今季新設されたアメリカ・ラリー・アソシエーション(ARA)ナショナル・チャンピオンシップは、ミネソタ州デトロイト・レイクスで行われたオジブワ・フォレスト・ラリーで最終戦を迎え、スバル・チームUSAのトラビス・パストラーナ/ロビー・デュラント(スバルWRX STI)が今季3勝目を飾り、逆転で初代チャンピオンに輝くことになった。
チームメイトのデビッド・ヒギンズ/クレイグ・ドリュー(スバルWRX STI)は、6シーズン連続してラリー・アメリカ選手権のチャンピオンを獲得、それ以前にはSCCAプロ・ラリー選手権で2度の王座に輝いており、9回目のアメリカ・メジャータイトルの獲得が目前だったが、最終戦では不運によってタイトルを逃すことになった。
最終戦を前にしてこれまでの5戦を終えてヒギンズが3勝を挙げて100ポイントでリード、パストラーナは2勝を挙げて95ポイントで続いているものの、選手権は全6戦のうちベスト5戦のポイントで争われるためパストラーナが逆転で王座を獲得するためには最終戦の勝利が絶対条件だった。
さらにパストラーナが優勝してヒギンズが2位になった場合には二人は同ポイントとなり、その場合はシーズン全体のステージウィンの多い方が王者となるが、パストラーナがチャンピオンになるためには、ヒギンズよりも2つ多くステージ勝利を獲得する必要があった。パストラーナはまさにその困難な条件をはねのける必要があったのだ!
デトロイト・レイクスは雨が降り、スリッパリーなウェットコンディションとなった。パストラーナは、激しいペースでラリーをスタートし、最初の3つのステージを勝利した。ヒギンズはスタートからトラブルを抱え、岩をヒットしてホイールの内側にダメージを負ってパンクし、その後も多くの不運に見舞われた。
「ホイールを交換している時、僕は壊れたホイールを取り外そうとして指を火傷した。それで僕は次のいくつかのステージを指を曲げたままステアリングを握らないといけなかった」とヒギンズは語った。
「SS2では、水たまりを通って、水が車の中に入って来て、フロントガラスの内側に吹き付けられたので、フロントガラスが汚れたまま20マイルも走った。さらにその最後のステージでは、僕たちが装着する予定ではなかったタイヤが装着していたんだ」
ヒギンズのトラブルはそこで止まらなかった。SS5のウエストガルチでは、フロントガラスのワイパーがGoProカメラに詰まったため、彼らはマシンを止めてワイパーを取り除かなければならず、金曜日を終えて首位から2分16.8秒遅れの3位となってしまった。
これに対してパストラーナは金曜日をラリーリーダーとして独走、土曜日になると速さを取り戻したヒギンスがこの日のステージ勝利をほぼ獲得して2位へと追い上げることになり、こうして初代のARAチャンピオンを決めるためにはステージ勝利の回数に委ねられることになり、2台のスバルWRX STIは文字通り最後のステージまで接戦を演じることとなった。
だが、最終ステージから1つ前にステージで、ヒギンズは残念なことにシケインをヒットし、15秒のペナルティを課せられてしまう。これによって、彼が必要な2つのステージに勝つことは不可能となり、雨の中のミネソタの林道で行われた激しい接戦は、最終的に、ゼッケンナンバー199のスバルWRX STIを駆ったパストラーナが優勝を飾り、ヒギンズを逆転して2017年ARAチャンピオンシップタイトルを獲得することになった。
「これまで3年にわたって僕らはデビッドたちをいつか倒そうと努力を続けてきた。そしてついにやったよ! 夢が完全にかなった。しかし、彼らなしで僕がここまで来ることもなかっただろう!」とパストラーナはゴールで喜びを語っている。