WRC2018/10/07

オジエが波乱GBをリード、ラトバラが4.4秒差

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 2018年FIA世界ラリー選手権(WRC)第11戦ウェールズ・ラリーGBの土曜日は、それまで快調なペースを刻んでラリーを独走していたオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がメカニカルトラブルでマシンを止める波乱が発生、Mスポーツ・フォードのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が首位に立つことになったが、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が4.4秒差の2位にピタリとつけて今季初優勝を虎視眈々と狙ってる。

 ウェールズ・ラリーGBの土曜日は、ラリーリーダーのタナクがリードを広げるなか、28.8秒差で続いていた選手権リーダーのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が痛恨のミスで8位へと後退する朝のドラマで始まることになった。

 ウェールズ中部へと戦いの舞台を移した土曜日、朝までかなりの雨が降ったことでフルウェットのマディなコンディションとなったオープニングステージ、SS10ミヘリン(20.28km)でベストタイムを奪ったのはオジエ。ギヤボックスの問題から金曜日を5位で終えた彼は、選手権でのチャンスを手繰り寄せるためにマディなステージを決死の覚悟で攻めて、トヨタのヤリ-マティ・ラトバラとエサペッカ・ラッピを抜き去り、一気に3位へと浮上してヌーヴィルの後方2.2秒差まで迫ることになった。

 だが、フロントにミディアムタイヤを選んでいたヌーヴィルは続くSS11スイートラム〜ハフレン(19.95km)のマディな右コーナーで突然グリップを失ってリヤをディッチに落としてスタック、観客の手助けによってどうにかコースに戻ったものの、51秒をロスして2位から8位まで順位を落とすことになってしまった。 この日はノーサービスの一日になるためマシンに大きなダメージがあれば致命傷となったが、幸いにも彼はリヤのバンパーに小さな損傷があるだけで次のステージへと向かっている。

 ヌーヴィルのトラブルによって、2位にはオジエが浮上することになったが、首位のタナクはSS11で後方からのスタートにもかかわらず2番手タイムという素晴らしい速さをみせて、43.2秒という大きな差をつけてラリーをリードすることになった。泥だらけの森林ステージはマシンの通過でラインが磨かれるため後方で走る彼にとってけっして理想的なコンディションではないが、タナクはここまでの状況に満足していると余裕の笑みをみせることになった。

 タナクは、さらにSS12ダイフィ(19.48km)では左フロントフェンダーに小さなダメージを負いながらもまったくそれに意を介してないかのような快調なペースを刻んでこの日初のベストタイムを奪ってリードを45.7秒へと広げ、朝に比べればややドライコンディションになってきたSS13ガルセイニオグ(11.26km)、SS14ディブナント(8.30km)と連続して好タイムを並べて、オジエとの差を48秒へと広げてニュータウンのタイヤフィッティングゾーンへと入ることになった。

 これに対して、「選手権のライバルたちの前でゴールしなければならない」という壮絶な決意でこの日をスタートしたオジエは、マディになった朝のステージではペースを上げることができたが、SS12以降はかなり表面が乾き始めており、ルースなグラベルに阻まれてタイムは思ったほど伸びない。後続のトヨタのラトバラとラッピがタイムを伸ばしてきただけに、彼の表情は明るいものとは言えなくなってきた。

 金曜日を3位で終えたラトバラは、SS11ではアンダーステアに苦しむことになり、オジエとともにチームメイトのラッピにも抜かれて5位へと後退したが、ドライになり始めた路面ではペースをとりもどしてSS13でラッピを抜いて3位へ浮上、さらにSS14でベストタイムを奪ってオジエの1.7秒後方へと迫って朝のループを終えることになった。「いい走りだったよ、なかなか面白いことになってきたね、クルマを走らせている感触はすごく良かったよ」とラトバラは午後のループへの自信をのぞかせた。

 またラッピもラトバラの2.5秒後方の4位をキープ、さらに彼の3.2秒後方には朝からペースを上げてきたクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)が続き、2位から5位までがわずか7.4秒差にひしめく大混戦となってきた。

 午後のループの最初のステージ、SS15ミヘリンの路面は予想以上にドライになっており、ソフトコンパウンドを主体にしたタイヤチョイスをした多くのドライバーたちを驚かせることになった。そして、そのなかにはソフト4本とミディアム1本を選んだタナクも含まれていた。

 このステージでベストタイムを奪ったのはミディアム3本を選んだオジエだったが、この20.28kmのステージでその差を6.1秒も縮められたタナクはステージエンドで「予想よりずっとドライだった。この情報は無かったよ。残りのループを何とか乗り切らなければならない」と憮然とした表情をみせることになった。

 とはいえ、タナクは依然として41.7秒と大きなアドバンテージを築いている。その勝利は揺るぎないものにも見えるが、彼はなんと、続くSS16スイートラムの3.7km地点でラジエータの破損からマシン止めることになってしまう。つかみかけたドライバー選手権のトップを、ポルトガル、サルディニアと同じ問題で失うという、まさしく痛恨のリタイアとなってしまった。

 このドラマによってオジエが首位に浮上したが、ラトバラはチームメイトの無念を晴らすかのようにSS17ダイフィで猛然とアタック、ベストタイムを奪ってオジエの2.9秒後方まで迫ることになった。だが、この日の最終ステージのSS18ガルセイニオグでラトバラはスタート直後のヘアピンでエンジンストール、オジエが4.4秒差でレグ2の首位を守ることになった。

「オイットのことは残念だよ。彼は今週末、別のレベルで走っていた。だが今は僕たちが勝利をかけて戦っている。明日もベストを尽くすつもりだ」と、語るオジエの目にはもはや勝利しか映ってないようだ。

 ラトバラの7.4秒後方の3位にはラッピが続いており、トヨタはここでもトップ3のうちの2つのポディウムポジションを占めて最終日を迎えることになるが、彼のわずか1.7秒後方には午後のループでも2度にわたって2番手タイムを奪う速さをみせたブリーンが迫っている。

 ブリーンの20.6秒後方の5位にはチームメイトのマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)が続いている。新しいダンパーによってSS11でベストタイムを奪う速さをみせたが、午後のループでは惜しくもタイヤの摩耗からペースを落としてしまい、この日3つのベストタイムを奪って追い上げてきたアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)に2.5秒差の背後に迫られることになってしまった。

 また、7位にはヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)、8位には朝のミスで順位を落としたヌーヴィルが続いていることから、彼のドライバーズ選手権のリードを守るためにもチームオーダーが発令されることになるかもしれない。
 
 ウェールズ北部が舞台となる明日の最終日は、朝から2つめのグイデイル・ステージが3つのステージを後に残しながらもボーナスポイントが付与されるパワーステージとして行われるという変則的なスケジュールとなる。オープニングSSのエルシーは現地時間7時22分(日本時間15時22分)のスタートが予定されている。