまい、母国ファンの声援を追い風に低迷してきた選手権の流れを変えるはずが、ラリー後に自身のタイトルを諦めることになったことを認めている。
その後のイープルではパンクのために3位となり、アクロポリス、フィンランドで連続して2位でフィニッシュするも、スペインで今季2回目となるミスによるクラッシュであっさりとラリーを終えることになった。モンツァへの不参戦は家族の事情だったが、タナクはもう選手権への興味を失って引退を急ぐのでないのではないかという噂も囁かれることになった。
タイトルを争うどころかシーズンを5位で終えることになり、タナクにとってもっともがっかりしたシーズンになったことは間違いないだろう。しかし、速さだけで見るならばタナクはナンバーワンだ。
シーズンのベストタイムはライバルより1戦少なかったにもかかわらず49回を叩き出して最多だった。ティエリー・ヌーヴィルは45回、ワールドチャンピオンに輝いたオジエは43回だ。パワーステージのボーナスポイントでは最終戦でヌーヴィルに3ポイント差で逆転されたが、ボーナスステージの勝利数は最多の5回を誇ることになった。
序盤のトラブルによる遅れから這い上がるためパワーステージのボーナスポイントにしがみつくしか仕方なかったとはいえ、タイヤを温存してのろのろと丘の向こうに消える姿をそう何度も見られたくはなかっただろう。
年末に行われた新しいヒュンダイi20 N Rally1のテストを終え、タナクは「みんなが本当に素晴らしい仕事をしてくれた。強力な新しいシャシーを手に入れ、間違いなく大きな一歩を踏み出すことができた」と新シーズンを前向きに語っている。
生年月日:1987年10月15日(34歳)
選手権ランキング:5位
獲得ポイント:128点
ベストリザルト:1位
優勝回数:1回
2位の回数:2回
3位の回数:1回
表彰台回数:4回
出場回数:11回
ベストタイム回数:49回
リードしたステージの数:37SS
リタイア数:5回
ラリー2の回数:3回
パワーステージ勝利数:4回
パワーステージ獲得ポイント:32点