WRC2018/06/09

オジエ、雨のサルディニアをリード

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 世界ラリー選手権第7戦ラリー・イタリア・サルディニアのレグ1は、不安定な天候によってめまぐるしく変化する路面コンディションにライバルたちが苦戦するなか、Mスポーツ・フォードのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が首位に立ち、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が18.9秒差で続く展開になっている。

 イベント前の予想を覆して不安定な天候のラリーウィークを迎えたサルディアは、金曜日も早朝に降った大雨によってオープニングステージとなったSS2トゥーラ(22.12km)はウェットコンディションとなるなか、アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が9.1秒の差をつけるベストタイムを叩き出して首位へと浮上することになった。

 ミケルセンは続くSS3カステルサルド(14.37km)でも連続してベストタイムを奪い、朝の2つのステージを終えてチームメイトのヌーヴィルに15.5秒をつけてラリーをリード、早くもヒュンダイ勢が1-2態勢でラリーの主導権を握ることになった。

 この日の朝の天気はまさしく天からの贈り物となっており、ヌーヴィルは雨で滑りやすくなったコンディションのなかで安定したペースを築いて2位で続いているが、ミケルセンの速さはヌーヴィルをまったく寄せ付けないものだった。

 ミケルセンは、続くSS4テルグ〜オージロ(14.14km)では2番手タイム、SS5モンテバランタ(11.46km)でも3番手タイムにまとめて首位をキープ、14秒差をつけて朝のループを終えることになった。

「クルマは僕の言う通りに動いてくれているから本当にいい感じだ。最初にステージからタイム差をつけることができたので、気分もいいよ。午後のプランはコンディションによって決まってくる。ドライになりそうだが、ハードタイヤにするのかどうかを考えなければならない」とミケルセンは語り、これまで不振のラリーが続いていただけに彼はステージエンドで笑顔をみせていた。

 ヌーヴィルは朝の陽射しによってドライコンディションとなったSS4では、滑りやすい路面と浮き砂利に警戒したために7番手とタイムを落とし、ここでベストタイムを奪ったトヨタのオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)に2位を譲ることになったが、ふたたび湿ったコンディションとなったSS5ではフライングフィニッシュ後にあわやコースオフしそうになったほどの気迫のこもった走りでベストタイムを奪い、2位へと順位を戻している。

 それでもタナクは、ヌーヴィルの後方2.4秒差の3位に続いており、ベストタイムを奪ったSS4のように流れるような高速ステージではトヨタの強みを発揮しており、ドライコンディションが予想される午後のループではさらなるポジションアップを期待していた。

 朝のループを終えた時点ではステージの上空には青空が覗いており、午後のループでは天候が改善することを予想していたのはタナクだけではなかっただろう。だが、ドライコンディションが進むという予想は完全に裏切られてしまうことになる。

 サービスのあとのオープニングステージとなったSS6トゥーラは突然の激しい雷雨によってが路面にはたくさんの水たまりができており、信じられないほどマディなステージへと変貌することになった。誰もがアクセルを踏むことを躊躇するなか、22.12kmのこのステージで、ほかのドライバーたちを12.2秒を上回るベストタイムを獲得して一気に首位に浮上したのは、朝のループを5位で終えたオジエだった。

 朝のループで一度も選手権を争うヌーヴィルのタイムを上回ることができずに苛立ちをみせたオジエだが、雨のなかで一転してスピードを増すことになった。彼は雨が上がって路面が乾きはじめたSS7カステルサルドでも2番手タイムを奪い、2位に浮上したヌーヴィルに10.9秒差をつけることになった。

 オジエの喜びとは対照的に、朝のループで素晴らしいペースをみせて14秒差でラリーをリードしていたミケルセンには失望が待っていた。彼は大きな水たまりができたSS6のブレーキポイントで止まりきれずにオーバーシュート、さらにギヤボックスに関連すると見られるトラブルのため26.5秒を失い、2位へと後退することになった。

 さらに彼は問題を解決できないままに続くSS7カステルサルドにむかったが、ヘアピンでハーフスピンしたあとギヤがバックギヤにスタックしてしまいマシンを止めることになり、ここであえなくリタイアとなってしまった。

 チームメイトの問題によって2位に浮上したヌーヴィルは、前ステージでは難しいコンディションのなかでスピンをしたことを認めたが、ふたたび集中力を取り戻してラリーリーダーを追うつもりだと語り、SS8ではギヤシフトの問題に見舞われたオジエを0.1秒下すベストタイムを奪い、わずかに遅れを取り返すことになった。

 だが、朝に比べて、一転して攻めのモードに切り替えたオジエはこの日の最終ステージのSS9でも2番手タイムで首位をキープするも、ヌーヴィルは右コーナーでワイドになり、ヒットしてリヤウィングを失って10秒をロス、オジエとの差は18.9秒へと広がってしまった。

 3位をめぐる争いは午後のループで大きく揺れ動くことになった。朝のループを3位で終えたタナクは、午後のループにむけてディファレンシャルのセットを変更、滑りやすいSS6では3番手タイムを奪ってヌーヴィルに0.1秒差まで迫ることになった。ヤリスのコーナリングが少し改善しつつあると手応えを感じていた彼は、ミケルセンのリタイアしたあと3位へと浮上、SS8でふたたび3番手タイムを奪って追撃モードとなったかに見えたが、SS9のジャンプの着地で激しくノーズをヒット、エンジンから白煙を上げて8.6km地点でストップ、まるで前戦ポルトガルの悪夢を再現するかのようなリタイアとなってしまった。

 これでタナクに続いて4位をキープしていたMスポーツ・フォードのテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)が計算上では3位に浮上するかに見えたが、彼は右コーナーでワイドになってしまいコースオフ、リタイアとなってしまった。

 SS2でフィエスタのフロントとリアにダメージを負って16.1秒遅れの8位でこの日をスタートしたスニネンだが、その後、SS3では2番手タイム、さらにSS7ではベストタイムと速さをみせたが、連続ポディウムのチャンスをワンミスで失うことになった。

 上位の二人が消えたことで金曜日を3位で終えたのはトヨタのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)だ。彼は朝のループではスリッパリーに感じてペースが上がらず6位と出遅れるなど、この日のめまぐるしく変わったコンディションにけっして対応できたわけではなかったが、それでもSS9ではこの日初のベストタイムを奪ってヌーヴィルの18.秒後方につけている。

 ラトバラの4.4 秒後方に続いているのはチームメイトのエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)だ。彼はSS2でパンクに見舞われ、スペアを使い果たしてしまったためにペースダウンを余儀なくされて朝のループを10位で終えることになったが、午後のループでは2度の2番手タイムを並べて4位まで挽回することになった。

 5位と6位は、ともにタイヤ選択をミスしたマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)とヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)が続くことになった。後方からのスタートだった二人は、路面がクリーンになることを期待して臨んだ2つのループともハードタイヤを組み合わせたが、いずれも路面が想像を超えてウェットになるという裏目にでてしまい、上位躍進のチャンスを阻まれてしまった。

 また、二人と同様にタイヤのミスを嘆いたクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)は、さらに前日の夜のスーパーSSで発生したサイドブレーキの問題にふたたび襲われ、苛立ちを抑えることができない様子でこの日を7位で終えている。

 Mスポーツ・フォードのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)にとっては残念な朝になってしまった。彼はSS2の途中までのスプリットタイムではベストタイムを奪ったミケルセンに匹敵するスピードをみせていたがバンクに接触してステアリングアームを破損。幸い彼はスペアをもっていたために交換してステージを走り切ったが、13分以上もの大きなハンデを負い、総合22位と遅れている。
 
 明日の土曜日はミッキーズ・ジャンプで有名なモンテ・レルノのステージをはじめ、7SS/146.14kmというラリー最長の一日となる。オープニングSSのコイルーナ〜ローレは現地8時38分(日本時間15時38分)のスタート予定となっている。